裏の者達の策略‥‥
———私は‥‥‥あるお方に最高の慈悲を賜った
魔力と言う、我々全種族に欠かせない代物が存在するこの世界において、魔力を便利に扱える様にしたのが魔法‥‥‥
魔法陣、詠唱、そして付与などを、我々は様々な魔法へと転換させていった
そしていつの時代も魔法は強力な武器に成り代わり、争いが起こる
魔力量で階級が生まれ、魔法の威力、性能でその者の評価が決まる
我々種族‥‥‥人と言うものは誰よりも優位に立ち、常に1番になりたいという願望と、欲がある。全てを蹴落として、全ての頂点に立ち、全てを我が物と、考える者も自然の摂理。
必ずどの時代にも現れ、そして戦争を引き起こす‥‥‥
その中で飛び抜けた魔力量を持ち他者と格の差を知らしめる
オリジナル魔法と言う、最上級魔法をも凌ぐ最強の魔法を自ら編み出した者
それこそが
世界に5人しか存在しない5種族のトップにして軍の最高司令官
こんな化け物がこの世界のトップに君臨し、誰もが最強と呼ぶ
しかし、私は知っている‥‥‥
この世界において
———あのお方の魔法はこの世界すらも壊してしまう程に恐ろしく‥‥美しい
あの厄災の魔獣すらも一撃で消滅させてしまう魔法‥‥‥あの魔法が2年前に現れてから世界の魔法に対する考え‥‥‥常識が覆った!
至高の魔法、最高の魔法、究極の魔法
どれも派手、威力、破壊にこそ意味があるのだと。我々はそう唱え、思ってきた
だが、そんなものではなかった。あのお方の魔法は全てに当てはまらない‥‥‥
大魔法陣を用い数百人がかりで唱える派手さも、大地を消してしまう程の威力も、目の前にある物全てを壊す破壊も、あの魔法の前では無意味
あの魔法こそが5000年もの間、全種族、全人類の追い求めていた魔法であり、これから新たに始まる魔法研究の先駆けとなる。
誰もが追い求めて、意のままに欲するあの魔法を我々はこう呼んだ————
———頂の魔法———と、
◊◊◊
俺は‥‥‥いいや、私は現在、学園の廊下を悠々と歩いている
1学年校舎の廊下はとても広いので端から端まで歩き終わるのに5分以上は掛かるだろう
なんせこの1学年校舎だけで城と同じ建築でとても巨大である
凡そ10000人の1学年が在籍するのにこれくらいないと狭いと言うもの‥‥
しかし、まあ‥‥‥私が廊下を歩くと色々と目立ってしまっている
それもこれもあの“決闘”が元凶‥‥‥
「———ねぇねぇあの人ってAクラスの‥‥‥」
「———ええ‥‥‥大人数でたった2人に敗北したあの‥‥」
「———魔族の貴族様で有名な方よね‥‥‥?」
私が各クラスの廊下の前を歩けば必然とこのような会話がなされる
私を軽蔑する目と、笑い物にするような目。同じ男からはひどく恨まれ、女からは軽蔑される。これも自業自得‥‥‥これまでしてきた私の行いは罰せられる物
男女から敵意を剥き出しにされ、恨まれる。これが魔族として‥‥‥七つの大罪
シン=ヴァンピールの息子、
———ガイ=ヴァンピールの成れの果て
私はあの決闘の日以来、停学処分をくらい実家に戻された。帰るなり、実の両親から一族の恥だと言われ、使用人ですら口を聞いてはもらえなかった‥‥これまでしてきた事に対して目を瞑っていた使用人達も学園での決闘の噂を聞いては、私を馬鹿にするように影で笑う
以前の私だったら怒りで全員殺すか犯すかだが、今は違う
あのお方の慈悲をもらって私は変わった‥‥‥生まれ変わった‥‥‥!
この世界に、上には上がいるのだとっ‥‥!
決して抗ってはいけない存在がいるのだとっ!
