Aクラスを襲う罠
「———グスッ‥‥‥‥ロゼちゃんは、私の代わりに決闘を受けて‥‥‥それで、先輩達が卑怯な手を使ってロゼちゃんを笑い者にして‥‥‥グスッ‥‥‥制服を奪われて殴られたり蹴られたりして‥‥!それで、魔道具で写真まで撮られて!そして、言うこと聞かないとこれをばら撒くぞって脅されて‥‥‥っ」
「———そうか。そんなことが‥‥‥‥他の皆もそれで黙っていたのか?」
そう言って、俺はAクラスの同級生達に視線を移す。
すると、エルフのミラと言う女子が震えながらその唇を動かして、これまでの噂の真実を教えてくれた。
「‥‥‥ごめんなさいレオン君。私たちでも先輩に勝てるかなって思って‥‥‥‥でも、甘い誘いに乗ってしまって‥‥‥それで、土下座や靴を舐めたりして‥‥‥でも助けや教師に言ったら脅されるし‥‥‥それに‥‥‥相手は各国の位の高い貴族達で‥‥‥家族に何かあったら‥‥‥」
と言うミラの言葉と同じく俯き出す数人の男女。彼ら、彼女らも甘い誘いに乗っかり、そして罠にはまってしまったのだろう‥‥‥
「———全部私が悪いの!ロゼちゃんが暴力振るわれているのに見ている事しかできなかった‥‥‥何もできない臆病な私が悪いの‥‥‥‥」
膝を震わせながら小動物のように縮こまる彼女。ロゼが身を挺して助けた同じA クラスの彼女の名前を俺は知らない‥‥‥100人近くいる優秀なA クラスでも俺は半分の名前しか知らない‥‥‥しかし、不良でやんちゃなロゼは彼女を助けた。
ああ見えて、ロゼはAクラスの全員の名前も顔も分かっているのだろう
「———いいや、君のせいじゃない」
俺は優しく語りかけ、彼女を安心させようと肩に手を置く
「そしてすまない。奴らはどんな手を使った?」
そう言うと彼女は首を横に振ってこう言う
「———分からない‥‥‥急に魔法が使えなくなって‥‥‥それで‥‥‥」
戸惑いながらも記憶を辿る彼女。俺は他の被害者達に視線をずらすと、皆同じように頷いていた。
「———レオン。一体どうするつもりだ?下手に動けば彼らの写真が出回ってしまう。とても許せない行為だが、慎重に行くべきだろう」
「———私もそう思います。レオン様。この人族と意見が合うのが気に食わないですが、ここは情報を掴んでから行動致しましょう。無論、只ではすみませんが」
とレオナルドとガイが慎重に行くべきと忠告するが、俺も彼らに賛成だ。
下手に動き、気づかれてしまっては彼らの写真が出回ってしまう恐れがある。
だが、気づかれなければ良い。気付かれないは俺達の専売特許だからな
「———ああ、慎重に動くとしよう。レオナルド、ガイは奴らの情報だ。現実を受け入れられないバカ共を突き止めろ」
「ああ!」 「仰せのままに」
そう2人に指示を出すと、エルフのミラはとても心配そうにして俺の元へと駆け寄ってくる。
それもそうだろう、俺たちの行動が気付かれれば、彼女達はルールを破ったことになり屈辱な写真はばら撒かれる。気が気じゃないだろう‥‥‥‥
「———本当に‥‥‥本当に大丈夫なの?もし、気付かれてレオン君達にまで被害が及ぶかもしれない‥‥‥私たちは自身の力を過信して罠に嵌められたのよ。自業自得なの‥‥‥これ以上レオン君達にまで被害が及んだら‥‥‥それにレオン君達たった数人でも彼らに勝てわしない‥‥‥だから‥‥‥」
とミラは俺たちの心配をしてくれていた。自身の屈辱な写真がばら撒かれる恐れもある中で、俺達にまで被害が及ぶかもしれないと心配している。
さすがは俺達Aクラスだな‥‥‥自身よりも他人の行動を心配する優しき心。
これこそが誇られるべき心であり、慕われる人物像。
