幕間 帰省したアザレア
※アザレア視点
「ただいまあ〜!パパ!ママ!」
と、私は勢いよく扉を開けて、両親の元へと駆け寄る。
「あらっお帰りなさい!アザレア」
「おお、帰ってきたか!」
懐かしい二人の声‥‥私はそんな両親と抱き合う。久しぶりの母の温もりと力強い父の腕の中はやっぱり安心する。
数秒程経った頃に、私は両親から離れてカバンの中からお土産を大量に渡した。
「はい!これお土産!学園都市で有名なパンテーラ=ネーラ商会(パンテラ)のケーキを買ってきたわ!」
「あら〜!これってすっごく有名なケーキじゃない!?予約殺到の超人気店の!ありがとうアザレア!」
「えへへ〜喜んでもらってよかった!」
ママのこんな嬉しそうな顔を久しぶりに見れて良かったわ!
予約限定だと知らなくてケーキを買いに行ったら、大行列で買えないと思っていたのに、なぜか知らないけれど最前列まで案内されたのよね‥‥一体どうしたなのかしら?
「それよりアザレア。他のみんなも一緒に帰ってきたんだろう?」
「うん!みんな一緒に帰ってきたよ‥‥」
「そうかそうか!ワルドスやカメリア達も帰ってきたか!」
嬉しそうに話すパパを横目に私は精一杯の笑顔を向ける。パパの言うみんなにレオンは入っていない‥‥そんな感じがした‥‥
「私みんなのところに行ってくるね。今日の夜はみんなでB B Qでしょ?」
「おう!当たり前だ!毎年恒例だからな!遅れるなよ?」
「うん‥‥」
微笑を浮かべて私は両親に背を向ける。扉に手を翳してソッと外へと歩みを進めた。行き先はみんなの所ではなく、町の墓地。パパとママには嘘を付いたけど、大切な用事を済ませる為に‥‥
「懐かしい道‥‥」
町の墓地へと歩いていくとレオンの家が見えてくる。けど、両親の家にいく前に私は確認していた。レオンは帰ってきていない‥‥
それに鍵もかかっていなかった‥‥5年前と同じで
綺麗なままの家。誰も人が住んでいないと言うのにレオンの家は綺麗で‥‥5年前から時が止まっているかのよう
そんなレオンの家を通り過ぎて、見えてきたのは眺めの良い丘に作られた小さな墓地。その端っこにポツンとあるさらに小さな墓地に私は歩く。
そこら辺にあるような少し大きな石がそのお墓。土が少し盛られただけの小さく質素なお墓‥‥このお墓こそがレオンの両親のお墓‥‥
私は毎年一回、この時期になると必ずここへ訪れる。レオンの両親のお墓にお花を添える為に‥‥しかし、今回はいつもと違う‥‥
「——お花‥‥一体誰が?」
毎年、お花を添えているのに今回は初めての出来事‥‥このお墓は町の手助けを断ってレオンが一人で作ったお墓‥‥誰もお花なんて添えた所見た事ないのに‥‥
そんなことを考えていると不意に背中から‥‥
「——誰なのかしらね‥‥」
「——!?ママ!どうしてここに?!」
「あら?ママがここへ来ちゃいけない?」
突然背後から話しかけられて思わず、臨戦態勢をとってしまった‥‥まさかママが
私を着けていたなんて全く気づかなかったわ!
「ふふ‥‥そんな驚いて、私はママよ?貴方の事なんて全てお見通しよ」
「な、な、何が!?お見通しって!?私はただ、レオンの両親にお花を添えに来ただけよ!別にレオンの為とかそう言うのじゃないんだから!」
「あらあら、そんなに慌ててどうしたのアザレア?別に私はレオン君の事なんて言っていないわよ?」
「——っ!?もう〜〜〜!!ママのバカバカバカ!!私を嵌めるなんて!」
私がママに対して怒っていても、ママは頬に手をあてて悪戯っぽく微笑んでくる。全てお見通しよと言うその表情!ほんと、嫌な性格をしてるわ!ママ!
「昔からレオン君の事気にかけていたわよねぇ〜‥‥パパは気付いていないけど私はとっくに気づいていたわよ?レオン君の事今でも好きなんでしょ?」
ママの勘は的中している‥‥さすがはママ‥‥全てお見通しってわけね‥‥
もう、降参よ‥‥
——コクッ
と私は頷いて顔を俯かせる
「——そうね‥‥アザレアがこの時期に花を添えるのは知っていたけど、それよりも少し前に花は添えられているのよ毎年。一体誰が添えているのかしらねぇ‥‥あ!それとレオン君には再会できたのかしらアザレア」
そうだったんだ‥‥私よりも少し前にお花は添えられているんだ‥‥
きっとレオンに違いないわ‥‥何よ‥‥帰ってきたのなら連絡ぐらいしなさいよね‥‥
「レオンと学園で再会できたよ‥‥けど、隣には女がいた!旅の途中で一緒に行動しているとか言うけどあの、女狐!レオンを誑かして!許せない!私の方がレオンを知っているのに!」
ハハハハハハッ可笑しいわねアザレアっ!ママ貴方を応援するわよっ‥‥それにしてもレオン君もやるわねぇ」
「ママ!笑ってる場合じゃないわよ!」
ああ、もう!なんでこうなるのよ——!!!
