episode83 武器の新調
「一か月振りだね」
「そうだな」
予定通りにセントポートで一泊してからワイバスに戻って来た。
道中は途中でリュードランとフィルレーネの二人に会って素材を受け取ったぐらいで、特別何か起こることも無く街に帰って来ることができた。
「まずは冒険者ギルドで素材を売却しましょうか」
「そうだな」
「だね」
まだ夕方なので時間はある。ひとまず、素材を売るために予定通りに冒険者ギルドへと向かった。
「人が多いね」
「そうだな」
やはり、この時間は依頼終わりの冒険者が多いらしく、多くの人で賑わっていた。
「とりあえず、受付に行くか」
「だね」
ひとまず、四人で受付に向かう。
「帰ったのですね」
「お帰りなさい! お久し振りですね」
「ああ、そうだな」
受付に向かうと、そこにはエルナとミーシャがいた。
「冒険者カードを渡していただけますか?」
受付に来たところで、エルナに冒険者カードを渡すように言われる。
「……? 分かった」
理由は分からないが、ひとまず言われた通りに空間魔法で冒険者カードを取り出して渡す。
「空間魔法を覚えたのですね」
「ああ、ようやくな」
「それでは、こちらをお受け取りください」
そして、新しい冒険者カードを渡された。
早速、渡された冒険者カードを確認してみると、そこにはDランクと記載されていた。
「Dランクに昇格しましたので新しいカードになります」
「そのようだな」
どうやら、いつの間にか冒険者ランクがDランクに上がっていたらしい。
恐らく、レッサーワイバーンの討伐が評価された結果だろう。
「それはそうと、素材の買い取りをして欲しいのだが良いか?」
「ええ、構いませんよ。ミーシャも一緒に来ますか?」
「そうですね……折角ですし、ご一緒させていただきますね」
「分かりました。それではこちらにどうぞ」
そして、そのまま六人で解体所に向かった。
解体所に向かうと多くの職員が解体をしていた。
やはり、この時間帯なので、解体する魔物が多いようだ。
「それでは買い取って欲しい素材を出してくださいますか?」
「ええ。でも、その前にエリュ、シオン、あなた達の分を先に出してくれるかしら?」
「分かった」
エリサに言われた通りに俺達が自分で倒したスカイトードを取り出す。
「スカイトード三体ですね。これがどうかしたのですか?」
「これ、ボク達が倒したんだよ」
「ええっ! そうなんですか!?」
ミーシャが耳と尻尾をぴんと立てながら声を上げる。
「まあな」
「ふむ……」
エルナがスカイトードの死体の状態を確認する。
「一体は刀で、残りの二体は魔法弓でしょうか」
どうやら、傷の状態から討伐した方法を推測していたらしい。
「ああ、そうだ。よく分かったな」
「あなた達の使う斬撃武器は刀ですし、残りの二体も傷の状態を見れば分かります」
「なるほどな」
エルナは冒険者ギルドにそれなりの期間は務めているので、そういうことが分かるようだ。
「では、これだけ別に買い取りをすれば良いのですね?」
「ええ、それで頼むわ」
「分かりました。それではあなた達の分を出していただけますか?」
「分かったわ」
そして、エリサが買い取ってもらう魔物の死体と素材を取り出す。
「見たことの無い魔物がたくさんいます!」
それを見たミーシャは初めて見る魔物を前に少しはしゃぎ気味だ。
「これで全部ですか?」
「いえ、天喰らいもあるわ」
「そうですか。少々お待ちください。どなたかよろしいでしょうか?」
「はい」
ここでエルナが他の女性職員を呼ぶ。
「査定の方をお願いできますか?」
「分かりました」
「では、こちらに来ていただけますか?」
「ええ」
そして、他の職員に査定を頼んだところで、別室に案内された。
案内された部屋は予備の倉庫のようだった。ほとんど物は置かれておらず、殺風景な部屋だ。
「こちらで出してください」
「分かったわ」
そして、エリサは空間魔法で天喰らいを取り出した。
「でかっ!?」
「うわわっ!?」
「……かなりの大きさだな」
取り出されたのはクジラ型の魔物だった。普通のクジラとは違って頭部には一本の角が付いている。
だが、一番の特徴はその大きさだ。驚くことに体長が五十メートル近くもある。
