生の輝き

「フ‥‥御武運を、か‥‥」


———レオンの奴、いつから私を心配するようになったのだ。後輩に心配されては先輩としての面子が台無しじゃないか‥‥


「——これはレベッカさん。やはり貴方も残るのですね」


「‥‥ヴァレンか」


レオンが立ち去った後、私の右隣で話すヴァレンチーナことヴァレンが肩を並べる。同じ二年生であり、Sクラスの友、また生徒会のNO2とNO5。


ヴァレンの実力は折り紙付‥‥この私も認めている。王族の姫だからと侮った者達を薙ぎ倒していく大胆さに加え、王族令嬢から現れる戦闘の繊細さは誰よりも目を引くものが有るのだ。


同じ年代でヴァレン以外に強く逞しい者を私は知らない。

そしてこの先も現れないだろう‥‥


そんな天才と呼ばれるまでに至ったヴァレンは私と同じく、可愛い部下達を先に避難させていた。


「随分と聞き分けのいい部下だなヴァレン。羨ましい限りだ」


「何を仰っていますか。“レオンくんくらいの後輩がちょうど良いです」


「いいや、そうとも言えない。あいつと行動するとこちらが疲れてしまう‥‥」


「フフ‥‥随分と楽しそうですね。レベッカさんのその表情を見るのは久しぶりです」


——っ!私はそんな表情をしていたのか‥‥?ああ、本当に面倒臭い‥‥あいつの事となるとついつい感情的になってしまうな‥‥って、私の事より今は目の前の標的に集中しなくてはっ———



「———ハハハ‥‥5分だ‥‥!5分でこの城諸共吹き飛ばすっ!それまでそこで見ているがいい王ミカエルゥ!」


「まさか‥‥“自爆をお考えるになるとは。先生‥‥‥」


‥‥王ミカエルの悲しい表情と憐れみの言葉‥‥

嘗ての師をその手で葬らなければならない残酷な世。私がもし‥‥もし逆の立場でも同じ事ができるだろうか‥‥?国を守るか‥‥嘗ての師だった反逆者を守るか‥‥胸の奥の心が引き裂かれる思いを味わうに違いない‥‥


「——ミカエルよ貴様の正義は何だ‥‥?悪に平伏す正義か‥‥?」


私が彼ら二人に注目していると、莫大な魔力をその体内に蓄積し続けるゼフは王ミカエルに正義をとは何かを語る。

その言葉に‥‥ゼフのどれ程の思いが込められているのか‥‥?


ゼフの瞳を”視ていてもその真意に辿り着く事は今の私にはできない‥‥


嘗ての英雄が悪に魂を売る引き金となった事件‥‥それは決して許される行為ではない。誰がなんと言おうと‥‥世界の王に対して‥‥決して許される事ではないのだ‥‥っ


それを‥‥


「——犠牲のない正義などっ!脆いっ!‥‥綺麗事では何も守る事はできないのです!先生っ!」



◊◊◊



「——ハァ‥‥ハァ‥‥まるで嵐の中心だな」


王城の方角に振り返ると、そこは嵐の中心。莫大な魔力が一箇所に集まり渦を成している。


「空中都市の民も非難をしているようだが‥‥果たして間に合うのか」


ゼフのあの様子では盛ってあと数分で自爆する。それもこの空中都市を巻き込んでの大爆発‥‥


「いた!レオンっ!あんた何やってるのよ!?」


と王城の方角から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。恐る恐る振り返ると人数にして6人の人影がこちらに走ってくる。


そう彼女らは‥‥


「アザレアか‥‥ヴァレンチーナ先輩に命令でもされたのか?」


俺の幼馴染の金髪美少女のアザレアだ。その背後にカメリア、ベラ、ワルドス、コキン、テルの町の同級生達勢揃いして息を切らしている。


「レオン、もう時間はないわ!貴方だけでもここから直ぐに避難して!私たちは先輩の元へ戻る!」


「‥‥え?」


何を言うかと思えば‥‥何故ここにいるのという問いではなく、逃げて‥‥か。

何処までも優しく、純粋な心を持っているな‥‥アザレア。自分のことよりも他人を心配し決してその言葉には、見返りを求めず不純を感じない‥‥やはり俺とは正反対の眩しい太陽だ。


