第7話 買い物
結局、スキルの確認だけで一日が終わってしまった。
「おっ! うちのギルドのヒロインが来たぞ!」
「ヒューッ! エリーちゃーん!!」
「ついでにピンクもかわいいぞ!」
日が傾き、エリーと共にギルド横の酒場で飯を食おうと中に入ると、囃し立てる声とともに歓迎された。
アタシ達は噂になっていたらしい。
だがついでは許さん、ちゃんと覚えておけ。
「俺達が先に目をつけたんだぜ!」
「いきなりランキング五位と九位……。私の目に狂いは無かった」
いきなり有名になったとおもったら、そこの酔っ払い共の仕業か。
いつまで飲んだくれてるんだ。
ダンジョンでも森でもいいから狩り行け、狩り。
まあ昨日から色々あって疲れた。
今日はアタシも飲んだくれて寝るさ。
朝起きると柔らかい胸の内側で目が覚める。
はて……。酔った勢いで娼婦でも買ったかな?
!! いや、違う!
起きるとそこはアタシの部屋だ。
そばに寝ているのはエリー。
何故か全裸だ。
そしてアタシも全裸だ。
……アタシもエリーもいい形してるな
「ん……。あ、おはようございます。マリー」
「お、おう。ところで昨日なんだが……」
「昨日ですか? 皆さんと飲んで解散したあと部屋まで帰って来たんです。それからマリーが暑い〜って言っていきなり脱ぐのはビックリしました」
おう……だが一線は越えていないようだ。
どうやらギリギリセーフ……か?
「その後にエリーも脱げ〜って暴れるから、しょうがなく私も服を脱いで一緒に寝たんですよ」
いや、やらかしていたか。
だがまだ許容範囲内だ。
「でも裸で寝るって気持ち良いですね。胸で抱きしめたらすぐ寝始めるし可愛かったです」
「それ窒息してたんじゃね?」
一線を越えなかったならまあいいか。
今日は冒険者用の服を買ってギルドに正式に登録をおこなうのだ。金は下ろしてある。
「あ、マリー」
「ん?」
「昨日、寝る前にしてくれた約束……嬉しかったです。よろしくお願いしますね」
アタシはナニを言ったんだ。
アタシはエリーと二人、この街で人気の女性冒険者専用店に行くことにする。
かなりオシャレな店だ。
アタシなんかが入って目が潰れないだろうか。
恐る恐る中に入ると、若い店員が一人。
「いらっしゃませー。」
気さくな笑顔で対応してくれる。
周りには初めて見るようなキレイな服がたくさんある。
とはいえ、綺麗すぎて触るのが怖いな。
「ご自由に広げて見てくださいねー」
ん、店員に態度を見られていたか。
ならお言葉に甘えて見せてもらおう。
「マリー、これなんかどうです?」
「おっ! カワイイな」
エリーから服の感想を聞かれる。
落ち着いた柄のスカートとセットの服だ。
「はいコチラ今年の新商品なんですよー」
店員がフォローしてくる。
新商品か。とりあえず買っておくか。
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「マリー、コレとコレどっちが似合いますか?」
「どっちも良いな。好みは右だけど。両方買っちまいな。金はある」
「良いんですか? ありがとうございます! お言葉に甘えますね」
「それならコッチのスカーフもオススメですよー」
「おう、それもいただくぜ」
エリーもオシャレすると映えるな。
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「なあエリー、この格好は……」
「素敵ですよ! この色マリーのピンクの髪とも似合ってます!」
いや可愛いのは嬉しいがな。
こんなもの冒険者に必要か……?
「ちょっとしたパーティーでも着ていけますよー。」
そうか、パーティ用か。
なら一着くらい持ってたほうが良いな。
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・
「ありがとーございましたー」
「マリー、今日は楽しかったですね」
「ああ、また今度……って違う!」
なぜ冒険者の服を買いに行ってちょっとしたパーティー用の服を買ってるんだアタシは。つかちょっとしたパーティーってなんだよ。
おかしい……。こんなに買うはずでは……。
あの店員はスキル持ちだったのか?
「エリー、服を宿に置いたらさっさとギルドに行くぞ」
「あ! そうでした! では早速着替えないとですね」
アタシ達は宿屋に戻ってじっくりと服選びをしたあと、ギルドへ向かった。
「おう、おせえなあ! おめかししてきたのか?」
「大きなお世話だ。前の服があまりにもアレだったもんでね。一般人に合わせただけさ」
ギルドに着くと開口一番おやっさんがニヤニヤ笑いながら声をかけてくる。
流石に服選びに時間をかけていたなんて言えねえからな。
「まあ良い、ほらよ。Gランクのギルド証二つだ」
おやっさんがギルド証を投げてよこしてくる。
ん? 二つ!?
「アタシもGランクなのか?」
「ああ、『マリー』もGランクだ。いきなりCランクのギルド証掲げてても俺は構わないがな?」
ニヤリと笑ってくるおやっさん。
確かにマリーとしては今回が初登録だ。
Cランクなんて掲げてたら怪しまれる。
実績もなしの完全一から出発って訳か。
「ああ……いや分かった。サンキュー、おやっさん」
「ギルドの初心者講座は免除しておいたぞ。お前からエリーには教えておくんだな」
それでいて初心者講習は免除、と。ありがたい。
存在しない髪の毛のためにトリートメントを欠かさないだけはある。
「ん?お前変なこと考えなかったか?」
「いや、なんでもねぇよ! じゃあな!」
「おいまだ話が……」
悪いなおやっさん。
ハゲの悩みは共有できねえんだ。
「エリー、ほらコレ」
待っていたマリーにギルド証を渡す。
「これがギルド証……。ありがとうございます。私達、これで冒険者ですね!」
「ああ、よろしくな」
「はいっ! ところで、これからどうします?」
「とりあえずさっさとEランク目指す……が、その前に」
「その前に?」
アタシはちょっと悪い顔で答えた。
「バレッタ伯爵の依頼を失敗させてこよう」
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