第70話 第10層

 第10層の攻略は順調でした。ベリアルとカイが揃ったパーティは、強力な攻撃魔法で、敵をなぎ倒すことができます。


 第一回廊で現れた毒巨人は、ベリアルが『塵化の魔法』で一掃しました。毒巨人は強力なモンスターですが、塵化の魔法に弱いのです。その弱点をついた攻撃でした。


 第二回廊では、鎧をまとった獣人の騎士が現れましたが、カイが『窒息の杖 +10』を放って即死させました。


 第三回廊では、バンパイアの群れが現れましたが、ベリアルが魔法使い最強の攻撃魔法『爆炎』で吹き飛ばし、運良く残った数体も、カイのかまいたちの杖でばらばらになり、最後の一体はラシャの『デーモンダガー』で切り裂かれました。


 第四回廊では、強敵のドラゴンゾンビが現れました。ブレスと魔法を両方使い、アンデッドなので窒息の魔法も効かない難敵ですが、ベリアルの『爆炎』とカイの炎の杖連射で、押し切りました。


 第五回廊では、迷宮内ではアルドウェンに次ぐ力を持つ魔法使い、アークメイジが現れましたが、シャドウが使うのと同じ即死魔法をザザが放ったところ、これが効果を発揮し、一撃で撃退しました。


 第六回廊では、ピエロのような格好をした妖魔が現れました。あらゆる状態異常攻撃を行い、炎も吐く強敵ですが、ラシャとカイが窒息の魔道具を連射した結果、あっけなく命を落としました。


「なんだか、気味が悪いぐらい順調に来たわね」


 ラシャがふうとため息をついて、ダガーをしまいます。


「なあ、皆。ひとつ言いたいことがあるんだが・・・」


 グレコが言いました。


「俺の出番、なくない?」


「うん、全然ないな」


「そもそも、決死の覚悟で、アルドウェンの討伐をするって言い出したの、俺じゃない。もっと見せ場とか、苦戦した仲間を俺の剣で助けるとか、そういう演出欲しいところじゃない?」


「演出するために戦っているわけではないからな。パーティの総力をあげて、最速で敵を倒すのが至上だ」


 ベリアルが真面目に応えます。


「それで読者が満足するんですか・・・」


「読者って誰ですか?」


 ザザが不思議がります。


「正直な話、カイ殿の魔法の杖で補助魔法を+10でかけてもらっているからな。装備の重いグレコより、ラシャや後衛の我々の方が、圧倒的に初動が早いのだ。それで魔法攻撃で一撃で倒してしまうと、戦士の肉弾戦まで仕事が回ってこないのだ。楽できていいじゃないか」


「何かが違う気がする・・・バトルものとして・・・」


「アルドウェンはここまでのようにはいかないだろうから、グレコも気合を入れて頼むわよ」


 ラシャがフォローします。


「ただ、アルドウェンについては、伝説から、その戦力がほぼわかっている。アルドウェンにバンパイア・ロードがつきしたがい、さらに小物のバンパイアの群れが警護をしている形だ。

 バンパイアロードは、私の『破邪の魔法』で一発で葬る。カイ殿は攻撃魔法の杖で小物のバンパイアを殲滅してくれ。うちもらしは、ラシャがダガーで止めを刺せ。アルドウェンは魔法使いだがレイピアを操り、肉弾戦も得意と聞く。ここでグレコがほぼ一対一で戦うことになるだろう。

 ザザは『空壁』の防御呪文をかけて、グレコの援護を。戦闘前に『魔法反射の杖』をかけておこう。グレコは肉弾戦でダメージを受けても回復魔法は受けられないと思って、覚悟をしろ」


 ベリアルの説明に、メンバー全員が了解をしました。


「ついに、俺の出番がやってくるな。よし、それじゃあ、いくぞ!」


 グレコが第七回廊の玄室の扉を蹴破りました。

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