第3話 頬をなぞる
やっぱり恋なのだろうか?
同性に恋するのはおかしいことじゃない、そう学校では習っている。でも。不安は尽きない。たった一つ確かなことは、私が陽菜ちゃんのことが好きだということ。それが恋なら、それはそういうことだ。
「花純っ、どうかした?」
「ぅえっ?!う、ううん……?なんでもないよ…」
陽菜ちゃんに呼びかけられて少し焦る。これでも、まだ陽菜ちゃんは私があのノートを見たことなんか知らずに、小説を更新するんだろう。
「あったかい日差しだね」
窓側の私の席まで遊びに来た陽菜ちゃんがつぶやく。
「そうだね」
そういうや否や、私はまた好奇心と好意と興味の入り乱れた桃色の気分で、陽菜ちゃんの繊細な肌をなぞってみる。
「ぁ、あ」
陽菜ちゃんが可愛くてぼんやりした声をあげる。
その声に誘われるように、陽菜ちゃんのお餅みたいに白くて柔らかい肌に手を乗せる。
「ひぁ」
細かい喘ぎ声を上げてその雪のような肌に血色が滲む。そして、えへ、と笑う。
「最近、花純私のことたくさん触ってくれるよね」
ギク。頭の何処かで音が鳴っている気もするが、無視して平然を装う。
「うん。ごめん、嫌だった?」
「嫌じゃないよ。でも、…」
でも?
「花純が私のこと好きだって言ってくれてるみたいで、なんか嬉しいから」
ホントに、好きなんだよ。
口の中に含んだ言葉は空気を知ることなく、こくん、と飲み込まれた。
そしてその日の帰り道、私は陽菜ちゃんに思い切って尋ねた。
「あのさっ、陽菜ちゃん」
「なぁに?」
「あの、陽菜ちゃんは、っ私のこと、好きなの?」
理由は二つある。一つは、このままでは、私のこの、伝えたいことが伝えられないという気持ちのつっかえを取るため。もう一つは、このままこっそりと陽菜ちゃんに好意を隠し続けるのは難しいってことに気づいたから。
「もちろん、好きだよ。花純は私と話してても楽しそうだし、いい友達だよ」
「そういうことじゃなくて…、その、」
喉が詰まる。でも言わないと、私のこの胸に潜んだ痛い思いは、いつまでもここで私の首を締め続けるだろう。思い切って伝える。
「…私のこと、恋愛対象として見てる?」
「………見てるに決まってるじゃん」
その時。私の身体の中で錘のような暗い影がスッと消えたかと思うや、私は張り詰めていた気持ちを全て吐き出すかのように、陽菜ちゃんに。
陽菜ちゃんに、キスをした。
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