このような者が下衆な者達によって汚されるなど、断じてあってはならない
「———自身よりも俺達の心配なんてな。ミラのような女子が汚されていいはずがない、あってはならない。だから、安心してくれ。俺たちは負けない」
そして白い髪の頭に手を置いて優しく撫でると、ミラは少しだけ俯き、尖った耳が赤く染まっていた。
「‥‥‥うん」
◊◊◊
———そして、時刻は深夜。この日は秋の涼しさから冬の白い息吹が生まれる季節に差し掛かっていた。
俺は学園寮の部屋の窓を開けて、白い息を零す。
そして明かりの灯らない部屋で感情を現さず、ただ自然に言葉を出した。
「———ファシーノ、ロゼの様子はどうだ」
そう言うと部屋のベッドに座っているファシーノは立ち上がり、外を眺める俺の背後で囁いた。
「———暴行による傷は完治できたわ。医務室で担当医が身体の隅々まで調べた結果、暴行されただけのようだけれど、心の方は簡単には治らないわね」
「‥‥‥そうか」
「———けれど、“身体”を求めて来るのは時間の問題。今回は恥をかかせて従わせただけのようだけれど、次は想像が安易だわ。本当に気持ちが悪い」
とファシーノもかなり頭に血が上っている。内容も腹ただしいが暴行だけで済んだのも運が良かったのだろう。しかし、暴行した挙句に制服を剥ぎ、下着で学園を歩かせるなど、命が100あっても足りはしない。
「———暴行だけ‥‥‥それでもロゼの心は引き裂かれる寸前だ。もし、それ以上されたならきっと心は壊れる。いくらロゼと言えど、生きる者の心は簡単に壊れる。修復するには時間しかない‥‥‥かつての俺のように」
「‥‥‥‥」
ファシーノは背後でただ黙り、俺は空に浮かぶ月を見る。そして月に向かって、彼女らの名前を囁いた。
「———デリカート。そしてヴィーナス」
2人の名前を呼ぶと、部屋に風が流れ、カーテンを揺らした。俺は外の景色から目を背け、背後の部屋へと視線を向ける。
「「———お呼びでしょうか」」
とそこには月下香のNO3とNO5のデリカートとヴィーナスが膝をついて、首を垂れていた。そしてファシーノも俺とデリカート達の間で膝を地面に付けていた。
「‥‥‥‥」
そして俺は少し驚いた。魔道具で連絡はできるのだが、まさか名前を呼んだだけで、本当に現れるなんて‥‥‥もしかして毎晩俺の近くに潜伏でもしているのか?と疑いたくなる。
デリカートは月下香隠密部隊の総隊長だし、ヴィーナスはSランク冒険者として情報を探っているしですごく忙しいはずなんだけど‥‥‥
まあ、彼女達の好きにさせよう。俺も好きにさせてもらってるし
と、そんな彼女達に俺はある命令を下す。
「———この1週間が山場だ。何かあったらすぐに報告しろ。そして最悪の場合は変装して相対しろ。決して我らが月下香だと気付かれるな」
「「「———了解」」」
と3人は口を揃えて言う‥‥‥が、しかし!
やはり聞いておこう
「なぜ2人はこんなに早くこれた?今は魔道具でいつでも連絡できるけど、まさか適当に呼んだだけで来るなんて、流石に驚いたよ」
というが2人は何を言っているのか分からないと言った様子でこう言う
「「たまたまです」」
「え、いや、たまたまなの?たまたま周辺にいたってこと?」
「「はい。たまたまです」」
「忙しくないの‥‥‥「「たまたまです」」」
どうやら彼女達はたまたまこの周辺にいたらしい
うん。絶対嘘
「ははは‥‥‥そんなわけ————」
「「———たまたまですっ」」
「‥‥‥‥」
————そして長い1週間が過ぎ、予想していた事が起こる
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