新学期
———居心地の良い椅子、高級な机、装飾がなされた大講堂、そして木の匂い
太陽が窓から差し込み、大講堂を明るく包み込む。鳥の囀りと、季節の変わり目を一層感じる音色
「———おはようございますみなさん!」
教壇で元気よく俺達学生に向かって挨拶をするウルティア先生
「「「おはようございます先生!!」」」
そしてそれよりも大きな声で挨拶をする俺達学生
なぜ、俺達は学園にいるのかというと———
「———は〜い!夏季休暇はみなさん楽しみましたか〜?先生は世界中を旅行しました〜!」
そう、凡そ1ヶ月の夏季休暇が終わり、皆は地元から学園都市まで戻ってきたのだ
俺が所属するAクラスの面々は実に面白く風変わりしている。魔力量と実力でクラスが分かれている学園だが、やはりいくら実力や他者を圧倒する魔力を持っているとこで所詮は学生。
クラス中で夏季休暇の話で大いに盛り上がっている。ほんと羨ましい限りだ‥‥
そう思い、隣に座るファシーノを横目でみると———
「皆楽しそうね‥‥‥裏の世界は今大変だと言うのに呑気な者だわ」
はい。非常に疲れている様子です。あのファシーノがここまで気疲れするなんて久しぶりに見たな
「———は〜い!みなさん!夏季休暇の話は休み時間にしてくださいねぇ〜!それよりも今日から新学期と言うことで、これから非常に忙しくなりますよ〜!」
そんなウルティア先生は、その美貌も兼ね備えながら教壇で淡々と話し始めた。
「新学期で最も重要なイベントは皆も楽しみにしているうう!————」
「「「————ゴクッ」」」
Aクラスが固唾をもって待ち侘びるその先の言葉———
「———学園都市対抗戦よ〜!」
そして待ってましたと言わんばかりの歓声が挙がる
「「「うおおおおぉぉぉ!!!!」」」
物凄い歓喜と熱だ。どれ程楽しみにしていたんだ?このクラスは‥‥
「学園都市対抗戦はトーナメント戦!全員が出場の資格を持ち、各クラスの代表5名が各試合に出場できます!1年も2年も3年も関係ありません!Aクラスだろうと、Dクラスだろうと侮るなかれ!この対抗戦の会場は全長2キロの森林で行われます!ありとあらゆるアレンジやチームワーク、地形を生かした戦闘、戦略で足元を掬われるのが面白いのです!
なので、1年が2年、3年を相手に何処まで戦えるか楽しみです!勿論、勝ってしまっても問題ないですよ?」
———ほう‥‥それはなかなか面白そうなイベントだ
学年でも戦えて、クラスでも戦えると?
全員に活躍の場を設けると言うことなのか?
まあもし、Sクラスなんかと当たったら運が悪かったとなるのかな
そう考えていると後ろの席に座るレオナルドが身を乗り出してきて、俺の耳に小声でこんな事を言う
「——レオン、お前は勿論Aクラスの代表だからな?わかってるよな?」
どうやら俺を代表にしたいというレオナルドの意見。しかし、別に俺が代表になる必要はそこまでないと思うのだが‥‥
「俺がか?別に出る必要ないだろう?皆相当の実力があるんだし。俺は見学の方が楽だ」
「何を言っている?!これは各国の王族貴族、そして軍までもが注目する最重要な大会だ!ここで良いとこ見せて出世コース間違いなしだろう?!」
と俺胸ぐらを掴んでグラグラと揺らすレオナルド。何をそこまで必死なのかと思えば、こいつは貴族様だったな。すまないレオナルド忘れていたよ
「———代表か〜!私も出られるかな?!」
「———何を言ってるの?私達にはあの人がいるじゃない!?」
どうやら前の席の女子達がこちらを振り向いてチラチラと見つめて来ている
女子達からの熱い視線と男子からの憎悪の視線。とんでもなく面倒臭いな‥‥
俺は女子達、そして男子達に聞こえる声量で話し始めた。
「いいか?これは5人を代表で出すだけであって、毎回固定のメンバーではないぞ?各試合でクラスからテキトーに5人を選出すれば全員出場できるからな?俺は固定よりも全員出場する方に一票を入れる」
「「「レ、レオン様ぁ‥‥!」」」
「私達を想って下さるのですね?!」
「私達の為に何とお優しい‥‥!」
「‥‥‥‥」
一層男子からの視線がキツくなったような気がする。こんなはずではなかったのだが、男子諸君の為を想っての発言が空回りしてしまった
そしてあろう事か横からの殺気が1番怖い
「あらあら、男子を敵に回して随分と女子に好かれているのね?」
「‥‥‥これは弁明したい」
ファシーノの言葉一つ一つが鋭い刃のごとく突き刺さる
しかし、俺にも一人や二人味方がいるに決まっている‥‥‥
「ちっファシーノ様とイチャイチャしやがって‥‥!」
「レオンアイツだけは許せねぇ!」
「ファシーノ様は俺たちがお守りする!」
‥‥‥‥なるほど。俺に同性の味方はいないようだ。このクラスにはな!
クソ‥‥‥なんでいつもこうなるんだ
「レオン‥‥‥お前が悪い」
レオナルドですら俺を敵にするつもりなのか?!なんだその澄まされた瞳は?!
「————はいは〜い!お喋りはそこまで!」
とそこでウルティア先生がクラスを静めてくれて助かった。少し雰囲気が変わった先生は教壇で腕を組み、その大きな胸が乗っかる。
「———もう一つ皆さんにとってとても良い知らせがあります!」
と言って出口の方へ手を翳し、何かを合図する。
ガラガラと扉の開く音と共に入ってきたある学生を見て一同が驚いた
「———停学処分だったガイ=ヴァンピール君が戻って来ました〜!みなさん仲良くしましょうね!」
「「「———できるか!!!」」」
と食い気味の鋭いツッコミがクラス中から発せられたのだった
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