いつもの日常、、、?
「———それで、本当にその刀剣を盗んだのではないと?」
———と俺を目下に捉えて目を鋭く光らせる裁判官。そして俺は両手に枷をされて裁判室の真ん中で見せ物にされながら何度も同じ答えを言う。
「———はあ、何度も言ってます。これは冒険の途中で爺さんからもらったと。これが覇王五剣なんて知リませんでした」
———さて、なぜ俺が裁判をかけられているのか?そうそれは数日前にガブリオレとの戦闘で俺の携帯している刀剣が覇王五剣だとバレたからだ。
それも俺と同学年の奴らにあの現場を見られ、同盟軍本部からお呼び出しをくらった。
幸いに俺の魔法の事は覚えていない。
まあ、アザレアが記憶をいじったのだから当然か‥‥‥
また今学園中では少しだけ騒がしくなっている‥‥‥2年生と3年生が1年生に返り討ちに遭い、ボコボコにされたと。それも有名な貴族や名のある者達が決闘で卑怯な手を使い、1年生を暴行していた事と教師達の耳に届き、現在自宅謹慎中らしい。
例のガブリオレは本国へと帰省して、まあお灸を据えられているだろう。
そんなこんなで俺とガイ、レオナルドはAクラスを救ったヒーローになってしまった。驚くことにあのクズだったガイを知っている女性陣は今回の事でガイに行為を寄せている者が現れ始めた。元々クズだったガイが超イケメンで紳士になってしまったのだから、必然なのかもしれない。実際に大勢のクラスメイトを救ったのは俺ではなくガイとレオナルドだからな。
ちなみにロゼはまだ休養中だ。アシュリーが側で看病しているから心配はいらないだろう。
それよりも————
「———では、レオンとやら。すまないがその刀剣を妾の国に返して貰うが構わないか?貴様は知らなかったのだろうが、その刀剣は国の‥‥‥世界の宝だ。一個人がそれも学生が持っていて良い代物ではない事を理解してくれ」
「———な?!陛下!この者は知らぬとは言え世界の宝を所持していたのですぞ?!それも学生である子供が!いくら学生だからとは言え、何もお咎めなしとは‥‥‥」
「———せめて、彼を監視しなくてはなりません!もしかすると、裏で何者かと繋がっているかも知れない!」
と裁判官達は板状の液晶に映る女性に抗議をしている。しかし、裁判官達の意見は全て蹴られる事となる。それもその筈、なぜならその女性は————
「———ほう?妾に意見すると言うのか?小童の分際で随分と偉くなりよったのぉ?この獣族国の女王ストレニアに歯向かうと言うのか?」
「「「———!?い、いえ‥‥‥」
と裁判官達はかの女王に怯えて、顔を青ざめている。この裁判官達ですらSランクの強者なのに小童って‥‥‥さすが女王ストレニアだ。
液晶からでも分かるその気高しさはさすが王と言わざるを得ない。
それに学園の入学式ぶりか?あの時は遠くから見ていただけだが、このストレニア女王とは昔から因縁があるな。
「———でレオンよ。答えはどうだ?」
ストレニア女王は口角を上げながら俺に問う。もちろん答えは分かっているな?とそう問いかけるような感じがした。
「———はい。もちろんこの刀剣はお返しします。私には身に余るものです」
と液晶の向こうにいる女王と俺は視線が重なる。そして俺の瞳をのぞいて何か感じたのか、不意にこんな事を聞いてきた。
「———貴様、妾とどこかで会った事はあるか?」
その発言後はピシリと場が張り付いて、俺以外は誰も口を動かそうとはしない。
王の眼光が鋭く俺の瞳を射抜いてくる。
「———いいえ、女王陛下とお会いになったのは今が初めてでございます」
「———そうか。貴様のその佇まいを見た事があると思ったのだが、妾の気の所為だろう。余計な事を申してすまぬ」
しばしの沈黙の後、女王は何かスッキリしたのか裁判官達に裁判を終わらせようと促した。その裁判官達は女王の眼光にビクビクしては小動物のように縮こまっていた。
「————へ、陛下の御心のままに‥‥‥」
「———被告レオンをこの場から連れて行け」
そうして俺の裁判は幕を閉じる事となる。そして裁判室の扉の方へと連れて行かれながら、辺りを一瞥すると吹き抜け状の裁判室の2階の方に俺を見下ろしている1年Sクラスの同級生達‥‥‥アザレア達が心配そうにこちらを見つめていた。
その隣ではレベッカ先輩とヴァレンチーナ先輩‥‥‥そして現学園生徒会長のダンテ生徒会長までもがこの裁判を見ていたのだ。この裁判室を見渡してもざっと数百名の観察者がいる。とても人気者になってしまったらしい。
覇王五剣とはそれほどの代物というわけだったのか。
まだ刀剣の名前も知らずに俺は振るっていたのか‥‥‥なんか申し訳ないな
