レオン君は何者ですか?
————そして、俺とファシーノが侵入者を抹殺した次の日の昼食の一時
Aクラスで最近共に行動しているロゼ、アシュリー、ガイ、レオナルドとファシーノを含めた6人でいつもの何気ない会話をしながら、口に料理を運んでいた。
俺たちが昼食を取るこの大食堂は1学年約10000人を同時に補える料理スピードと広さがあり、まるで大々的なパーティー会場を思わせる。
そして俺たちAクラスの中でも一際目立っているグループが俺たち6人な訳だが‥‥‥AクラスNO1〜NO5が共に昼食を取り、和気藹々と会話を繰り広げている光景は他クラスから常に視線を集める。
対抗戦での活躍や人気も相待って、他クラスの生徒、同クラスの男女から憧れ的な眼差しを向けられ、歩けば勝手に道ができているのだ。
そんな人気な5人の中に俺という存在がいる訳だが‥‥‥ガイとの決闘で大分人気が出て、『あいつってやっぱりすげー奴じゃん!』みたくなっていたのだが、対抗戦での薄い活躍と、大事な場面でいないことから人気が下がり傾向だ。
あのガイでさえもどんどん人気が出てきているというのに‥‥‥まあ元々がイケメンで性格も真逆に変貌し、紳士になってしまえば自然に女子の人気を掻っ攫っていく。
それに最近の試験でも魔力に関してはCクラスやDクラスと同等程度であり、そんな噂を聞き付けた他クラスからは影でヒソヒソ言われている。
Aクラスのみんなは気にする必要なないと俺の実力を認めてくれているようで、なんともありがたい事だ。
————ん、待てよ。別に俺は実力を認めてくれない方がいい筈だ。本来の目的を忘れるとこだったぞ。これ以上目立っても余計行動しづらくなるのがオチだ。
「———ねえ、あのお方あそこの席に向かっていますわ」
「ええ、久しぶりにこの大食堂で見たけれど、何が始まるのかしら」
と、そんな考えをしていると周りの同級生達が不意に騒めき出していく。
それはある1人の生徒がこちらに向かって歩いてくる。
自然に道が開き、その道を歩いてくるミドルショートの茶髪に青い瞳を宿らせる彼女は俺の席まで来ると、こういうのだった
「レオン、少しいいかしら?」
「ああ、いいぞ“カメリア”」
「そう‥‥‥レオンを借りて行くわね」
とカメリアは他の5人に視線を向けて言う。
「ええ、好きにしていいわ」
そんなカメリアに対してファシーノはただ一言だけ伝えて、トレーを持って席をたった。
そして俺とカメリアは周りの視線を無視しながら大食堂を出て、長い廊下を歩いていく。
誰もいない廊下をひたすら歩いていくとカメリアから口を開いた。
「———昨日‥‥‥‥いいえ、ここ最近この学園に度々侵入者が来るわ。対抗戦での襲撃に続き、恐らく同一の組織よ」
と、カメリアはこちらに振り返らず背中を見せながら語っていく。その声は悔しさと己の不甲斐なさを現す、低い声だった。
「———この学園の最高警備網を突破し、校舎まで侵入者が来ること自体異例。もっと言えば警備している者でも最低Aランクの軍人でその者達の目を掻い潜り、侵入している。
はっきり言って私達ではその侵入者を一瞬で、誰にも気付かれずに殺すことなんてできはしない」
淡々と語っていき、俺はただカメリアの言葉を聞く。空気が張り詰め、無言の圧が廊下に漂う
「極秘魔法部隊に所属する私達学園の生徒は限られ、3年Sクラスの先輩達は入隊を拒み、ダンテ生徒会長の下で動いている。しかし、今回侵入されたのは1学年校舎。それも私が駆けつけた時には侵入者の息はなく、首が綺麗に跳ねられた後だった。それも今回が初めてではなく、学園以外の街でそう言った不可解な出来事が起きている。月下香の残党‥‥‥あるいはバラトロとの抗争か分からない。けれど、裏で何か強大な力が動き、この学園都市を支配しようとしている」
そう言って背中を見せていたカメリアは体を180°回転させて、後ろにいる俺と視線を合わせる。その瞳は力強く、何かを求めている様に感じた。
「———レオン気を付けなさい。月下香、バラトロはもう近くまで迫ってきている。いつ負傷者、死者が出てもおかしくないわ」
「そうか、忠告どうも。カメリアはやはり昔と変わらずなんだかんだ優しいな」
「べっ!別にそんなんじゃないわよ!アザレアが悲しむようなことはしたくないだけ!」
と焦った様子で喋り、少しばかし耳が赤くなっている。大人なカメリアしか見たことがない俺にとっては衝撃的で、こちらも反応に困るほどだ。
しかし、このような一面を見せてくれると言うことは少しは信頼されてきたのだろうか
「———それに昔のようにもう誰か1人を寂しい思いにさせたくないのよ‥‥‥」
「‥‥‥ん?何か言ったか?」
「な、なんでもないわよ。それじゃあ気をつけなさいレオン」
と言って早歩きで去っていくカメリア。そして、その一角の物陰から気配を消して出てくる彼女‥‥‥
「———ふふ、面白くなっているわね。私達も彼女達と衝突するのはもう近いという事かしら?それに貴方はもう少し女性の心と扱いを学んだ方がいいわ」