「今から戻るだと‥‥正気なのかアザレア?あの様子だと後持って数分だ‥‥っておい!」


「レオンは市民の非難を、自分の命を優先して!!」


最後にそう言い残して疾風の如く王城へと駆けていったアザレア達。

残された俺はどうするかを再び考えるのだった。



◊◊◊



「ヴァレン!魔障壁を展開する!」


「ええ、わかりました!」


ゼフの自爆による大爆発まで残り5分‥‥その間に最大限の魔障壁を展開させて爆風を閉じ込めなければこの王城諸共、都市は半壊してしまう!

なんとしてでも阻止しなければ‥‥


「——助太刀致します。我ら四大天使の名に掛けてこの王城を、都市を破壊されては困りますので」


私達二人が円形の魔障壁を展開している反対側で、四大天族の彼らが協力してくれた。とても心強く、何と光栄なことだろう


「あの方々の‥‥お力添えとはとても頼りになります‥‥!」


「ああ、私達だけでは魔障壁を破壊されてしまうが、彼らと協力すればまだ希望は‥‥ある!」


と魔力を集中し魔障壁を何重にも重ねていく。体力も魔力も消耗が激しく、徐々に息が荒くなりだした時‥‥


「——先輩っ!私達も加わります!」


「——え!?アザレアさん達どうして‥‥!?」


「‥‥聞き分けの悪い部下だなヴァレン?」


まさか彼らがくるとは予想外だ‥‥上司の命令を無視して戦場に再び戻るなど命令違反もいいところ‥‥だが、私は嫌いではないぞ。そういう者は‥‥


「その様子だとレオンは私の命令をこなしているようだな‥‥‥何よりだ‥‥」


——おかしい‥‥何故‥‥私は少し寂しいなどと抱いてしまうのだ‥‥?

レオンが来ないのは私の命令であり、レオンの実力ではこの戦場では生き残れない。だから、突き放したというのに‥‥やはりあいつがいないとしっくりこないな‥‥


我ながらバカバカしい‥‥いつから‥‥居心地が良いと思っていたのだろう‥‥

私の‥‥私自身の目標の為に、今はまだ抑えよう‥‥

いつか‥‥この感情の正体が分かった時にまた考えることにしよう‥‥


フゥ——


深呼吸で脈を整える。目の前の元英雄を止める為に‥‥今は魔法に全神経を集中させる‥‥!


「———フハハハ!何人集まろうと同じ事だ!そんな魔障壁など意味をなさぬぞ!」


「いいえ!我々の魔障壁は意味をなさぬはずがありません!ここで止めてみせます先生!」


「ああ‥‥止めてみるがいい!」


そう言ってゼフの体内に蓄積させた莫大な魔力は今まさに解放されようとしていた。その解放がどれ程のエネルギーを持つのかは想像を絶する‥‥


「——これで終わりだぁ!!天族纏めて吹き飛べえぇっ‥‥!!」


膨れ上がる莫大な魔力と一瞬の閃光。膨張する魔力で魔障壁はガラスのようなヒビが入りはじめる‥‥


「「「ハァァアア‥‥!!!」」」


私たちは最後の最後まで‥‥一滴も残らず魔力を流し続けた‥‥

莫大な魔力のエネルギーが魔障壁を一枚‥‥二枚‥‥と破っていく‥‥

四大天族の力があって尚も魔力の膨張は止まる気配が無い‥‥


「——耐えきれぇぇ!!」


魔力のある限り、最後の雄叫びを振り絞る‥‥


「——っ!?」


その瞬間、私の目に映る眩い光。

それは瞳の奥深くに残り、脳にまで刻まれるのだった‥‥


———ドバアアァァァアアアン!!!!


そして圧縮された魔力の爆発音は天高くまで夜の海に響き割る

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