3年Sクラス 対 2年Sクラス




—————レベッカ視点





「———さあ、いよいよ始まるなヴァレン」


「———ええ、ようやく本気で戦えますわ」


「———みなも準備はいいな?」


そう言って私はヴァレン以外の3人に視線を送った


「———ああ、いつでもいいぜ」


「———やってやるか」


「———俺たちの力を生徒会に見せてやろう」



———ふ、3人ともいい意気込みだ。私とヴァレン以外は男だが、この男達も私達に引けを取らない実力を持つ。


獣族トラ一族のロゼ


魔族のイシュタル


天族のカリオン


この3人は2年Sクラスの代表。私達2人が生徒会に入っているが、3年が抜けた時には彼らが確実に選ばれる実力。腰に据えている刀剣の剣捌きと鍛えられた肉体は並の努力では到底辿り着くことの出来ない領域。


彼らも所謂、卓越した領域の住人。


これだけのメンバーなら“あの男”の顔を引きつかせられるはず‥‥‥



そう考えていると森林中に運命の音が鳴り響いた————



—————ピィィィィイイ!!!



「行くぞ!!」



◊◊◊



———そして運命のマッチアップは突然に訪れる———




「———やはり、僕のとこへくると思ったよ。ヴァレンチーナは呼ばなくて平気かい?」


「———ああ、ヴァレンを呼ぶまででもない。私がその顔を崩してやろうダンテ生徒会長」


「———相変わらず怖いねレベッカ。もう少し僕に優しくしてもいいんじゃない?僕は君の実力を認めているのに」


「———生憎、認められても嬉しくないな。私の剣は最強なのだから‥‥‥」



そして私は目を瞑り、ダンテ生徒会長の魔力を視る

そのまま腰に据える剣に手を掛けて、地面を勢いよく踏み込んだ



—————キィィィィィィィン!!!!



「‥‥‥いきなり剣を抜いて襲い掛かるなんて随分と僕が嫌いなようだね」


「ああ!その不気味な笑顔がな!」


私の渾身の一太刀はダンテ生徒会長の銃によって防がれた。

そんなダンテ生徒会長の両手に握る二丁の銃が銀色に輝き、私は咄嗟にゼロ距離から後方へと下がる‥‥‥


するとダンテ生徒会長は不気味な笑顔を向けて私に話しかけてきた


「いい判断だよ。僕の攻撃を知っている君だからかな。けど、僕の攻撃に距離なんて無意味‥‥‥」


そういう目の前の男は2丁銃を私に向けて‥‥‥



「———光千弾———」




ドバンッ———————



その音と共に最初の一弾が私の右頬を擦り、血が滴り落ちる


「‥‥‥なっ!?」


私は驚きながら頬に手を当てて自身の血を確認した

そして拳を作り、剣を力強く握りしめる


「クソっ‥‥」



———今の‥‥‥ダンテ生徒会長の魔法は私の目では見えなかった‥‥‥


光の弾が一瞬で私の頬を掠めた‥‥‥いいや、わざとあの男ははずしたのだっ

この私を試してこの試合を楽しんでいるっ?!


全く舐めてくれたものだ。この私が貴様に遅れを取るわけがない


目で見えないのなら視界に頼らず、魔力そのものを視よう‥‥‥



「———どうしたレベッカ?もうおしまいなのかい?」



ふっ私を煽るようにふざけた笑顔を向けてくる。あの顔の化けの皮を剥がす良い機会だ。私の全力を持って倒そう‥‥‥この森林がどうなろうと知ったことではないっ‥‥‥



————解放————



森林に響く、低い声。風が木々を揺らし、葉が空を舞い、雲が太陽を隠した

そして‥‥‥‥‥



————桜月————



その刹那、舞っていた木々の葉が桜の花びらへと姿を変える。

剣は赤白く輝き、オーラを放つ



「へ〜それが桜月か。まさかこの対抗戦で解放を使うなんてそんなに僕を斬りたいのかな」


そういうダンテ生徒会長だが、少し驚いた様子で瞳を大きく開けている。

なんせこの男に解放を見せたのは初めてだからな。存分に味わうといい



「———舞う花———」



———言葉の瞬間、私はダンテ生徒会長の懐に踏み込んだ



「———っ!?」


「———はぁぁぁああ!!」



—————キィィィィイイン!!!



金属同士のぶつかる音が森林を駆け巡り、ダンテ生徒会長の庇った銃を弾かせた

片手が空へと向き、片方の脇がガラ空きになったのを見逃さず追撃を斬り込む‥‥‥


「———まだまだっ!!」


とガラ空きの脇腹を斬ったつもりが、私の剣は宙を斬っていた。

しかし、手応えはなくとも奴の衣服は私の剣によって斬られた‥‥‥!


