元選ばれし者 片翼のゼフ
———日が出始めてそう時が経っていない早朝6時。
鳥の囀りが聞こえ、夏の暑さが和らぐ時間。長期休暇のそんな朝早くに一体何をしているのか?運動?早起き?
‥‥いいや
——俺は現在、学園都市の中心部‥‥同盟軍本部に足を運んでいた。
「‥‥よし。通っていいぞ」
そう言われた俺は本部の城壁内部へと入った。本部の敷地に立ち入る為、門番の兵士に通行証を見せた俺は迷いのない足取りである部屋へと向かう。
そこは事前にレベッカ先輩に連絡を受け、指定されていた部屋なので直ぐに見つかった。
「ここか‥‥しかし、なんだ?」
扉を開けようと手を伸ばすが、俺は一度その手を止めた。
「凡その数は10〜20‥‥か」
部屋の中にいる人数を魔力で感じ取ったが、これ以上警戒しても無意味だと理解し俺は止めていた手を動かした。
扉を開けて中へと入ると何やら重要な会議を行っていた。俺が入ったのも気づかない程に彼らは“ある事について口論し議論している。
そんな俺は出入り口である扉の前に立っていると猫耳をピクピクしながら此方へ歩いてくる女性がいた。近くまで来たその女性は、俺の隣に来ると真剣な表情で口を開ける。
「ようやく来たかレオン。それと急に呼んですまない。召集がかかった‥‥」
「いいえ、問題ありません“レベッカ先輩。それでどのような事でしょう?」
レベッカ先輩に問おうとした時、部屋が騒めき出す。各々姿勢を正し、壇上に立つ一人の男性に敬礼を示す。その中には幼馴染であるアザレア達もいる事から、何かの作戦または事件と予想できる。
また壇上にいる男性はデリカートからもらった主要人物リストで見たことがる顔だ。名前は確か‥‥
そう考え引き出そうとした所、壇上に立つ男性はある重大な事を口にする。
それは誰もが忘れもしない事件‥‥
「——先日の大事件で我々同盟軍、湖底監獄は大きな損害を受けた。城壁は破壊され多くの囚人がこの世に解き放たれたが全総力を上げ、全囚人を捕らえた事は誇る。‥‥しかし!引き換えに我らの同胞、友、仲間が散っていった。極秘魔法部隊の半数は今もなお重傷を負い戦闘不可。‥‥君達は光の届かぬ英雄、その行動は人々に知られず平和を創る部隊だ。君達、そして彼らのお陰で今も市民は平和に暮らしている事を忘れないでほしい」
と熱く悲しく語る壇上に立つ男性。
確かに俺達は光の届かぬ英雄だろう。人々の影で行動し、誰にも知られず平和を創る。
なんてかっこいいのだろう‥‥人々の賞賛も名誉も歓声もなく、ただ願うは平和の為。
そんな志を持つ者達の集団であり、精鋭の中の精鋭が集う部隊。
さて、俺は本当にここにいて良いのだろうか??
————ドンッ!!!!
「「「——!?」」」
と大きな音が響き、驚く俺達は壇上に立つ男性に注目する。男性は背後のスクリーンに拳で殴り、その表情は怒りで染まっていた。
「——だが!たった一人だけ逃してしまった囚人がいる!」
威勢のある声を放つ男性、そしてその言葉を聞いていた者達に激震が走る。
「——何百年の時が経とうとその身は老いず、天族の住まう国をたった一人で壊滅させた伝説の男。天族最悪の反逆者にして元
◊◊◊
レオン達がゼフを捕らえる為、天族国に向けて移動を開始している最中ある王宮では上層部会議が開かれていた。そこは王の間と呼ばれ、王座に腰を下ろす女性と見下ろされる重役達が王座の前で跪く。そして王座に座る女性は視線を落としてこう答える‥‥
「——ゼフ‥‥先生‥‥」
と悲しい気持ちに沈む一人の女性。黄金の王座に座り、穢れのない純白の翼を持つその女性は天族国の現王‥‥
——四大天使ミカエル
彼女の年齢は実に300を超え、天族の中では若い方と言える。天族は寿命が他の種族に比べて10倍程長い為、300歳の王ミカエルはこの場にいる誰よりも若く、そして最強を誇る。
そんな彼女が今しがた口にした言葉は、他の者達を騒つかせるのに充分だった。
「まさか、まだ生きていたとは‥‥」
「“師に再び刃向かう時が来るとは‥‥」
「何百年経とうとその憎しみは消えぬということか‥‥」
各々の考え、あるいは思いが口から零れ落ちる。その言葉の数々に耳を澄ましていた王ミカエルは苦虫を噛み潰したように話しだす。
「片翼のゼフ‥‥元
そして王ミカエルは王座から立ち上がり、内に秘めた強い意志を掲げる。
「せめてもの償いを、憎しみの連鎖を!ゼフ先生に引導をっ!!」
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