「よくこんなものを仕留められたな」
「まあアタシに掛かればこのぐらいは余裕だよ!」
どうやら、この魔物はアーミラが倒したようだ。
「もう一体いるのだけど良いかしら?」
「どうぞ」
倒した天喰らいは二体いるらしい。エルナが許可したところで、エリサが隣にもう一体の天喰らいを取り出した。
「査定が終わるのは明日になりますが、それでよろしいでしょうか?」
「ええ、それで問題無いわ。それじゃあ行きましょうか」
「ああ」
「分かったよ」
そして、素材を査定に出したところで、ルミナの店へと向かった。
「お帰りなさい」
「お帰りー!」
「帰ったのね」
帰ったところでルミナ、ミィナ、リーサの三人に出迎えられた。
俺達が帰って来ていたことを知っていたかのように待っていたので、恐らくエルナから連絡を受けていたのだろう。
「ああ」
「ただいま!」
こちらも挨拶を返す。
「エリサ達も二人の面倒を見てくれてありがとう」
「私達が勝手にしたことだから、別にお礼なんて必要無いわよ」
「そう言わずに今日はゆっくりしていくと良いわ」
ルミナはそう言ってエリサの頭を撫でる。
「……何故、撫でるのかしら?」
「あら、別に良いじゃない」
「…………」
しかし、エリサは少し面倒そうにしていた。
「そう気を悪くしないで」
「別にそういうわけじゃないわ」
「そう? だったら良いのだけど」
まあエリサはこのぐらいで機嫌を悪くすることは無いので大丈夫だろう。
「必要な素材はここで渡せば良いのかしら?」
「そうね……素材は地下で渡してくれるかしら?」
「分かったわ」
「あなた達は先に二階に行っててくれるかしら? 『
「分かった」
そして、エリサとルミナ以外のメンバーで二階へと向かった。
エリサが素材を渡し終わったところで全員で二階に集まった。今はいつものようにリビングに集まっている。
「ルミナ、これを渡しておくわ」
エリサが空間魔法で何かが入った箱を取り出す。
「あら、何かしら?」
「セントポートで買って来た魚介類よ。こちらだと手に入りにくいでしょう?」
箱の中身はセントポートで土産として買った魚介類だった。
内陸であるワイバートでは魚介類は手に入りにくいからな。土産としては十分だろう。
「こんなにもらっても良いのかしら?」
「ええ。何かとお世話になっているし、お礼だと思って受け取ると良いわ」
「分かったわ。それじゃあ遠慮無く受け取らせてもらうわ」
そして、ルミナは空間魔法で箱を収納した。
「魚介類は久々だね。今日の夕食は魚介類にしない?」
ミィナは久々に食べる魚介類に少し浮き浮きとしている。
「そうだね。私達、最後に魚介類を食べたのはいつだったっけ?」
「あたしは……いつだったっけ? 覚えてないな」
「わたしは魚介類自体をあまり食べたことがないですね」
「私はこちらに来てからはあまり食べていませんね」
『
「今日の夕食は魚介類がメインに決まりのようね」
「そのようね」
俺達はセントポートで食べてきたが、彼女達はそうでは無いからな。今日の夕食は魚介類に決定だな。
「ところで、二人は向こうではどんな感じだったのかしら?」
ルミナが浮遊大陸での俺達の様子を聞いて来る。
「主に実戦向けの魔法や色々な武器の使い方を学んでいたな」
「そうなのね。具体的にどんなことを学んだのかしら?」
「実戦でも使いやすい詠唱が短い割に威力の高い魔法や複合属性なんかを学んだな。ついでに空間魔法も教えてもらった」
俺は空間魔法で魔法弓を取り出して、実際に見せてみる。
「ついに空間魔法を覚えたのね」
「ああ」
便利な魔法なのでずっと覚えようとは思っていたが、今回でようやく覚えることができた。
難しい魔法ではあったが、転生して来てからは魔法の勉強を欠かしていなかったので、何とか覚えることができた。
「ずっと練習だけをしていたの?」
「ほとんど練習だったが、最後はスカイトードの討伐をして帰って来たな」
「スカイトードを? 大丈夫だったの?」
それを聞いて心配そうな様子で聞いて来る。
「三体いたが特に問題は無かったな」
スカイトードはそれなりに強敵ではあるが、今の俺達であれば問題は無い。
「スカイトードって結構強い魔物じゃなかったっけ?」
「浮遊大陸の魔物の中では弱い部類ね」
