六章 冬の試練

軍会議  謎多い少年レオン



————ここは学園都市同盟軍本部のある会議室


そんな会議室では巨大なモニターが配置され、4人の人物達が映し出されていた。

また巨大なモニターに向かうように座っている1人の人物と背後に控えるもう1人の人物はモニターに映る4人にある事件を報告する。



それはこの会議が行われる数日前、、、


学園都市対抗戦の襲撃についての内容を人族軍総司令パエーゼ・プレチーゾが各国の選ばれし者セレツィオナートに報告をしていた。


そしてそのパエーゼ総司令の背後に立つ人物は人族軍軍団長のエミリア・ローマ


そんなSSランクのエミリアだが、対抗戦が襲撃されてからこの同盟軍本部へ配属された。この同盟軍本部での立ち位置はトップを選ばれし者セレツィオナートと定めていることから、副司令の立場を任される。


またSSランクはエミリアだけではなく各国から数人常駐されるので、他に2人S Sランクが同盟軍本部に常駐している。




そんなエミリアは選ばれし者セレツィオナート達の重要会議に緊張の顔を示し、体を少し硬直させていた。




そして火口を切ったのはモニターに映る天族の長ミカエルだった、、、







「———よもや月下香トゥべローザが対抗戦を襲撃し、大勢の一般市民を巻き込み、多くの負傷者を出した。世界各国の小さな町や村が襲撃されている事件は月下香トゥべローザの仕業に間違いないみたいですね。しかし、目的が未だ謎です‥‥‥どうして彼らは襲撃し命を奪っていくのでしょう。彼らは何をなそうとしているのか‥‥‥」




———モニターに映る天族長ミカエルは悩むように頬杖を付いている。


して、天族長の言うことは最もだ。なぜ、こうも攻撃的になり活発になったのか?

彼らの目的は一体なんなのか?



私達はまだまだ彼らのことを知らなすぎる




「———凡そ2年ぶりか?奴の魔法がこの世界に放たれたのは。今回のも随分と派手と聞くぞパエーゼ殿。湖底監獄の近くに直径数百mの巨大な穴が出来上がったとか」


「———ああ、その通りだストレニア女王。現在至急修復作業に当たっている。また1人月下香トゥべローザを名乗る男を捕縛し、拷問したが口の中に仕込んでいた毒物で自殺した。情報を吐かせるチャンスだったが振り出しに戻ってしまった」



そんな私の言う捕縛した男‥‥‥闘技台で可視化できる魔力ヴィズアリタを持つ男。その後奴を倒したが、自ら命を絶った。なぜ、あの男が可視化できる魔力ヴィズアリタを持っていたのか


もしかすると月下香トゥべローザは何人も可視化できる魔力ヴィズアリタを保有しているのか?


どうやってそのようなことがなされる?


自身の魔力を移植するなど成功例はない。必ず拒絶反応を示し、死に至る。


だが、彼らは成し遂げたのか‥‥‥?




虚無の統括者‥‥‥‥貴様は一体‥‥‥





「———学園都市はその名の通り世界から優秀な学生が来る。その中には大貴族、王族もいる。もし、彼らの身に危険が及べば大事だ。いずれは軍に所属するかもしれんが、今はまだ金の卵。成長過程の我らの未来の財産だ。今回の件で警備をより一層強化しなくてはならない。学園都市の教師陣はAランク以上の強者‥‥‥だが我々からもS Sランクを1人そちらに滞在させてはどうだろう?」