「———おい、ウロウロせず前を歩け」
と辺りを見ていただけなのに護衛の軍人に背中をつかれてしまった。
少しくらい良いじゃないかと、思ったがそういえば俺は被告側なことを忘れていた。
「はぁ、、、俺は無事学園に戻れるのだろか」
「———おい、ブツブツ言ってないであるかんか!」
護衛の人に背中を突かれながら、渋々裁判室を後にするのだった。
◊◊◊
「———はぁぁやっと解放されたぞ」
とそんなこんなで俺は無事学園に戻れてAクラスにいる。あれから2日間も尋問を受けては獄中生活のようだったな。毎回毎回同じ質問ばかり責めやがって、あいつら‥‥‥
今思い出してもムカついてきたな
———ピト
と脱力していると俺の頬に誰かが指をつけてきた。一体誰だ?なんて考えるよりも俺の頬に指をつけてくる奴なんて1人しかいない‥‥‥
「———どうしたファシーノ。俺がいなくて寂しかった?」
と嫌味ったらく彼女に向けてにやにやと笑う。そんな俺の表情を見てはため息を吐いて残念そうに話した。
「———そうね。とっても静かな日々だったわ。けれど、それも今日でおしまいね」
ん?静かだって?ファシーノは一体何を言っているんだ‥‥‥
「———静かだって?学園中いろいろと騒がしかった印象だったけど?」
「だって私に関係ないもの。それよりほら————」
うん、サバサバしているのか無干渉なのか‥‥‥あれだけの事をしてもファシーノは動じない。さすが月下香NO1だ!
とファシーノが指をさした方向へと視線を向けると、そこには元気なロゼの姿が‥‥‥
「————レ!?」
「————レ?」
俺と視線が重なるなり、ロゼは俺の方へと勢いよく向かってきて‥‥‥
「————レオン!!」
——————ガバっ!
「———おお、ロゼ元気になったな、、、いててててて!!!」
俺に飛びついてくるや否や、見事に俺の骨が軋んでゆく。
抱き着いてくるのはとても嬉しいのだが、さすが獣人‥‥‥
力が有り余っている‥‥‥
「———ロゼ、レオンが死んでしまうわ?」
とファシーノがロゼに力を緩めるように指示すると、ハッとした表情でロゼは力を緩めた。
「すまんレオン!あの時の礼がまだだったからよ!私らを助けてくれてありがとな!」
ぎゅうぅぅぅっと力一杯に再度抱きつくロゼ。もう、言っても意味がないとわかったファシーノは何も言わずにただじっと見ていた。
それもそれで怖いのだが、今はロゼの好きにさせておこう‥‥‥
「———ロゼ、そろそろ恥ずかしくなってきたから離れてくれないか‥‥‥」
「———む?そうか?レオンがそういうのなら離れよう」
とひとまず解放されて、安心した。あのままは流石に骨が折れていただろう‥‥‥いや、俺の体は頑丈だから骨は折れないが‥‥‥それに似た感覚と痛覚に襲われる
ともあれ、ロゼが無事に学園生活に戻れて何よりだ。
そして、アシュリーもロゼを追いかけて俺のところまで来てくれた。
「———あら、レオンくんおはようございます」
「———ああ、アシュリーおはよう。ロゼの看病ありがとう」
「———ふふふ、それはこちらの方です。皆さんを、ロゼを救ってくださってありがとうございます」
真剣な面持ちで礼を尽くすアシュリー。あの場でもし、アシュリーが気づいていたらロゼを助けたかった想いはアシュリーが1番だろう‥‥‥やりきれない思いが伝わってくる。
気づいてあげられなかった、助けに行けなかった後悔が彼女の心に今もなお残っている
「———アシュリーもロゼの看病をしたんだ。1番近くにいたのアシュリーだ。ロゼのこの笑顔も俺だけじゃなくてアシュリーのおかげだよ」
「———レオンくん‥‥‥ありがとう」
と今度は笑顔でしてくれた。気持ちもスッキリしたことで久々の学園生活の始まりだな
「———お!レオン!来ていたのか?!」
「———レオン様!一体どちらへ?!」
とレオナルドとガイが心配していたのか、俺の元へと集まってきた。
なんだかんだ、いつもの日常が戻って何よりだな!
と、そんな風に思っていると、扉の方から金髪の女性が歩いてくる
真っ先に俺を見つけるや否や、一直線に俺たちの方へと向かってくる。
「———ねえ彼女はSクラスの!?」
「———わぁ‥‥‥綺麗‥‥‥」
周りが騒つく正体の彼女は‥‥‥
「———放課後私たちの講堂にきて」
「———ああ、わかったよアザレア」
やはりというべきか、こうなると予想はしていたが‥‥‥うん
さてさて!放課後までにいろいろと考えるぞ!
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