対抗戦 遂に暗躍するレオン

「———さあお次は第12試合3A対1Sクラス!今1番注目を集める1Sクラスの特待生組!そして3Aクラスには双獣と呼ばれるローズとマリー選手の活躍も期待できるぞ!一体どちらが勝利するのだぁ!!」


実況者が手に拡散具を持って会場中にその声を行き渡らせる。今1番の注目はやはり1Sクラスの特待生。魔族の姫君と、エルフの若き天才、そして人族の英雄、天族長のお気に入りと盛りだくさんの錚々たるメンバー


最悪で最強の世代とも巷で噂される彼等、特待生だが‥‥‥



「———ファシーノ」


俺は隣にいる彼女の名前を呼ぶ

そして俺の意思を察したのか直ぐに返事をしてくれた


「ええ。次は第14試合、1Sクラスとの試合だから時間以内に戻ってきてね」


「ああ、少し世界を救ってくる」


そう告げて俺はファシーノに背を向けて会場を後にした


そして俺が向かう先は屋台街の一角、路地裏街に足を運んでいた

数時間程前から何やら怪しく、不気味な魔力を感じていたので、来てみれば案の定黒いフードを被った怪しい奴らを発見した


壁の角に体を寄せて横目で様子を伺っていると物騒な話題が聞こえてくる、、、


「———手筈は整っているな?」


「———ああ、全員配置に着いたようだ」


「———フハハハ観客どもは何も知らずに滑稽な事だ」


と何かを企てている会話。そして黒いフード


う〜ん‥‥‥あれがファシーノの言っていた奴らなのだろうか?それとも新手か?


