対抗戦 ダンテ生徒会長とは
「———さあ、私ももう行くか‥‥‥“ミネルンさん”また戻ってきても?」
「ええ、行ってらっしゃい。ここで観戦してますのでいつでも気軽に」
「ありがとう」
そう伝えて、私は観客席から立ち上がり、会場を後にする。目指す場は演習場。
そして第9試合に私達2年Sクラスが出場する。相手は3年Bクラス‥‥‥
まあ私達の敵ではない。私やヴァレンチーナが出場せずとも勝利を収めるだろう
だから私は今回の第9試合には出場せず、応援で演習場まで足を運ぶ事になった
私達2年Sクラスの初戦も私とヴァレンチーナは出場せず、暇を持て余し、丁度今から
挨拶に行くところでもある‥‥‥
「———“ヴァレン”早いな。もう来ていたのか?」
「———あら、レベッカさん。私は挨拶に回ろうと思いましてそれで早く来たのです」
ヴァレンことヴァレンチーナは私の友でありライバル。彼女が挨拶に来たという事はきっと私と同じ考えなのだろう。そう考えていると、私がここへ足を運んだ原因でもある彼が前方から歩いてくる。
彼が歩けば、勝手に道が開かれ、甘い声が左右から漏れ出る
そんな女性達に笑顔で手を振る“白き男”は私とヴァレンに気づき足を止める
「キャアー!!レベッカ様とヴァレンチーナ様よ〜!!」
「な、なななんて事でしょう!?学園のトップ達がこんなにも沢山!?」
「い、一体何が起ころうとしているの?!」
そんな周りの声を無視して私は彼に向けて言葉を投げる
「———久しぶりだなダンテ生徒会長。一体どこで何をしていたのか、生徒会長は大変忙しいのだろうなぁ」
「———レベッカさん挑発しても無駄よ?ダンテ生徒会長は決して怒りを見せないもの。それに先輩方も久しぶりです。生徒会が全員集まるのはいつぶりでしょうか?」
「———ハハハ2人とも変わらないね。僕も色々と忙しくてね。生徒会長にならなければ良かったと思うよ」
ダンテ生徒会長はこのように決して怒らない。常に笑顔とゆったりした口調で会話する。
彼から感じるのは強大な強さなどではなく、底が知れない未知の力‥‥‥
常に何かを考え、余裕の笑みで対応し、何事もこなす完全無欠の才
そんな彼の後ろで立つ3年‥‥‥全員が生徒会メンバーであり、私とヴァレン以外のメンバーが全員3年。最強の天才集団3年Sクラスの錚々たるメンバーを従えるこの男‥‥
不気味でしょうがない‥‥‥強い者に興味がある私が不気味と感じる目の前の男はどこか似ているのだ‥‥‥アイツと‥‥‥
レオンのように
「———それと2人に頼みがあるのだけどいいかな?」
◊◊◊
「———初めまして僕はダンテ=スタークこの学園の生徒会長を務める者だ」
「———初めまして生徒会長。私は人族の“アザレア”1年Sクラスです。そして———」
「———初めまして私“ファシーノ”と申します。1年Aクラスです」
3人はお互いに自己紹介し、握手を交わしている。一方で俺はというと‥‥‥
「何故、俺までここに‥‥‥関係無くないです?」
「ほう、レオン。私に会いたくなかったというのか?なあ?」
「いえ、そういうわけじゃなく。俺が場違いな気がしてたまらないって事です」
と小声でレベッカ先輩と会話する。ファシーノが呼ばれたのに何故か俺を見るや否や無理矢理連れてきたレベッカ先輩。一体何を考えているのか‥‥‥
「———実は君達2人を呼んだのは大した事じゃないんだ。ただ———珍しいと思ってね?なんせ君達の魔力は少しだけ似ているんだよ」
「‥‥‥それってどういう意味でしょうか?」
「そうだね‥‥‥僕は歴史とか研究とかすごく大好きでね?毎日寝るのが嫌になる程没頭するんだよ。その中で魔力についての歴史や研究も勿論しているんだけど、妙でね。決して似ている魔力など有り得ない筈なんだ。この歴史において家族、兄弟関係なく魔力はその者にのみ色や形、力を変える。決して同じや似ている魔力など存在しない。そして魔力を他の者に取り込ませるなんて互いに反発して死に繋がる。これまでの長い歴史ではそう結論付けられている‥‥‥」
