第13話 鉄化の指輪3
グレコとの雑談を終えたカイは、ひとしきり作業に集中し、1時間ほどで、鉄化の指輪の試作品・・・指輪にする前の魔法石・・・ができあがりました。
色は鉄化にふさわしく、なめらかな鉛のように変化しています。
「これを握って、心の中で鉄化しようと念じてみてよ」
「ちょっとドキドキするな」
魔法石を受け取ると、グレコは言われたとおり、念じてみました。
すると、ほんの一瞬全身が鋼鉄と化したのがわかりました。
「試作魔法石の作成は成功だね」
「すごい! でも、これで完成じゃないのか?」
「試作用だから指輪にするには大きめの魔法石を使ったんだ。本番は、指輪にできるさらに小さい魔法石で作る。魔法陣の刻印がさらに難しくなるけど、なんとかなりそうな感触は得た。完成はまた、1週間後だね」
「ありがとう、よろしく頼むよ」
そして、1週間後、完成品が無事できあがりました。
グレコはそれを左手の中指にはめました。
「ちなみに、一度使って、次に使える前にクールタイムは1秒だ。1回あたりの鉄化時間が0.5秒と短いだけに、かなりの頻度で連発できるようになった」
「それはすごい。さっそく試してみたいところだが」
「モンスター狩りに行くかい?」
「今月も赤字なのか?」
「赤字じゃないけど、顧客の納品後アフターフォローの一環さ」
「じゃあ、行こうか!」
冒険者ギルドで依頼を探すと、グレコが一枚選んできました。
「これがいいな。ゴブリンの巣殲滅。ゴブリン・チャンピオンの出没情報あり」
「ゴブリン・チャンピオンは手強いだろう」
「だからこそ、作ってもらった鉄化の指輪の威力が試せる。チャンピオンと一騎打ちをさせてくれ」
「わかったよ。危なくなったら、回復や援護はかけるけどね」
カイとグレコはゴブリンの巣になっている洞窟にたどり着きました。
「洞窟は一本道で、一番奥にチャンピオンがいる可能性が高い」
「じゃあ、挟み撃ちの心配もないし、魔法の杖で弾幕を張って押し切ろうか」
そうして、カイは魔導具箱から、2本の杖を取り出しました。右手は雷撃の杖、左手は炎の杖です。
洞窟を進むと、普通のゴブリンが現れました。
「じゃあ、弾幕張るよ。雷撃の杖 5連射! 炎の杖 5連射! 雷撃の杖 5連射! 炎の杖 5連射!」
こうやって、雷撃の杖と炎の杖で、雷撃と火炎の球をひっきりなしにあびせかけられては、ゴブリンたちになすすべはありません。
次々と炎に焼かれて倒れていきました。
グレコは呆れ顔で、つぶやきました。
「これは反則だよなぁ・・・」
その調子で洞窟を奥に進むと、いきどまりの部屋には、やはりいたのです。普通のゴブリンの5倍の背丈はあろうかという、ゴブリン・チャンピオンが。
グレコが剣を抜いて、盾を構え、カイを後ろにかばって、ゴブリン・チャンピオンの前に立ちふさがりました。
カイは念の為、雷撃の杖を、癒やしの杖に持ち替えます。
そして、グレコとゴブリン・チャンピオンとの戦いが始まりました。
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