アリナの疑問にはエリサが答えた。
「あれで弱い部類なのか」
「ええ、そうよ」
この辺りに生息している魔物と比べると別次元なほどに強いが、あれでも浮遊大陸の中では弱い部類らしい。
「スカイトードを見たことが無い『
『
「それってかなり強いってことだよね?」
「まあ一応、特殊魔力地帯の魔物だし、それなりには強いわね」
「……もしかして、私達よりも強くなってる?」
「まあ元々戦闘経験があった上にセンスもあったから、魔力の扱いに慣れればこんなものじゃないかしら?」
「でしょ?」
エリサにそう言われてシオンは悪く無さそうにしている。
「それに合わせて武器も性能の良い物に変えた方が良いかもしれないわね」
「そのことだが、魔法弓をもっと良い物にして欲しいのと、銃剣を作成して欲しいのだが良いか?」
エリサの話によると、魔法弓は特に性能による差が大きいらしい。
なので、魔法弓は性能が良い物にしておいた方が良いと言われた。
全ての武器を高性能な物にできれば良いのだが、資金的にそれは難しいので、ひとまず魔法弓を性能が良い物に変えることにする。
「ええ、良いわよ。それと、刀と短剣も今のあなた達に合わせて性能の良い物にしておいた方が良いと思うわ」
「そうなのか?」
「ええ。メインで使う武器はできるだけ良い性能の物にしておいた方が良いわ」
「それもそうか」
「それと、銃剣について聞いても良いかしら?」
そう言えば、そのことを言っていなかったな。
「こんな感じの物だ」
事前に作っておいた資料を取り出してルミナに見せる。
本当は自分で作ろうと思っていたのだが、魔法弓や魔法銃のような魔力を撃ち出すタイプの武器の性能は刻印術式の完成度に左右されるので、ルミナに頼むことにしたのだ。
「分かったわ。刀、短剣、魔法弓、銃剣の四つを作っておくわね」
「ああ、頼む。……と言いたいところだが、その前に査定をして欲しいのだが、良いか?」
今の俺達に合う物を作ろうと思うとかなりの金額になりそうなので、作るかどうかは査定してから決めたい。
「そうね……まずは魔法弓の査定をするわね」
「ああ」
「あなた達の場合だと全属性に対応させたいから虹ミスリルをベースにして……」
ルミナは端末を取り出して電卓機能を使って計算し始める。
「このぐらいかしらね」
そして、計算が終わったところで金額を提示して来た。
「……やはり、作るのは止めということにしてくれないか?」
その金額を見て即決した。高過ぎて俺達にどうにかできるような金額ではない。最早、桁が違う。
「えー……止めちゃうの? 折角だしケチらないで作ろうよ!」
「それは金額を見てから言ってくれるか?」
ルミナの持っている端末を受け取って、それをそのままシオンに見せる。
「えーっと……一、十、百、千、万、……って、五億!?」
その金額を見て、驚き声を上げる。
「ああ。つまり、そういうことだ」
「……分かったよ」
流石に額が額なので、シオンも金額を見て素直に諦めてくれたようだ。
「あら、止めておくの?」
「ああ。俺達にどうにかできるような金額ではないからな」
メインで使う武器はできるだけ高性能な物にしておきたいが、流石にこの金額ではどうしようもないので諦めることにする。
「そう。それじゃあDランクに上がった記念にプレゼントするわ」
「え?」
ルミナの想定外すぎる提案につい抜けた声を出してしまう。
「あら、どうしたの?」
「……良いのか?」
「ええ。それぐらいは構わないわよ」
それぐらいって……五億だぞ? どう考えても……いや、考えるまでも無く気軽にプレゼントするような金額では無い。
「あげるって言っているのだから、素直に受け取っておけば良いのよ」
「そうだよ、エリュ! ここは素直に受け取らないと失礼だよ!」
「そう言われてもだな……」
そう言われて素直に受け取れるような金額では無い。一杯奢るぐらいの感覚で五億の物を渡されても困る。
「エリュには魔法弓をプレゼントするけど、シオンも魔法弓を使うのかしら?」
「使いはするけど、ボクは近接がメインかな」
「それなら、魔法弓は少し控えめな物にして刀を良い物にしましょうか」
「うん! お願い!」
そんな俺を放置して話が進んでいく。