————とダンテ生徒会長の話を傍で聞く俺は内心焦っていた。
この男は魔力の小さな燈すらも感知する事のできる人物であり、好奇心の塊
アザレアとファシーノの魔力の一片を感じとる事のできる強者
半年前のサバイバル授業でのアザレアの活躍と力の代償で瀕死のところをファシーノが助けた。ファシーノの体内に宿る俺の魔力を媒体としてアザレアに宿した事がきっかけ
気づかれる事のない微量の魔力だったはずが‥‥‥この男は危険だ
「———アザレアさんの活躍と功績は知っているよ。それにファシーノさんの今回の戦闘シーンやあの“魔法”も大いに興味がある。君達は強い‥‥‥それはこの学園の中だけでの話ではなくて、世界の指標で。レベッカやヴァレンチーナに次ぐ、世界に選ばれた者だ」
淡々と話を続けるダンテ生徒会長。その内容は次第に“ある魔法”について語られていく
「———凡そ2年前に突如として現れ、世界が待ち望んでいた頂きの魔法。この世界を闇に閉ざし、光を呑み込むあの魔法は僕と正反対の魔法。2年前の僕はあの魔法を見てそう感じたよ。それにとても興味があるんだ。闇魔法は存在するのに、あの魔法は闇ではなく何か別の物‥‥‥とはとね?そこから導き出されたのは闇ではなく“無”」
‥‥‥ダンテ生徒会長。こいつは侮っていた。まさかそこまで答えを近づけられる人物がこんなにも直ぐ近くにいたとはな
「———そして魔法について研究していくうちに僕は遂に成功したんだ。“対魔力領域”という兵器をね?これを起動すると数百mは魔力愚か、魔法すら使えない領域。彼の為だけに造られた唯一の兆しを。とても貴重だから今は軍が保管していて、数にも限りがある」
「そ、それが私達2人になんの関係が?」
とアザレアはダンテ生徒会長に質問をする。確かに疑問に思うだろう、それは今話さずともいずれ公になる情報。わざわざ2人を呼び出してまで言う事ではない‥‥‥
それに対魔法領域兵器か‥‥‥俺の為に造られたとか。魔法を使えない様にするとは、考えた物だ。研究者としてもダンテ生徒会長は天才の域にいるようだ。恐ろしい存在が現れた者だな
「———さっき言ったけど君達は強い。だからいつ何処で戦場になるか分からないこの世界で君達は先頭に立つ時が来る。魔法や魔力が無くても、刀剣でも圧倒できる君達の才は非常に希少なんだ。なんせこの対魔力領域は僕達も魔法が使えなくなっちゃうからね!あははは」
「そ、そうなんですね」
と、どうやら敵味方関係なく魔法が使えなくなると‥‥‥ふう。良かった‥‥‥
もし俺だけ使えないとか敵味方区別されるとかだったら‥‥‥うんアウト〜!
っていうかファシーノさん随分と黙り込んでいるけど、どうしたというのだろう
「———それじゃあ僕は行くよ。君達のどちらかと戦うのを楽しみにしているよ」
そう言って彼ら3年Sクラスはファシーノ達の横を通りすぎていく。そして俺とレベッカ先輩の横を通り過ぎる時‥‥‥
「———へぇ〜君、魔力が凄く小さいね。よく学園に入学できたね?」
その一言を告げてダンテ生徒会長は演習場の待合室を出ていく。最後の一言を聞いた俺はよーくわかってしまった。ダンテ生徒会長は興味ある者にしか眼中がないと
そしてあのファシーノが終始黙り込んでいた理由もすぐに分かった
それに‥‥‥‥
「レベッカ先輩‥‥‥怖いです」
「何を言う。私の後輩を侮辱したあの男‥‥‥やはり気に食わん。私のレオンを‥‥‥よくもっ」
どうやらレベッカ先輩は俺の為に怒ってくれているらしい。とても優しく後輩思いないい先輩だ。それに無意識に恥ずかしい事を言っているのは気づいているのだろうか?
猫耳をピンと立たせて猫目で睨むレベッカ先輩。
おもちゃを取られそうになる猫のようだ
だけど‥‥‥なんだろう
俺の肩を潰すように握るのやめてもらいませんか‥‥‥?
そろそろ音が聞こえてきそうです‥‥‥
—————ピキッ
「「あ‥‥」」
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