対抗戦 レオンの初戦

———現在時刻、10時


大勢の学生が模擬演習場へと移動を済ませ、絶賛第1試合開幕目前であった



「———レオン準備はいいか?」


「ああ、もちろんだ。それよりもAクラスの俺たちは第4試合だぞ?」


「何を言っている!今のうちに身体を温めておかないと100%の力が出せないだろう!」


「お、おう。そうだな、レオナルド」


と言った感じでレオナルドの意気込みが物凄い。というか熱い。


それに今回のトーナメント戦は全部で15試合ある。全部で25クラスがいるのでそのままあみだくじをすれば15試合になる。まあ、1クラス4回勝ち上がれば念願の優勝に辿り着ける‥‥‥


———そういえば俺たちは何処と当たるんだ?何試合目かは分かってたが、肝心のクラスまで聞いていなかったな。すぐ目前で準備体操をしているレオナルドに聞くとするか、



「で、俺たちの初戦を飾るクラスはどこだ?」


「フフフ、聞いて驚くな?」


‥‥‥なんなんだその笑顔と笑い声は。レオナルドも随分と前とは性格が変わったな。勿体ぶらずに早く教えて欲しい

こいつのペースに合わせるのは面倒なのでとりあえず睨んでおくか、


「わっ分かったよ!そんなに睨むな‥‥‥俺たちの初戦は2年Aクラスの先輩達だ!」



◊◊◊



「———さあ始まりました第1試合!!2年Dクラス対3年Bクラス!どのような戦いが繰り広げられるのか?!目が離せません!!」


「———ええ!第1試合から飛ばしていきますよ!!5v5の森林演習場での試合は果たしてどちらが先に5人全員を戦闘不能にするのか?!学年が違えど、先輩をやっつけてしまえええ!!!





————と演習場の待機室近くで解説を聞いている俺たちAクラス。俺たちの初戦は第4試合なので森林演習場の待機室で準備している


本来ならば、解説が行われている円形闘技場の会場で観戦するが、試合が近い事もありもう演習場へと足を運んでいるという訳だ


また待機室では学年、クラス関係なくこの広い空間にいる。各クラスの代表がこの待機室に集まり、頭上のモニターで現在行われている試合を見ている。


そしてこの待機室には俺のよく知る人物達もいた‥‥‥



「———レオン!覚悟しなさい!私がどれ程強くなったのか見せてあげるわ!!」


「———アザレア、貴方が本気出すとレオンが死んじゃうわよ」


「———ほんとだよ〜。2年や3年のSクラスと当たるまで魔力を温存してなきゃ〜」


「は、ははは‥‥‥俺よりも、もう充分強いだろアザレア」



1年Sクラスであり、同じ町出身のアザレア、カメリア、ベラの3人が俺を見つけて声を掛けてきた。相変わらずこの3人は昔と変わらず、カメリアとベラはアザレアに苦戦しているようだな


‥‥‥それに、彼女達に対しての視線とこの負の感情は幾分見逃せないな



「———おいおい、あいつらが噂の1年か‥‥」


「———ええ、随分と調子づいている見たいね」


「———英雄だかなんだか知らないが、ここでの立ち位置を教えてやろう」



周りの上級生、先輩方の視線と評価は頗る悪いようだ。アザレア達がここへ入学してから噂になっていたのだろう。だが、そんな先輩達を見渡せば、どいつもこいつも俺の敵ではない。他の者からしてみれば強いのだろうが、俺の敵ではないな‥‥‥騒ぐ奴ほど弱いと


「あら、レオン様ぁ〜!お久しぶりですわ!」


「レオン、やはりお前も代表か」


と今度はアザレア達と同じくSクラスのエリザとジルが駆けつけてきた


エリザは魔族帝国の姫君でジルはエルフ大国の若き天才。この2人が俺と接点を持つなど普通に考えればありえない。彼女達と俺達Aクラスやその他では実力差が有りすぎて、ずば抜けている‥‥‥と普通の者なら思う。


