五章 学園都市対抗戦
偽りと貶める者
「——酷い‥‥なんてことだ‥‥」
——炎が夜空を埋め尽くし、目の前に広がるのは焼けた大地と、焼けた町、焼けた動物‥‥そして炎を纏い焼け焦げた人々の姿だった‥‥
俺はある任務であるお方にこの部隊の指揮を任された。遂にっ!俺の実力があの方々に認められた!この組織に救われて忠誠を誓い、毎日あの方々の為に努力した‥‥見向きもされない雑魚の中の雑魚だったが俺は這いつくばった‥‥長かった‥‥認められるまで、振り向いてもらえるまでが‥‥
俺が忠誠を誓う組織“月下香”は化け物の巣窟‥‥大幹部である五華の方々は神に等しい美しさと、世界の頂点に君臨する強さがある。誰もが憧れ惚れる対象‥‥我々下位者の圧倒的カリスマ‥‥手が届く事のできない神の領域。
そんな大幹部の直属の部下である五絢‥‥あの方々も化け物の強さを持っている‥‥我々は神の側近、神に一番手の届く距離にいる、といつも言っていた。せめて、せめて、五絢の方々の直属の部下になりたいと誰もが願っていた‥‥
あわよくばと誰もが思っていた‥‥しかし、現実は甘くはない。
戦闘の天才、戦略の天才、魔法の天才、剣の天才など世界でも戦える数え切れない程の猛者達が渦巻くこの月下香‥‥総人数は凡そ5000人と一国の軍20万人と比べれば少ないながらも、その実力は一国の軍に勝ると我々は確信している。
そんな月下香で最上位者の部下になり、活躍を見てもらいたいと皆が言う。
世界一般で天才と呼ばれている部類の猛者共が渦巻く中、俺も必死に足掻いた。
だが、足掻けば足掻くほどに壁が存在する‥‥誰もがその壁を壊そうとしてきたが、壊せる者は僅かの数人‥‥天才の中の天才だけ。努力ではどうしようもない壁が聳え立ち、絶望する。
天才の中の天才がようやくして壊した壁にもまた更なる厚い壁が立ちはだかる。
だが、その前で敗れた者達には決して想像が付かないだろう‥‥
足掻いて、足掻いた頂の先はまだ階段の一歩なのだとそこで知った‥‥
月下香の上位者100位〜11位は実力が髪の毛の薄さ程しかない‥‥そしてここが人類の種族としての頂であり、限界の領域なのだと初めて知る。これは下位者には決して理解することはできない‥‥11位と10位の実力差は厚さ1mの丸太と匹敵する‥‥世界が次元が違うのだ‥‥五絢の方々とは‥‥そしてまた、我々では想像がつかない事だろう‥‥
五絢と大幹部五華との果てしない実力差を我々は想像すらできんのだ‥‥
我々では決して手の届く事のない五絢の座でも、決して手の届く事のできない神の領域‥‥
——五華——
俺は遠くからそのお姿を眺める事しかできない‥‥だが、神はチャンスをくれた
五絢の方々に俺の実力が認められ、この任務を任せられた。
ここで結果を出して直属の部下にしてもらえないかと‥‥そう思っていた矢先‥‥手遅れだった。
「——隊長!報告いたします!」
と残像のように速く来た部下が俺の目の前で報告する。
「町一体は全て燃やされ、生き残りはいませんでした‥‥敵の姿ももう確認されず、一歩遅かったようです‥‥」
「なっなんだと!?‥‥クソッ!!これは大きな失態だっ‥‥」
———そうだ‥‥この失態を知ればあの方々をがっかりさせてしまう‥‥折角手に入れた地位と認められた実力がなくなってしまう‥‥どうすれば良いのだ‥‥
「‥‥隊長ご命令をっ」
部下は俺の命令を待っている‥‥だが少しだけ思考させてくれ‥‥
なぜこのような実態になってしまったのか‥‥
俺は任務で潜入部隊から情報を貰い、奴らを着けていた‥‥しかし、奴らは追手に気付き
戦闘を仕掛けてきた‥‥この我々に勝てるわけがないと思ったが、案の定勝負は一瞬だった‥‥だが、これが罠だった‥‥
通信魔法具で連絡をもらった頃には時既に遅し‥‥
俺はミスを犯した‥‥
「——隊長っ!ご命令を!」
「ああ‥‥撤退するっ‥‥!」
俺は奥歯を噛み締めながら己の不甲斐なさを悔いた。そしてこの失態の責任は俺の慢心が招いた‥‥あの方々になんと言われようと‥‥俺は包み隠さず報告する‥‥っ
——
◊◊◊
———薄暗い部屋の円卓を囲んで座る男女。汚れひとつない軍服を纏い、胸には数々の勲章を飾るトップ層。さまざまな種族が円卓を囲む光景は過去何百年として成し遂げられなかった事。そんな彼らは何百年と争い続け、互いに血を流してきた。しかし、何故互いにいまとなって協力し結託したのか‥‥
それは———共通の敵がいたから———
「——それで‥‥生き残りは居たのか?」
「——ええ、一人だけね。それに気絶する前にこんな言葉を言っていたらしいわ‥‥黒い仮面と黒い服を身に纏った者達、と」
「——黒い仮面‥‥黒い服‥‥そうか‥‥また奴らの仕業か」
「——これで何件目だ?世界中で起きているな」
「——奴らのやる事は極めて悪質極まりない‥‥一体何を企んでいるのだ」
「——それが分かれば苦労しないわ。何たって謎が多すぎる組織だもの」
「——それで今後の展開はどうする?我らはただ黙って国民が殺されるのを待つのか?」
「——何が狙いか分からない以上対応は難しいです。しかし、死者を多く出すのが目的であれば、最も多くの死者を出すイベントがありますね」
「——‥‥学園都市の対抗戦か‥‥大勢の観客と多くの金が動くイベントだな」
「——万が一に備えて警戒しておいた方がよろしいかと」
「「「——賛成だ——です」」」
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