第2章閑話 神域にて佇む者2
神域で静かに佇むマキナは球体状の魔力空間を展開して、日常を過ごす転生者の様子を確認していた。
「もうこちらでの生活には慣れたようですね」
エリュ達はこの世界での生活にもすっかり慣れて、そこには既に「日常」と呼べるものができていた。
「二人ともかなり成長しましたね。実力者と呼べる領域にまで達したと言って良いでしょう」
そして、エリサ達から受けた修行によって、実力者と言っても差し支え無いほどの実力を身に付けていた。
「ただ、ここまで早く成長するとは思っていませんでしたが」
だが、その成長速度は彼女の予想を超えたものだった。
「やはり、対人に限られたとは言えそれなりに戦闘経験があったのに加えて、戦闘に対しての高いセンスを持ち合わせていたのが大きいですね」
エリュ達は対人限定とは言え戦闘経験があったので、基礎から学ぶ必要は無かったのと、戦闘に対しての高いセンスがあったので、すぐにそれなりの実力を付けることができた。
「まあ少々無理をしたというのはありますが」
もちろん、元々戦闘に向いていたことに間違いは無いが、少々無理をしたというのもこの速度での成長を可能にした要因の一つだ。
「やはり、恵まれた環境にあることは大きいですね」
エリュ達が成長することができた最大の要因は恵まれた環境にあるという点だ。
当然のことではあるが、環境が整っていなければ学ぶことすらできない。戦闘面でのことや魔法について学ぶにしても、必要な資料を集めたりそれらの知識を持った者に教えてもらう必要がある。
エリュ達には戦闘を指南できる者や魔法の知識がある者がいて、さらに比較的安全に実戦練習できる場もあった。
なので、実力を付けるには非常に恵まれた環境にあったと言える。
「特に浮遊大陸での経験は貴重なものになったのではないでしょうか」
浮遊大陸は特殊魔力地帯であることはもちろんのこと、場所が場所なだけに簡単に立ち入れるような場所ではない。
今回エリュ達は浮遊大陸に気楽に立ち入っていたが、それが可能だったのは実力者揃いのエリサ達がいたからだ。
つまり、環境が整っていたからこそできた貴重な経験だったと言える。
「ひとまず、ゴーレムの素材集めは無事に終わったようですね」
今回、浮遊大陸に向かったのはエリュ達の修行のためでは無い。
それはあくまでもついでで、メインの目的はゴーレムの素材を集めることだ。
「ゴーレムのデザインはエリュが担当するようですね。ルミナは早速ゴーレムの製作に取り掛かっていますが、素材ごとに色々と試したりするようなので、完成には少々時間が掛かりそうですね」
各地から様々な素材を集めて回ったが、これは色々と試してより高性能なものにするためだ。
なので、大まかな設計図は既に完成しているが、本製作に取り掛かるのは使う素材が決まってからになる。
「あの設計図のベースとなる物はヴァージェスが機構天使を参考にして作った物のようですが……恐らく、大丈夫でしょう。かつての神属兵器とは言え、あくまで参考にしただけですし、完全再現は不可能ですから」
マキナには一抹の不安が
「……機構天使ですか。かの争乱の残滓は今も残されて、今の世界にも僅かながらではありますが影響を与えているということですね」
機構天使、それはかつての大戦にて残された負の遺産とでも言うべき存在。
それが僅かながらも世界に影響を与えているという事実がそこにはあった。
「しかし、まともに活動できる個体はもう『断界』に僅かに残っているだけになりましたし、全て討伐されるのもそう遠くは無いでしょう」
ただ、今はもうほとんど残っておらずその数は少ないので、全て討伐されるのもそう遠い話では無かった。
「そうなれば、この世界は完全に管理者の手を離れて、自らの歩みを進めるようになると言って良いでしょう。そして、そうなってようやく私達の願いが果たされます」
もうこの世界に管理者の手は必要無いと静観を決めたあの日からどれほどの時が経ったのかは分からないが、その願いが果たされる時は近いと確信を持って言うことはできた。
「私は最後の管理者。管理者としてただ世界の行く末を見守るだけです」
そして、そう言うと魔力空間を閉じて、今回の地上の様子の確認を終えた。
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