第71話 アルドウェンとの激闘

「ふふふ、よく来たな、冒険者たちよ・・・」


「しゃべった? こいつがアルドウェンか?」


「そう、この方が、我らが主、アルドウェン様だ」


「というおまえは、バンパイア・ロードか」


「キキキッ!」


「鳴いてる奴らは、警護のバンパイアだな」


「このアルドウェンの元までたどり着いたこと、褒めてや・・・」


 カイが『かまいたちの杖』を、威力増大+10で容赦なく、小物のバンパイアたちに放ちました。バンパイアが細切れになって動きを止めます。いくらアンデッドとは言え、細切れになれば動きはとれずに死んだも同然です。


「えっ? ちょっと? これから盛り上がるところなのに」


 ベリアルが破邪魔法を唱えました。バンパイア・ロードの肉体が塵と化し、まとっていた衣服だけが床に落ちました。


「あっ、バンパイア・ロードまで! 君たち、名乗りとか前フリの最中は襲わないって、お約束知らないの?」


 ザザが『空壁』の魔法を唱えます。


 グレコとラシャが、アルドウェンに襲いかかります。


「ちょっと! 気が早いぞ!」


 アルドウェンも腰のレイピアを抜いて迎撃しました。身のこなしも軽く、グレコとラシャの初撃をかわします。


「むむ、『爆炎』の魔法で吹き飛ばしてやる・・・って、あれ、皆『魔法反射』かけてある? だめじゃん、こっちが吹き飛んじゃうじゃん!」


「しっ!」


 戸惑うアルドウェンに、鋭い呼気とともに繰り出されたグレコの剣がヒットし、軽く裂かれたローブから鮮血が吹き出します。


「おのれ!」


 アルドウェンは、鋭い突きでレイピアを繰り出し、グレコの喉を貫きました。と思った瞬間、レイピアの刃は鋼鉄と化したグレコの喉に弾き返されていました。『鉄化の指輪』が起動したのです。


 そのすきに、ラシャのデーモンダガーがアルドウェンの脇腹をえぐります。


「あ、すっごい痛い! 回復魔法かけないと」


「させるか! せいっ!」


 アルドウェンの胸を袈裟懸けに振るわれた『カシムの剣』が切り裂きました。


「うぐわーっ!」


 迷宮の主、大魔法使いアルドウェンは倒れました。一回も魔法を使うことなく・・・


「完封できてよかったんだけど、なんだか英雄になった気がしないのはどうしてだ?」


 グレコがうなだれて言いました。


「カイが敵がなんか話している間に、かまいたちの杖使うから・・・」


「敵に隙きを見せるな、即時殲滅せよと、練習をさせたのはグレコたちではないか」


「まあ、そうなんだけどさ・・・たしかに、これまで前口上を言う敵に出くわさなかったから、いきなり襲いかかるのが習慣になってたもんな・・・」


 すると、誰もいないはずの空間から声がしました。


「まったく野蛮な。高貴なるアルドウェン様の演出が台無しだ」


 なんと、さきほど破邪の魔法で塵と化したはずのバンパイア・ロードがもう再生をして、上半身の半分ほどを床から突き出していました。再生中の体は、なにやら泡立っているようです。


「あれっ、もう蘇ったの? 俺が前に倒したロードはバラバラにしたら死んだのに」


「それはまがい物だ。真のバンパイア・ロードである私が死ぬことはない」


「ベリアル殿、もう一回『破邪の魔法』を」


「ちょっと! 待った、待った! 我々にはもう戦う意思はない!」


「そうじゃよ、ああ、痛かった」


 なんと、倒したはずのアルドウェンも、また無傷になって蘇っていました。レイピアを鞘に戻し、ラシャに刺されたお腹をさすっています。


「!!! アルドウェン! 倒したはずでは?」


「わしも不死身なんじゃよ。500年前に不老不死の研究をしておってな。試しに、魔法の護符に魂を縛り付ける実験をしたら、成功してしまってな。死ねない体になってしまったのじゃ。それで、あんまり暇なので、ダンジョンを作って、冒険者の戦いを眺めて暇を潰しておったのじゃ」


「この命がけのダンジョンはおまえの暇つぶしだったのか?」


「ああ、自分が不死身じゃから、生死の際どさの基準がよくわからなくなっておってな。適当にモンスターを徘徊させていたんじゃが、危なかったかの?」


「ダンジョンで敵に出会ったら、有無を言わさず切り捨てるような習慣がつくぐらいにはな・・・」


「そうかそうか・・・ちょっとやりすぎたかのう・・・それで、せっかくだし、茶でも飲んでく?」


 なぜか、ベリアル隊はアルドウェンたちとお茶会を開くことになりました・・・

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