「———私は構わないが他の者達は賛成か?」



エルフ軍のディアナ総司令がS Sランクの1人を各国から教師兼護衛として派遣する提案を示す。私は丁度エミリアがいるので、賛成させてもらった。


だが、他の者達はどうだろうか‥‥‥あの魔族の王エルザシアは傲慢だと聞く‥‥‥


彼女の性はその豊満な体で欲を喰らい、欲に溺れさせ、堕落へと貶める。

自身の所有物は決して手放さないと噂だが、


自身の部下をそうやすやすと手放す事はしないだろう‥‥‥






「賛同する。獣族国からはイゾラートを送ろう」


「賛成です。天族国からはウリエルを派遣します」



「仕方ない。妾の娘エリザが心配だ。こちらからはシン・ヴァンピールを送る」



とストレニア女王、天族長、そして魔族の王エルザシアの全員が賛成を示してくれた



「———はは、全員賛成か。五種族が意気投合など祖先はどんな反応を示すか‥‥‥全くここ数年で歴史が随分と変わっていくな」



「———そのようだなディアナ殿。私は嬉しく思うよ」





そして、最後に天族長ミカエルがこの会議を閉める




「———それでは今後に期待しましょう。月下香トゥべローザ並びにバラトロの情報は共有し常に対策と警戒を。世界の平和のために」





「「「「平和のために」」」」





と、そこでモニターから4人の姿が消えた。残された私達はため息を吐いて静かな会議室で一休みする。














「———ふぅ〜緊張しました‥‥‥あの方々はモニター越しでも圧が伝わってきます」


「———エミリアすまんな。この本部と学園の教師は大変だろうが務めてくれ」


「———ええ、任せてくださいパエーゼ総司令。それにしても月下香トゥべローザが学園都市を襲撃ですか‥‥‥狙いはなんでしょう?」


「———それが分かれば逆算して叩けるのだが、未だにわからない」


「———2年ぶり彼の魔法を人族領から見ましたが‥‥‥あれが、天族長が仰っていた、、、」


「———ああ、”世界を破滅へと導く力”だそうだ。どうしてその力がありながら平和の為に行使できないのか‥‥‥」





———そうパエーゼ総司令は頭を悩ませている。あれほどの力がありながら、なぜ世界に刃向かうのでしょうか‥‥‥なぜ戦いの為にその身を汚すのでしょうか


一体なんのために彼らは戦っているのでしょうか。彼らにも何か譲れないものがあると言うのでしょうか?



それでも一般市民を、罪なき人々を襲うなど決して許されることではありません



「———一体彼らは何を掲げているのでしょう。何を目指しているのでしょうか」



私は自然に思った事を口走ります。そんな静かな会議室には私とパエーゼ総司令の2人だけで、静かに胸の内で悩んでいました。




そして時が経つとパエーゼ総司令は口を開いてとても冗談な事を言います。それはとても可笑しく、笑みが溢れてしまう内容で‥‥‥




「———奴の素顔を未だ誰も見たことはない。我らが見たのは男だったが、女という可能性も否定できない。2年前もとい、容姿についてだが4年前の獣族の女王ストレニアの報告によると青年‥‥‥少年のようだという。もしかしたらこの学園都市の学生に紛れ込んでいるかもしれんな」


「———ぷっふふ‥‥‥失礼パエーゼ総司令。それはないかと思います。あの魔力と魔法をただの学生が保有などあり得ないことです。学生の器ではその身が滅びてしまいます。総司令も面白い冗談を言うようになりましたね」


「———むっ!冗談ではない!あくまで可能性の話だ。それも、学生の中に面白い噂がある。学園の報告書をあらかた見たが、今年の新入生は面白い奴らばかりだぞ」



そう言ってパエーゼ総司令は私に数十枚の紙を差し出してきました。その紙をめくっていくと顔写真付きの新入生の情報が隅々まで余す事なく載っていました。




「———それは今年の新入生の現トップ集団の情報だ。無論、我ら人族の若き英雄達の情報も記載されている」



そんな重大な情報の数々。機密レベルの各学生の個人情報は全員私の目を驚愕させます。


それも1年生にしては全員が突出している‥‥‥


魔力、剣術、雑学、試験、全てにおいて驚かされる成績の数々




「———これが今年の新入生‥‥‥末恐ろしい逸材達です。精霊序列2位のイフリートを召喚したエルフの若き天才。天族長の義娘にして、元殺戮兵器と呼ばれた天族。魔族の王エルザシア・ルシフェルの娘にして次代の魔王。2年前我らの人族国を魔獣の群れから救った若き天才集団、六幻楼アルターナ‥‥‥‥」