私はあの日以来知ってしまった‥‥‥これが罰なのか‥‥‥幸福の運命なのか‥‥‥それはどちらも‥‥‥あること
———私は‥‥‥ただ、あの人を見つけたい‥‥‥
もう一度見つけて、この変わった私を見てほしい‥‥
そしてもう一度だけ‥‥‥チャンスを欲しい
この組織に強制的に入った形になったが、それでいい‥‥‥この組織ならば彼女を見つけられる気がする‥‥‥未だ行方不明の彼女を‥‥‥
吸血鬼一族、天才と呼ばれ世界でも数人のSランク冒険者“ヴィオラ”さんに私は会いたい
そして
もう一度‥‥‥
告白する‥‥‥
たった1人の女性を物にできなかった過去の忌々しい自分はもういない‥‥‥
今はこの“月下香”に身を置き、命を繋ぎ止めている‥‥私は諦めない‥‥‥
———とガイ=ヴァンピールの探し求めている相手はどこにいるのか‥‥‥
———それはガイのすぐ側にいるのかもしれない‥‥
◊◊◊
「———ねえ、聞いた?また町が燃やされたらしいわよ」
「———ええ!また‥‥‥なんて酷い事を‥‥‥」
「———世界中で町が燃やされて、そこに住む人々を虐殺している‥‥‥一体何の為に」
———このような会話が至る所から聞こえてくる
廊下を歩けば、町、燃やされた、殺された、などの言葉が連なる
みんなが危機感を覚え、世界の情勢に耳を傾けていく
そして必ず口ずさむのがある組織の名前‥‥‥‥
「———また“月下香”の仕業という噂だとよ‥‥‥俺の親父は軍の幹部なんだけどよ、その内容を聞くともうそれは酷い惨状らしいぜ」
「———俺の親父も言ってた‥‥‥生き証人からは黒いローブを羽織る集団に襲われたとか‥‥‥」
「———俺の従兄弟が‥‥‥この前被害に遭ったんだ‥‥‥もう生きて帰らぬ人になっちまった‥‥‥許せねえっ。俺たちが何をしたと言うんだよっ!?」
巷で噂になっているこの事件‥‥‥どうやら月下香が犯人という事らしい‥‥‥
一体どうなっているのか俺にはさっぱりわからないのだが‥‥‥
「———何?“私”じゃないわよ」
隣を歩くファシーノに目を向けるが、彼女じゃないらしい‥‥‥
と言うか、なぜ俺たち“
俺の知らないとこでどうなっているんだ??
「なあ?ファシーノ、俺の知らないとこでどうなってるんだ?」
俺は小声でファシーノに話す。誰かに内容を聞かれたらまずいからな‥‥‥
「そうね‥‥‥私の部下からの報告だと
「
俺は強ばった表情でファシーノに問いかけた。するとファシーノは『は?』みたいな顔をしてゴミを見るような目で見つめてきた‥‥‥
「———そう、分からないならいいわ。私がどれだけこの組織で権力と信頼を握っているのか知っているわよね?」
とても怖い‥‥マジの目だ‥‥‥俺から組織を乗っ取ろうとしている‥‥‥
あれ、そもそも俺ってこの組織の統括してないよな‥‥‥全部ファシーノに投げているせいで、組織内で俺の素顔を知っている人って何人くらいいるんだろう?
総会議には出席しているけど、そういえば‥‥‥仮面を着けて出席していたっけ‥‥‥2年前の総会議でも仮面だし、てかみんな組織の本部でも仮面つけているからわからねーし!
本当に俺の“素顔”を知る人物ってこの組織に‥‥‥いる?
『———あら?黙り込んで可愛いわねぇ〜気づいたかしら?貴方の素顔を知る人物なんてこの組織ではほんの一握りよ?誰もおもわないわよね。虚無の統括者が、18歳で、学生で、世界から追われているなんてね〜?』
俺も心をグサグサ抉るファシーノさん‥‥‥もうそれくらいにしといてくれよ‥‥‥
しかも、声ではなくて誰にも聞こえない念話で言うのも‥‥‥
「———まあ、そんなことしないわよ。けれど、こっちは大変なのだから覚えておいて欲しいわ」
「———すみません‥‥‥自分でも調べてみます‥‥‥」
「よろしい‥‥‥それでこそ私の主様‥‥っ」
と俺の腕に絡みついてくるファシーノ。周りからの視線がとても痛いが、彼女は気にしないらしい‥‥‥背後から「———この女狐〜!!」と言う聞き覚えのある声が聞こえてくるのはきっと気のせいだろう‥‥‥
ドタドタという足音も気のせいだろう‥‥‥
この後の更なら視線が怖くてたまらない‥‥‥
あ、というか対抗戦まであと一週間くらいじゃね??
◊◊◊
————廊下を歩いていく2人の男女(一方は超絶美人)の影で、動く者達がいた
それは学生の笑顔を見るや否や、歯を噛み締め強く睨む‥‥‥
平和という名を酷く嫌う者達。ある講堂の一角でその思想を胸に刻む者達の存在をレオンはまだ知らない‥‥
「———バラトロでも月下香でも無嶺の彩色でもない。この世界を裏で牛耳っていたのは我々、“マフィラス”だ。虚無の統括者など我々の敵ではないっ———」
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