どうやら、俺に魔法弓をプレゼントすることはもう決定事項のようだ。
「どんな物にするんだ?」
シオンだけで話をさせるわけにはいかないので、俺も話に加わる。
「そうね……虹オリハルコンは流石に止めておきましょうか。虹ミスリルをメインにした合金を使って……こんな感じでどうかしら?」
そして、端末に打ち込んだ素材のリストを提示して来る。
「……エリュ、どうする?」
「そう言われても、俺にも分からないな」
素材のリストを見せられても、それだけではどんな感じになるのかは分からない。少なくとも俺達には。
「じゃあどうするの?」
「それで良いのではないか? ルミナさんがそれで良いと思うのなら問題無いだろう」
ルミナが俺達に合わせて選んだ素材なので、問題は無いはずだ。
考えるにしても知識が少ない俺が考えるより、最高クラスの錬成魔法の使い手であるルミナに任せた方が良いだろうしな。彼女に全て任せることにする。
「分かったわ。それじゃあシオンには刀をプレゼントするわね」
「うん!」
と言うことで、シオンへのプレゼントは刀に決定した。
「ところで、虹オリハルコンを使う場合だとどのぐらいの値段になるの?」
ここでシオンが興味本位にそんなことを尋ねる。
「そうね……値段を付けるのは難しいわね」
「何で?」
「虹オリハルコンは稀少すぎて市場に出回ることが無いのよ。私も市場に出回っているところは見たことが無いわ」
「そうなんだ」
オリハルコンは硬度、魔力伝導率が共に優れた最上級の魔法金属で、硬度に関しては至上最硬と言われている。
そして、オリハルコンは通常は透明度の高い水色をしているが、ミスリルのように色の異なる属性魔力が籠った物も存在する。
今回話に上がっている虹オリハルコンは、虹ミスリルのようにあらゆる属性の魔力が籠ったオリハルコンだ。
オリハルコン自体が非常に貴重なので、当然、虹オリハルコンは超が付くぐらいの稀少品だ。
そして、それ故に市場には出回っていないらしい。
「私も数十年色々な場所に行って来たけど、虹オリハルコンが市場に出回っているところは見たことが無いわね」
「アタシも同じく」
エリサとアーミラも市場に出回っているところは見たことが無いらしい。
それはそうと、ここで気になったことが一つ。
「数十年……?」
今エリサは"数十年"と言っていた。
だが、彼女達の年齢はどう見ても十三か十四だ。
「あら、知らなかったのかしら?
俺の疑問に答えたのはルミナだった。
「そうなのか?」
「ええ。二人に初めて会ったのは学院時代だったけど、そのときから見た目は変わっていないわね」
ルミナがエリサ達と出会ったのは冒険者としての一線を退いてからからだと思っていたが、どうやらそうでは無かったらしい。
「成長しないってこと?」
「成長しないと言うより、歳を取らないと言った方が近いわね」
「そうなんだ」
「それで、他の武器はどうなんだ?」
少し脱線していたので、ここで話を戻す。
「他の武器は魔法弓よりかは安くなるわ」
「どのぐらいだ?」
「そうね……控えめな性能にしておいた方が良いかしら?」
「ああ、それで頼む」
最上級の物にすると億単位の金額になるからな。性能は少し控えめな物にしておく。
「刀は三千万、短剣は一千万、魔法弓は一億ぐらいね」
「随分と値段に差があるな」
短剣と魔法弓に至っては十倍差だ。
「魔法タイプの武器はどうしても高くなるのよ。刀と短剣に虹ミスリルを使っていないというのも大きいわね」
「なるほどな」
「本当は刀や短剣にも魔法を補助するような物にしたかったけど、そうすると一気に値段が上がるから止めておいたわ」
「そうか」
やはり、魔法関連の物となるとどうしても高くなってしまうようだ。
「それで、銃剣はいくらになるんだ?」
それは分かったのだが、ルミナは何故か銃剣の値段を言っていなかった。
魔法関連の物は高くなるようなので嫌な予感しかしないが、その値段を聞いてみることにする。
「作ったことの無い武器でまだ構想が出来上がっていないから、値段は算出できていないわ」
「む、そうか」
確かに、今初めて見た武器だからな。それも無理は無いだろう。
「とりあえず、明日中には性能別の金額の査定を終わらせておくから、それを見てどれにするのかを決めると良いわ」