◊◊◊
そして時刻は夜の9時‥‥マルゲリータの町では毎年恒例のお祭りで賑わっていた
屋台や踊り、ゲームなどさまざまなイベントがあるお祭りは世界各国に散らばっているマルゲリータ町出身者はみんな帰省し、必ずと言って良いほど集まる。
大勢の人で賑わう中、私達というと‥‥
「ねえ!学園楽しい!?」
「この国の英雄なんでしょ!!今度魔法とか見せてよ!」
「この町から国の英雄が誕生するなんて俺らの誇りだ!」
そう‥‥色々と囲まれている状況にある‥‥子供は目をキラキラさせて質問攻めをしてくるし、私達と同じくらいの子達は魔法を見せてとか、サインをちょうだいとか‥‥
凄く嬉しいのだけれど、みんな一斉に来て全然聞き取れないわよ!!
「は〜い!並んだ並んだ!質問したい人は一列に並ぶんだぞ〜」
とワルドスが気を利かせてくれてこ、れでようやくまとまりがついたわ!
あとはこの列を何時間で消せるかの勝負よ!
——そして1時間後‥‥ようやく列が全て消えた‥‥
横を見ると5人ともぐったりとして机に俯せている。
「よく頑張ったな俺ら‥‥人気者も大変と言うことか‥‥」
ワルドスの声が今にも消えかかりそうな声量で心配になる‥‥
また列を成していたみんなは火が燃え盛る所へと集まり、楽器の音色とともに踊り出している。
そんな幸せそうなみんなを眺めながら、私たちは物思いに耽っていた。
そんなとき隣に座るワルドスは火を囲んで踊る人達を見て不意に呟いた。
「俺達はこれを守る為に戦っているんだな‥‥」
そう呟くワルドスの横顔を見て、思わずカッコいいと思ってしまった‥‥
炎の輝きが金髪を淡く照らして、瞳は真っ直ぐでいて、前を向いている‥‥
「アザレア‥‥君は何の為に強くなろうとした?」
「え‥‥?」
ボーとしているとワルドスは私の瞳に向かって問いかけて来た
余りにも急だった為、少し驚いて変な声を出してしまった‥‥
「俺はみんなを守る為に強くなると決めた‥‥平和な世界を、戦争のない世界をと願っている。だから俺はいずれこの国の‥‥
「
考えた事ないと言えば嘘になる‥‥けどワルドスのように戦争のない世界とかのスケールで見た事はない‥‥ただ、私が強くなるために願ったのは‥‥
「そうか‥‥じゃあ君の目標は何なんだアザレア」
そう‥‥私が唯一願ったのは‥‥
——あの人の笑顔
「私の願いは昔も今もそしてこれからも変わることはないわ‥‥」
今でも覚えている‥‥10年前に見たあの人の横顔を
絶望で歪みきった横顔‥‥涙で濡れる地面‥‥拳から滲み出る赤い血
引き裂かれたボロボロの衣服‥‥
そして誰にも助けを求めず‥‥小さな背中に全てを抱える姿‥‥
そんな彼をもう二度と見たくない‥‥
「私の願いは凄く小さいけれど‥‥想いは誰にも負けない。この世界から悪を根絶やしにして、大切な人を奪われない世界を作る」
「アザレアらしいな‥‥この世界から悪を消すか‥‥」
全ての元凶は‥‥彼に深い悲しみを刻んだ元凶は‥‥悪
絶対に許さない‥‥どんな奴だろうと‥‥私は悪を許さない
たとえ友達だろうと私は悪に染まる者を許すことはない‥‥
悪を名乗る以上‥‥そこに正義があろうと許さない
——先日の任務でも‥‥標的のゼフには同情すらする‥‥けれど大勢の兵士を死なせた事に変わりはない‥‥
ゼフの自爆の後、意識が朦朧とする中、聞こえてきた会話。
それは天族長の悲しむ声だった‥‥
ぼやける視界で声の方へと体を捻ると、そこにはゼフの首が地面に転がっていた。
そして首のないボロボロに傷ついた体を抱きしめる天族長と隣に佇む黒い影‥‥
天族長はその黒い影を睨み「よくもっ‥‥」と怒りの声を向けていた。
右手の手刀から血がモタモタと垂れ、この者が止めを刺したのだと理解できた‥‥
そして天族長の怒りも理解できた‥‥
もし‥‥私が天族長の立場だったら‥‥殺しはしない‥‥
師を‥‥弟子として‥‥最後まで生きていてほしいと願う‥‥
それがどんな形でも‥‥生きていてほしい‥‥監獄に入れようと‥‥しっかりと償ってほしい‥‥そう願うはず‥‥同じ女性なら‥‥
けれど‥‥黒い影は首と胴体を斬り離した‥‥
なぜ‥‥部外者である黒い影は‥‥
見覚えのある黒い影‥‥
私の前に現れる不思議な黒い影‥‥
——
ゼフはもう死んでると同じ‥‥
貴方達は何を目的に動いているの‥‥
貴方達のやってきた事は最終的に人助けにつながっている‥‥けれど、その裏で人々を苦しめているなら‥‥悪を名乗っている以上‥‥私は許さない‥‥
例え気まぐれで助けてくれたとしても、大勢を苦しめているのならそれは悪
私の殲滅対象に入る‥‥!
——
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