後、ほんの僅かで届いた剣

そして奴の焦った顔は非常に私を緩い立たせた————



「凄いスピードだね。まさか制服を斬られなんて思わなかったよ」


「そうか、次はその肉を斬ってやろう!」


「ははは、今度はこっちの番だよ」


と2丁の銃を私に向けると指先のトリガーを引き、、、



「———雷皇———」



その魔法を口にした瞬間、眩い光が私の視界を奪う。それと同時に爆音が轟、聴覚を奪った。魔法は私目掛けて一直線に迫る中、剣だけは決して下さなかった


「———っ!?こんな物で倒せると思うなよダンテ生徒会長!!」


バリバリと大地を焼き尽くしながら迫る雷を視界の奪われた目で視るっ


魔力を感じ、中心を的確に判断し、剣本来の力を信じ、その魔法に斬りかかる

上段に構えた剣は赤白く輝き、桜の花弁が纏わりついた


そして私は迫りくる魔法を‥‥‥‥



————斬った



—————ドドォォォォォオオン!!! 



と“二つ”の魔法が私の背後で大きく爆発し、森林が“二つ”の焦げた道を作り出す

その瞬間、私の視界は戻っていき瞳に映り込んだのはダンテ生徒会長の引き攣った笑いだった



「———はははっまさか本当に斬るなんて。驚いたよ、君はどこまでも想像の上を行くね」



ようやくだ‥‥‥ようやくっ



————この男の顔を歪ませた



『———嬉しそうだなお嬢』


「ふん、久しぶりに声を出すと思えば皮肉か?———桜月」



今、私のこの刀から発せられた声は桜月のもの。私の愛刀であり、相棒。

こいつは気分でしか姿を現さず、いつも刀に籠っている。

なぜ、久しぶりに出てくるのか少々気になるが‥‥‥まあいい



『———お嬢も使い勝手が荒いな。まさか魔法を斬るとは‥‥‥桜月嬉しくて‥‥‥シクシクっ』



こいつっ‥‥‥絶対にそんなこと思っていないだろう。長年付き添ったから分かるが、いつもの面白くもない冗談だ。毎回毎回、冗談と機嫌を損ねる為に出てきているんじゃないのか?こいつ‥‥‥



「———もういいかい?良いものも見れたし、そろそろおしまいにしようか」


と、ダンテ生徒会長は2丁の銃を空に掲げて、そう宣言する


「もう終わりにすると‥‥‥?舐められたものだな!」


私は地を蹴ってダンテ生徒会長に迫った。しかし、目の前の男は空に掲げた銃を私に向けると、こう呟くだけだった‥‥‥



「————黒雷煌フルミナーレ・アートロ————」





————その言葉を最後に私の視界は闇に落ちていく————



◊◊◊



———一方でレベッカとダンテ生徒会長が相対した頃、ヴァレンチーナ組では3Sクラスとの戦闘が過激化していた



「はあああ!!!!」



森に響く、枯れた声


————キィィィィン!!


と鳴る金属同士が衝突し風が吹き荒れる



「———さすがはハリベリさん!お強い!」


「———ヴァレン!その第2位の座をもらいますわよ!」



————ドォォォォォン!!!



「———いいえ!例えハリベリさんでも譲りません!」


互いに衝突する2人の女性。剣を抜き、斬りかかり、幾千もの傷を森に刻む

それだけではなく2人は魔法を唱え、森を焼き、森を凍らせ、森を枯れさせ、森を消し去る


2人の死闘はまさに視るものを圧巻させた。



「「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ」」



「やはり、一筋縄ではいかないようですね?ハリベリさん」


「ええ、ヴァレン。私も先輩として後輩を指導しなくてはなりませんの」



そういうハリベリさんの表情はまだまだ余裕と伺えます

やはり、ハリベリさんはお強い!他の3人はそれぞれの方達と相対しているけど、他の3人とは1歩前を行っている‥‥‥


そしてレベッカ‥‥‥あのダンテ生徒会長にたった1人で挑んでいる‥‥‥この魔力の感じからして相当激戦を強いられているに違いないっ


私もここで遅れを取るわけには行きませんっ!



「———解放」


「あら?解放してしまうの?仕方ないわ、私も‥‥‥」


そう言ってハリベリさんは剣に口付けをして‥‥‥


「———解放」


そして私たち2人の声が森に響く



「———魑魅姫!」 「———黒淫紀!」




———そして相対する2人の女性。互いに息を殺し、視線を俯かせる


互いの刀剣を一度、鞘に収めては懐を深く隠す


そして刀剣を再び掴み、腰を低く構えた


「「———抜刀」」


2人はそう呟き、両足に力を込める


乱れぬ動作と最低限の呼吸と力


2人の魔力は一瞬の狭間で爆発的な量を放出した


森が騒めき、魔力で風が吹き荒れる


木々の葉が風に揺られ、大地に一枚の葉が落ちたその刹那————



「———淫夢の太刀———」


「———魑魅斬り———」



2人の言葉を最後に、2人の姿が森から消える


時が止まり、静寂の瞬間が訪れる


そして瞬きを許さない時の中で、2人は再び世界に姿を現す


しかし、先程とは違い、2人の立っていた場所が反転していた



「———カハァっ!」


片方の女性が地面に倒れる。そしてもう片方の女性は両足を地に付けたまま堂々と立ち、、、


「やはり、貴方はお強い“ハリベリ”さん‥‥‥」


最後に立っていた女性もその言葉を言い残し、力尽きたかのように前に倒れた



—————ピィィィィィィィィ!!!!



森中にある音が鳴り響く



それは試合終了を知らせる音だった

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