「分かった」
「さて、そろそろ日も落ちそうだし、ミィナとリーサは夕食の準備を始めてくれるかしら?」
ルミナはミィナとリーサに指示を出しながら、エリサから受け取っていた魚介類の入った箱を取り出す。
「分かりました」
「分かったわ」
そして、二人は魚介類の入った箱を持って台所に向かった。
「私はエリュとシオンの武器の詳細な構想を考えて来るわ」
ルミナはそれだけ言い残して、自分の部屋に向かう。
「ボク達はどうする?」
「とりあえず、荷物の整理だな」
「分かったよ」
「ところで、エリサ達は明日はどうするんだ?」
今後の予定を立てるために、エリサ達の予定を聞いてみる。
「冒険者ギルドで代金を受け取り次第、向こうに戻る予定よ」
「そうか」
「あなた達はどうするつもり?」
「俺達はここに残って冒険者としての活動をするつもりだ」
冒険者になったは良いものの、あまり活動をできていなかったからな。
ある程度、実力を付けることができたので、そろそろ本格的に活動し始めても良い頃だろう。
「そう。それならキーラを貸しておいてあげるわ」
「良いのか?」
「ええ。こっちは他にも移動用の魔物はいるから大丈夫よ」
「そうか。助かる」
キーラがいれば移動時間を大幅に短縮できるので大助かりだ。
「でも、キーラはどこに置いておけば良いの? 店には置いておけないよね?」
「む……」
シオンの言う通り、キーラを置いておく場所が必要だ。
空間魔法で別次元の空間を作ることができれば良いのだが、俺達にはまだそれができない。
「……ルミナさんに何とかならないか聞いてみるか」
俺達ではどうにもならなそうなのでルミナに相談してみることにした。端末を使ってルミナに通信を繋ぐ。
「ルミナさん、少し話があるのだが良いか?」
「ええ、良いわよ。今からそっちに行くわ」
「ああ」
そして、ルミナが来たところで、キーラについてのことをルミナに相談した。
「それならレイルーンに預かってもらえば良いわ」
「レイルーンさんに?」
「ええ。とりあえず、私にその魔物を渡してくれるかしら? そうしたら、後は私がレイルーンに事情を伝えて預けておくわ」
「エリサ、それで良いか?」
キーラの所有者であるエリサに確認を取る。
「ええ、それで構わないわ。それじゃあ早速渡すわね」
そして、エリサは空間魔法でキーラを呼び出した。
「キィーッ!」
キーラは元気な鳴き声を上げて魔法陣から飛び出して来る。
「何か出て来たー!?」
「っ!?」
「うわっと!?」
「おっと!?」
「うわわっ!?」
「っ!」
キーラを見たことの無いミィナとリーサ、『
ルミナはこの程度では驚かないらしく、特に反応は無い。
「キーラ、しばらくこっちでエリュとシオンと一緒にいてくれるかしら?」
「キィッ!」
そんな驚いているメンバーを気に留めることなく、エリサはキーラに話し掛けた。
「だ……大丈夫なの?」
ミィナがキッチンに隠れて、顔だけを出してこちらを見ながら聞いて来る。
「大丈夫だよ。ほら」
「キィッ♪」
シオンがキーラを撫でて、安全であることを伝える。
「この魔物は初めて見ましたが、何の魔物なのですか? グリフォン系であることは間違い無いようですが」
キーラを見たレーネリアが何の魔物なのかをエリサに尋ねる。
「この魔物はミストグリフォンよ。グリフォン系は乗りやすいから騎乗用にはオススメね」
「ミストグリフォンですか。確か、霧の領域の固有種でしたよね?」
「ええ、そうよ。良く知っていたわね」
「一応、勉強はしていますので」
レーネリアは貴族の娘で非常に優秀だったので、英才教育を受けていたのだろう。
なので、それなりに知識はあるようだ。
「それじゃあこの子は私が一旦預かるわね」
「ええ」
そして、ルミナが空間魔法でキーラを預かった。
「私はレイルーンにこの子を預けてくるわね。夕食までには戻って来るわ」
「ああ。頼んだ」
ルミナはそれだけ言い残すと、キーラを預けにそのまま店を出て行った。
「さて、俺達は荷物の整理でもして来るか」
「だね」
そして、用が済んだところで、自分の部屋に行って荷物の整理をすることにした。
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