なのに俺はどうしてか色々な場面で接点を持ってしまい、あろう事か‥‥‥‥



「聞きましたわぁ〜レオン様も“こちら側”にこられたと。私、いつかレオン様のその腕で救われてみたいですわぁ」


「おい、腹黒ビッチ気持ち悪いぞ?レオンが“こちら側”に来るとは予想外だが、辛くなったらいつでも私を頼ってくれ?」


「ああ、そうさせてもらうよジル。エリザは逆に俺が助けられるな」



‥‥‥半笑いで言葉を返すが2人の言っている“こちら側”とは軍の極秘部隊の事だ

あろう事か‥‥‥そんな馬鹿なと思ったが、俺もここ数ヶ月前に極秘部隊に配属されてしまい‥‥‥そしてあろう事か、自分の創り出した組織月下香の情報を探り回っている


組織を裏切るような形になってしまっているが、情報は一才漏らしていない


このことを知っているのは組織ではファシーノと精霊女帝のヴァルネラただ2人のみ。他の者には一才言っていないのでもし出くわしても俺だと悟られないだろう


なんだか敵の懐に潜入しているみたいでとても胸がワクワクするが、それと同時に2人以外のデリカートやエルディート、ヴィーナスに対する罪悪感が押し寄せる



そして、今回の対抗戦ではある組織が動いているという‥‥‥


もちろん軍は最大限の警備と防御体制で会場を警戒している。しかし、万が一にも訪れれば極秘魔法部隊所属の俺達はそれの処理にまわる


俺も緊急出動に駆り出される事だろう‥‥‥なんせ今回の標的は



————月下香なのだから




「———あら、レオンに皆さん何を話していたのかしら?」


「ああ、ファシーノなんでもない。ただの宣戦布告だ」


「ええ、そうよ「もちろん」」


とそこへ俺の1番信頼する側近ファシーノが駆け寄ってきた。何を話していたのかと聞かれたので、なんでもないことを告げるとジルやエリザ、アザレア達も乗ってくれた。


それもそのはず、アザレアやエリザ、ジル達はファシーノが唯の一般人だと思っている


そんな彼女に極秘部隊の事を話す訳もなく、俺がそこに所属しているなんて事も秘密だ


皆、ファシーノに嘘をついて普通の会話に戻るが、等のファシーノは何も無かったかの様子で普通に会話に混ざっている



だが、ファシーノは全て知っている。俺のことは勿論ながら、アザレア達の事も、何もかも。それを何も知りませんと一般人を装っているファシーノはとても演技の才能に溢れている。流石は月下香を統括管理している最強の女性だ‥‥‥


末恐ろしい‥‥




————そして第1試合、第2試合、第3試合と勝者が決まり、いよいよ1年Aクラスが初戦に挑もうとしていた



◊◊◊



「———さあ!第4試合は2年Aクラス対1年A クラスの先輩後輩試合だあ!注目すべきは2年A クラスに在籍するガブリオレ選手!“氷帝”の異名を持つ彼に1年はどう立ち向かうのか?!」


と解説者が会場の空に映し出されるモニターで選手の行動を随時、中継解説している



「———おおっとここで1年のレオナルド選手が先頭にでた!森林を駆け巡り、本拠地に突っ込むというのか?!」


空のに注目すれば10枚のモニターが各選手を映し出している。それぞれの行動や戦闘がわかるように映し出され、会場の全員がその戦いに注目する


「———そして2年も動き出したぞ!迷わず一直線に1年の元へと森林を駆けていく!そしてレオナルド選手とぶつかるぞ!」


「———まさか1人で5人を相手するのか1年は〜!?他の4人は一体どこにいるのだ!?」


「———おお!剣を抜いて相対したぞ!1年レオナルド選手と2年ディカ選手のマッチアップ!そしてそして!氷帝ガブリオレ選手となんとも美しい“ファシーノ選手”が互いに出会ってしまったぁ〜!!」


「やったれAクラス!!2年をぶっ飛ばしてしまえ!」


「いけえ!!2年の力を思い知らせろ!!」


「「「ガブリオレ様ぁ〜!!頑張ってぇ〜!!」」」


「「「ファシーノ様!!我らファシーノ応援隊がついています!!」」」



周りの学生達は空のモニターに視線を釘付けで応援し、歓声をあげている。その中には女性の甘い声と男性の熱声‥‥‥それも“ファシーノ様”に対してのもの



———私、月下香序列NO6ミネルバは会場へと足を運び、主人の勇姿をこの目に焼き付けようと来たが、あの屑どもが我らの主でるファシーノ様に対しての汚らしい視線‥‥!