まあいい、友の折角の晴れ舞台を汚す訳にはいかない


やってやりますか————



「———おい、お前らそこで何をしている?」


「「「———っ!?誰だ貴様っ!」」」


と一斉にこちらに振り向き殺気をダダ漏れにする数人を見て俺は確信した。


やはりビンゴだ、と


さて、何を企んでいるのか知らないが数人には大人しくしてもらおう


「話は聞いた。何を企んでいるのか俺にはどうでもいいが、友の晴れ舞台を汚す奴に手加減はしないぞ」


「はっぬかせガキが!」


「それに見たところ学生じゃねーか。学生のチャンバラごっことは訳が違うぜ」


「死にたくなきゃとっとと失せな」



———ほう、なんだ帰してくれるのか?普通こう言う場面だと即刻殺すのがオチなのだが、そこまで甘いのならその言葉に乗るとしよう


「そうか。ここでは何も見なかった何も聞いていない。それじゃ」


と体を180°回転させて、きた道を戻ろうとした時————



「———ただで帰すわけねーだろぅガキぃ!!死ねェェェ!!」



‥‥‥うん。やっぱりそうくると思ったよ

なんだかんだ期待を裏切らないでいてくれてありがとう


「ハハハ、これは正当防衛だ。恨むなら己の愚かさを恨め」



———そして俺に襲ってくる数人をまとめて、その頭を胴体から斬り離した


「‥‥‥あ、れ?」


「‥‥‥は、あ?」


頭が胴体から斬り離された事も知らず、宙を舞う数個の頭。瞳がグルグルと周り、何が起きたのか理解していない様子。


しかし、数秒もすれば何が起きたのか勝手に理解してくれるだろう



—————ドスドスドスッ



と血飛沫を上げながら首から大量の血が溢れ出て、周囲の壁を赤く染め上げる

宙を舞っていた頭は地面に転がり、血の道を作り上げる



「———片付いたな。さてと、」


そしてポケットからある通信魔法具を取り出す。

耳に装着して、ある人物へと繋げた


「———こちら極秘魔法部隊所属 “特務員”レオン。標的を抹殺しました」


『———良くやったレオン。死体はこちらで回収する。何か情報は?』


「———今回の対抗戦は何者かが裏で企んでいる様子です。もしかすると犠牲者も大勢出るかもしれませんが、ご命令は?」


『———お前は普通に全うしろ。命令があるまで待て、以上だ————ブツっ』



と切られてしまった。まさか俺にこんな仕事まで寄越すとは、随分と俺は気に入られているのか?それとも警戒されているのか。まあ何あれ、単独で動けて良かった。


というか、俺が単独で行動出来る様に軍の上層部に頼んだのだがな


レベッカ先輩の部下兼単独員。暗殺も厭わない俺が先輩やアザレア達に今の俺を見てほしくはないからな


それにアザレアや先輩といえど所詮は学生。アザレア達が何人殺してきていようが、その行に何かしらのしがらみを持つ。そしてそれは次第に蓄積され、己の感情を壊していく


アザレアや先輩達は極秘魔法部隊だろうが、所詮は光ある世界の住人


裏で渦巻く闇の底をまだ知らない‥‥‥



「さて、戻るとするか」



◊◊◊



『———ミネルバ様。会場の外の方で怪しい動きを感知しました』


「———そうか、十分に警戒を怠るな。何か動きがあれば即刻始末しろ」


『———はっ』



ブツっとそこで通信は終わった。これは耳に仕込んだ通信魔法具で最新型。敵から傍受されない優れものだ。そして部下からの報告を受けた私は、会場を後にする。


人混みの中を悠々に歩き、会場の外の屋台街まで来ると、私服の部下数名を発見する。


彼女らに視線で合図を出し、路地街の建物の屋上を飛び、怪しい動きのあった現場まで直行する。


「ここか?現場の様子を‥‥‥‥」


と下の様子を伺おうとした時あろう事か先客がいた‥‥‥



「———ただで帰すわけねーだろぅガキぃ!!死ねェェェ!!」


と学生の服を身に纏う少年に、フードを被る数人が剣を抜いて差し掛かろうとする


「———く!間に合わないっ」


私は魔法で援護しようと考えたが、魔法が当たる頃には少年は殺されている


もう少し、早くきていたのなら少年の命を救えたのかもしれない‥‥‥


そう後悔していた矢先、少年ではなくフードを被る数人の首が一瞬で斬り伏せられた————



「なっ何が起きた!?」


「わっわかりません!私には見えなかったです!」



———瞬きなどしていないにも関わらず少年の剣筋、剣さばきが見えなかったっ

この私が‥‥月下香トゥべローザ幹部NO6の五絢である私がっ!少年の‥‥それも学生ごときの剣を見切れなかっただと?


「ミっミネルバ様。標的は先を超されました‥‥‥いかがいたしましょう」


そんな部下の声は今の私に入ってはこない。下で繰り出された信じられない光景を理解するのに‥‥‥


「ミネルバ様?」


「しっ静かにっ———」


と私は部下達に声を出さないよう命令する。その理由とは、少年が下で何かを取り出したように見えたから、、、そして、、、



「———こちら極秘魔法部隊所属 “特務員”レオン標的を抹殺しました」



と下では通信魔法具で誰かと会話する少年。よもや極秘魔法部隊の者だとは‥‥‥


「ごっ極秘魔法部隊?!学生である少年が何故あの隊に、、、」


「それにレオンという名前ですか。我々、月下香トゥべローザのブラックリストにいない人物ですっ」


「あの神速の太刀はまさに脅威。我々でも見切る事ができなかったっ」


「ミネルバ様。いずれあの者は我らの敵になります。今のうちに若きその芽を摘みますか?」


「いいや、まだ待て」


そう言って少年の後ろ姿を見たまま私は固まった。


あの黒髪の少年は先程、対抗戦で出場していた黒髪の少年だと気づいたからだ

ファシーノ様と同じ1Aクラスでモニター越しではただの学生範囲の強さだと思っていた


一緒に観戦していたレベッカさんが言っていた事を思い出す‥‥‥

確か、弟子と言っていた記憶がある。いつの間にか3人を相手して倒していた不思議な少年だったはず‥‥!


あの時の私は侮っていた‥‥‥たかが学生のレベルの試合とばかり思っていたが、それがまさかこんな形で覆えさせられるとはっ


ファシーノ様の近くに軍の犬が嗅ぎまわり、それも極秘魔法部隊の少年

我らですら少年の剣を見切れない異常性。不気味な力‥‥‥


こんな者が学生で少年など誰が信じようか?


先程の光景を見た我らにしか理解できないだろう‥‥‥


「———直ぐに本部へ報告をっ!少年の身元と素性を調べ、ブラックリストへ乗せない!」


「「「———はっ!ミネルバ様」」」

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