とんでもない逸材ばかりのSクラス‥‥‥


それにあの天族の殺戮兵器がまさか学生だったと言う事実は驚愕を通り越して、無になってしまいます‥‥‥どれだけあの魔法で同族を失ったか‥‥‥


もう、昔のことですが鮮明に覚えています‥‥‥‥けれど歪み合っていてはいけませんね。現に私達の敵はそれよりも強大なのですから、




そして更に紙を捲っていくとSクラス以外にも目を奪われる逸材が何人もいます


その中には私達も名前くらいは知る学生が何人も、その才能を開花させています


これは私たちも足元を救われるかもしれません‥‥‥





「———ん?この子は‥‥‥」



と一枚一枚めくっていくと不思議な学生が現れました。

そのこの名は、、、、




「———レオン・ジャルディーノ?」




彼に目を奪われたのは名前ではなく‥‥‥‥




「魔力は史上最低点‥‥‥にも関わらず入学試験ではあの三大貴族のレオナルドを圧倒し勝利。その後の2度目の再戦でも勝利を納める。また、カイ・ヴァンピールとの決闘にして勝利し‥‥‥‥‥‥‥っ勝利?!あの7つの大罪の御子息に勝利ですか!?」



「———ああ、エミリアが驚くのも無理はない。私もその報告を受けて少々驚いた。史上最低点の魔力の持ち主が若いとは言え三大貴族に勝利し、7つの大罪に勝利。それもその決闘はたった2人で挑み、何十人も倒したと言うではないか」


「———まっまさかそんなこと‥‥‥魔力の少なさを剣術だけでカバーしたというの?!一体意味がわからないわ‥‥‥‥それにもう1人のファシーノと言う女の子。彼女は魔力測定で7777も出している。Sクラスの特待生と変わらない数値なんて‥‥‥それに‥‥‥」



私は驚き疲れて彼らの情報をゆっくりと眺めることにしました。しかし、見れば見るほど不可解な点に気づき始めます



「———マルゲリータ出身で若き英雄と同い年。両親は昔に何者かにより殺害され、以来1人で生きてきた‥‥‥‥‥‥‥‥‥これだけ?」




おかしい‥‥‥‥情報が余りにも少なすぎる‥‥‥‥




「これまでの情報が全くない?それに彼女は出生の情報もこれまでの経緯も何もないわ‥‥‥」




「———そう、その2人だけ異様に情報が少ない。まるで何者かに消されているか、情報を操作されているかのようにな。現にそのレオンという学生は我々の監視下‥‥‥極秘魔法部隊に引き込み監視している。だが、報告によれば、成長の期待できる良い部下、と評判だ。エミリア、彼ら以外にも不可解な学生がいるかもしれん。あくまで推測だが、あの月下香トゥべローザもしくはバラトロと何か関係しているかもしれない。監視を頼む」



「———ええ、そのようですね。この子達は利用されているかもしれません。しかし、利用されていなかった場合は私達の想像を遥かに超える事態かもしれませんね」



「———ああ、まだ未来ある学生を怪しみたくはないが‥‥‥‥もし、もし学生に偽造してこの学園都市に眩ませているのなら事態は深刻を極める。まあ、学生などありえない事だ、頭の片隅に私のふざけた説教だと思って置いといてくれ」



「———ふふっ分かりました。頭の片隅に置いておきます」




そして私は最後にもう一度右手に掴んだ一枚の紙を眺める







「———レオン・ジャルディーノ。一体どんな学生なのかしらね?」

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