あの高貴で麗しく、敬愛するファシーノ様がこのような者たちに晒されるなど、怒りがみなぎってくる‥‥‥



「———どうしましたか?顔色が悪いですよ?」



そんな怒りに身を任していると、不意に横から声を掛けられる。振り返り、その声の主を見ると、どうやら私と同じ黒猫の獣族だった


「ええ、心配いらないわ。ありがとう」


「同じ”黒猫”同士一緒に観戦しませんか?丁度、ポップコーンもあるので」


「ええ、ご一緒させてもらうわ」


と私は彼女に誘われて、一緒に観戦することになってしまった。ポップコーンという屋台菓子を摘みながら、空に映し出される激しい戦闘を見て語り合う‥‥‥


「よし!そこだ!そのイケメンをやってしまえ!」


隣の彼女は戦いを見るのが好きなのかとても熱が入っている。かという私もファシーノ様の戦う姿に歓喜しながら、戦いを見守る‥‥‥


「この試合はどちらが勝つと思いますか?」


「ん?ああ、そうですね‥‥‥2年に勝って欲しいが“無理”でしょう。なんせ私の教え子があそこにいるのだから」


と彼女は黒い耳をピクピクと反応させながら、ウキウキで語っている。その話はとても自信満々で何処か誇らしげで、見ているこっちも嬉しくなってしまう



「———ええ?!それは素晴らしい事です!誰でしょうか?」


「フフン、今はまだ取り上げられていないが、私の見込んだ男です。ほら、噂をすれば今他の“3人”を同士に相手している彼です」


と彼女はいうので空を見上げると、そこに映し出されていたのは黒髪の青年。なんの変哲もなく、何処か秀でているという感じもしない至って普通の青年‥‥‥隣で自信満々に語る彼女は見込み違いなのでしょう‥‥‥何も魅力や才能が感じられない魔法と普通の剣技は見ていて普通でした‥‥‥‥



「———おおっとここでレオン選手が3人を同時に相手しているぞ!?これは2年のプライドをへし折りに来たのか!?」



———そう、誰もが彼の実力を知らない。それは今こうして見ている私も同じ


だけど、その終わりは突然やってきた




「————しょ、勝者は1年Aクラス!!2年Aクラスを打ち負かし、氷帝の異名を持つガブリオレ選手を戦闘不能に追い込んだファシーノ選手に喝采を!!」


「「「うおおおぉぉぉおお!!!!」」」


「ファシーノ様ぁ〜!!!」


「何とお美しい!!」



勝利宣言を聞いた会場は大盛り上がり。スタンディングアベーションが起き、拍手がおこる。そして見ていた私も、観客と同じく、拍手する‥‥‥


流石はファシーノ様、息乱れずして空気を吸うように敵を戦闘不能に追い込む。何と恐ろしいお方だ‥‥‥


「ふふふ、流石はレオンだ。全くいつの間に倒したのか‥‥‥」


彼女は隣で黒髪の少年を評価している。確かに、3人を相手にいつの間にか戦闘不能に追い込んでいたのかと私も驚いたが、所詮凡人。3人を相手にしようと彼らのレベルと私達のレベルでは天と地の差がある


「そういえば名前を聞いていませんでしたね。私は“レベッカ”テオドーラ魔法剣士学園に通う2年生です。差し支えなければ伺っても?」


「ええ、私は“ミネルン”。まさか学生だったなんてね。とても‥‥‥その良い身体をしてますね?」

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