「あのカメリアから気付かれず気配を殺すとは流石だなファシーノ。それに俺だって馬鹿ではない。常に心に余裕を持ち、紳士を極める」
「はぁ、そう言うことではないわ」
と何故だかファシーノに飽きられてしまった。また、そのタイミングでレベッカ先輩から連絡が通信魔法具に入る。
その内容とは‥‥‥
『放課後、私の教室に来い』
と言う何故だか怖い内容だった。
◊◊◊
そして放課後、俺はレベッカ先輩に呼ばれて2学年校舎に入っている。2学年ともなると生徒達の顔つきも魔力も1学年とは別格。常に上を目指している猛獣達の縄張りに入ったかのようだ。
そんな2学年でもSクラスの教室となれば近づくにつれて、空気が重くなる。
まるでここだけ次元が違うのでは?と思うほどに殺伐としていた。
そして廊下からガラス越しに中を除くと、廊下で殺伐としていた空気が嘘かのように輝いていた。それは2人の美しい女性が共に話しているからだった。
「———あれ〜君って1年生じゃな〜い?どうしてここにいるのかな〜」
「この教室を覗くなんていい度胸しているな君。特待生の教室は僕らでもそうやすやすと近寄らない。どうせ彼女達を見に、その儚い想いを語りに来たんだろ?君のような1年がこの聖域を見る資格はない。即刻立ち去るがいい」
ある2学年の男女2人に鬼の形相でそう詰められる。まるで虫を見るような目で、軽蔑してくるその眼差しは俺が悪者と言わんばかり。
そして男の腕が俺の胸元を掴みかかる瞬間、、、
「———おい、私の連れに何をしている」
と教室で話していたレベッカ先輩が現れ、男の腕を掴んで睨みをきかした。
そんな男はレベッカ先輩を見るなり、小動物の様に縮こまり肩を震わす。
「す、すみません。1年が勝手にこの校舎を彷徨き、このSクラスを除いていたもので注意をしようと‥‥‥まさかレベッカ様のお連れの方とは知らず‥‥‥!」
「ふふ、レベッカがこうも怒るなんて珍しいことですよ。後輩に手をあげるなんて先輩のすることではないでしょう?」
そしてヴァレンチーナ先輩も登場して、廊下が一段と人が集まり出す。
「レベッカ様とヴァレンチーナ様だ‥‥‥」
「一体どういう状況なんだ‥‥‥」
と2学年の先輩達が続々と集まり、俺たちを見ている。
そしてそんな数々の視線が集まる中、レベッカ先輩は男に向かって口を開く
「私がここへ呼んだのだ。貴様がどうこうする筋合いはない。レオンに手を出すのならこの私が相手をしよう」
「———ひっ!申し訳ありませんでした!!!!」
「ごめんなさ〜い!!!!」
レベッカ先輩が男の腕を離すと飛んでいくように2人の男女は逃げていった。そんな2人を視界に捉えながらレベッカ先輩は俺にこう伝える
「ついてこいレオン」
その一言だけを言うとヴァレンチーナ先輩と一緒に歩くレベッカ先輩。
俺は置いていかれないようにその後ろを歩いていく。
「おい、あのレベッカ様が直々に呼んだ後輩があれか?」
「確か見たことあるな。噂程度だが、魔力量が史上最低点を叩き出した生徒と」
「それに人族の三大貴族とガイ・ヴァンピールを下し、手下にしたとか」
「おいおい、意味がわからねーぜ」
と2学年の廊下では俺の噂が飛び交い、ざわめいていた。だが、そんなことは気にせずにただ後ろ着いていく。
そして、着いた所は使われていない教室。そこでレベッカ先輩とヴァレンチーナ先輩は窓の方へと行き、口を開く。
「———最近、対抗戦の後でお前達のAクラスをよく思わない者達がいる。そんな者達がお前達のAクラスの誰かに個人的に決闘を申し込み、勝利し、そして奴隷のように痛ぶっている。だが、お前達のAクラスではそんな噂は流れていないだろう?」
と衝撃的な内容を語るレベッカ先輩。この俺が全く気づかずに過ごしていたなんて信じられない‥‥‥
「上級生に勝てば序列も入れ替わり、好きにして良いなどと言いよったのだろう。そして見事罠に掛かった魚を釣り、弱みを握られたのだろうな。なんともイケすかない話だが、証拠が出てこない。そこで、レオンには情報を探って欲しい」
「なるほど。そのために俺をここに呼んだんですね」
レベッカ先輩達ではすぐに気づかれてしまう。だが、俺が探りを入れてもそうそうバレはしない。むしろ俺はカモにされる側だろう。それを見越してレベッカ先輩は俺に頼んだと言うことか‥‥‥なんだか最近、周りの俺に対する信用が厚くなっているのは気のせいだろうか?
と意気込んでいると今度はヴァレンチーナ先輩が俺の方へと視線を向けて、何故だか悲しそうに見つめてきた。その悲しそうに見つめる意味がこのあと、ヴァレンチーナ先輩の言葉で語られ、俺はどう反応し、返答するか迷う羽目になってしまった‥‥‥‥
「————レオン君。貴方は一体何者ですか?」
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