第2話 俺の給料すべて貢ぐ
そこはまるで異世界だった。
光り輝くサイリウム。多くの人々の声。目の前には可愛らしい少女達が歌って踊ってピースサイン。
俺にとってそれは、現実世界とは大きくかけ離れた、夢の世界のように感じた。
それが俺の地下アイドルのライブに対しての第一印象。
中学生までがり勉だった俺は、休み時間になれば何らかのテキストを開いて問題を解き、学校が終わればいち早く校門を出てまっすぐ塾へ向かう。
言わば陰キャだ。
俺はそんな味気ない学校生活を送っていた。
特に不満もなかったし、みんなでわいわいはしゃいでいるのは馬鹿らしいと、心の内ではクラスメイトを蔑むというあまりにも残念過ぎる小学生だった。
そんな俺を見かねてか兄は楽しそうに、
「お前の世界に色を与えてやるよ」
そう言い、俺の手を引っ張って行った。
兄は俺とは対照的でいわゆるリア充。
そして憎むぐらいのイケメンなのだ。一体どういう遺伝子の分け方をしたらこうなるのか、神様を呪ってやりたくなった事は数えきれないほどある。
そんな兄に連れていかれたそこは、兄の宣言通り俺にたくさんの色を与えてくれた。
今まで経験したことのない高揚感に見舞われ、それ以来地下アイドルという名の沼にどっぷりハマっている。
もちろん高校生になった今でも勉強にはまじめに取り組んでいる。
当たり前だろう!
いい大学を出て、いい会社に入って。
そして、たくさんの給料を夢見る少女たちに貢ぐのだ!
え、青春?そんなものはとっくに彼女たちに捧げている。
そんなわけで休み時間は相変わらず勉強に励んでいる。
変わったことといえば、学校が終わり次第バイト先へ向かうことだろうか?
少しでもアイドルに貢ぐため俺はバイトをし、給料すべてを彼女たちへと回している。
だから。
こんなドルオタな俺に、リアルの青春イベントを求めないでほしい!
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