宿敵再び
「ふぅ、サバイバルも案外懐かしいわね。訓練生時代とは少し違うけれど‥‥」
「ええ、そうね。今回から補助側でサバイバルなんて初めてだものね。それに先生も基本単独行動なんて嫌な言い方をするわ。あの場で気づいた人は本当に少数だったはずよ‥‥けれど最終的になんとかグループが出来上がって安心したわ」
「うん!サバイバルなんだから利用できる事は全て利用しなくちゃね!死と隣り合わせの環境なんだから死に物狂いでバレなきゃなんだっていいに決まっているのにね!一年生達の自我と判断を養うのが目的だけど‥‥私達が一番苦労するよね〜!」
夜の焚き火を囲み談笑を楽しむ女性三人の姿が映し出される。彼女達三人は危険な森の中でも平然と会話し、自然体で警戒する能力を培っている実力者。金色の髪、茶髪、黒髪とそれぞれ特徴を持ち、また軍の若き英雄と称される人物。
アザレア、カメリア、ベラの三人は学園のサバイバル授業にて他の同級生を陰から支える役を担い、1日目の夜を迎えていた。
食料は現地調達が基本のサバイバル。魔獣を素早く討伐し、肉を豪快に食う三人の姿は滅多にお目にかかれないもの。男子がこの場にいようものなら、その豪快さと可憐な少女達とのギャップに心打たれる事間違いなく興奮を覚えるだろう。
そんなアザレアは自分の分の肉を豪快に食べ切ると「ご馳走様」と言い、再び2人に向かって談笑し始めた
「気づかれない様に手助けなんて‥‥本当に神経を使うから余計疲れる‥‥。でも流石に上からの命令だから仕方ないけれど‥‥特待生なんて名ばかりね‥‥」
———私は焚き火を囲む2人の前で思わず愚痴を溢してしまった‥‥
ほんとっ今回の命令は神経が疲れる‥‥怪我人を出さない為に私達特待生組が助けるのは理解できるけど‥‥わざわざ茂みの中に身を潜めるとか木の上からとかまるで暗殺者のようで気乗りしなかった
サポートなんて私の性に合わないし‥‥ハァァ‥‥レオンに会いたい‥‥
私達と一緒に森の何処かにいるのよね‥‥一応Aクラスなのは驚いたけど、あのレオンだし魔獣に食べられていないかしら‥‥
「ふふ、アザレアったら何を落ち込んでいる‥‥のっ!———こっこの魔力は‥‥一体何っ!?」
「「———っ?!」」
焚き火を見ながらレオンの事を考えていると心配そうに顔を覗き込んでくるカメリアだった‥‥‥しかし、突如として私達三人を莫大な魔力の余波が襲う。
只事ではないと判断した私達は焚き火を消して、魔力を感知した現場へと全力で移動を開始する。移動の総じて通信魔道具を取り出し、各配置に着いているSクラス並びに森の外で待機している教師陣との全体通信を図る事にした。
「———こちらアザレア。830に魔力の余波を感知し現場へと移動を開始しています。命令を」
『———ああ、我々も確認している。そして最悪の状況に陥った。我々は魔障壁により森に立ち入る事が不可能だ』
「———なっ!それは一体どういう事ですか?!」
『———何者かに阻まれていることは確かだ‥‥教師100名でこの魔障壁を解除しているが時間を有する‥‥良いか?これは非常事態である。サバイバルは中止し一般学生全員を我々側に至急避難させろ。誰1人として負傷者‥‥死人を出すなっ』
「「「———ハ!」」」
そこで上からの通信は終了し私達は命令を遂行する為、夜の森を全速力で駆け回る。
「アザレア!ベラ!ここは1人でも多く見つけるために三人別れましょう!」
「「了解!」」
カメリアの提案にベラと私は直ぐに答え、三人別々に別れる。
私は魔力源の発生地へと赴きたいけれど命令なら仕方ない事。上は人命を優先せざる得ない状況にあり、私達しかこの状況を打破出来ない。この森で何かが起こっているのは紛れもない事実。けれど、一体この森で何が起こるというの‥‥明後日の方角から来た莫大な魔力は一体‥‥いいえ、これ以上考えるとまた起こってしまう‥‥
私の考えはいつも最悪な方向へと向かって‥‥そうこの感じは2年前と同じ‥‥
「‥‥“あの時”と同じ匂いがする」
考えても無駄‥‥私はただ全力で森を駆ける。
◊◊◊
———場面は変わり、水浴びから急いで上がったレオンは魔力の発生源へと全力で駆けていた。
『———ファシーノ。状況は』
『ええ、これは最悪ね。私達学生は魔障壁で森に閉じ込められ教師陣と遮断されてしまったわ。生憎、通信はできるのだけれど‥‥厄介な事が‥‥』
『———厄介なこと?』
珍しくあのファシーノが困った口調で話した。いつも冷静な彼女が困ってしまう程の内容とはどう言ったものだ‥‥
『どういう事かこの森にSランク魔獣が出現したとい情報よ。それで一般学生の負傷者が続出し、特待生の数名がSランク魔獣の対処に当たっているわ。教師陣は強力な魔障壁の解除で立ち入ることが困難、戦えるのは数名の特待生のみ。謎の莫大な魔力、まさに絶望的な状況ね。どう致しましょう?』
‥‥‥どうするか‥‥参ったな。よりにもよってSランク魔獣が生息していたなんて。というかこの森にSランク魔獣は生息していないはずではなかったか?
教師が予め確認したはずでは‥‥どういうことだ?身を潜めていたのか?
まあ、なにあれ一国の大隊を引き連れて討伐可能なSランク魔獣に流石の特待生でも武が悪いだろう。勝ち目は極僅かな希望だ
『俺は魔力の発生源へと向かう。ファシーノそっちは任せたぞ』
『ええ、任されたわ。あと魔族帝国にいる構成員達にも報告しておくわ。気をつけてね———』
気をつけてね‥‥か。久しぶりに聞いたな。Sランク魔獣はファシーノならなんとかしてくれるだろうと信じている。ならば俺は俺の責務を全うしよう。
ファシーノとの念話が途絶え、再び森を駆ける。方角は湖の港から離れた位置。
そして森の中心へと近づくに連れて木々が巨大になり、凶暴な魔獣が唸りを上げる。
————グオオオオッ!
「———邪魔だ」
草木の陰から姿を現した魔獣を一撃で消し去り、スピードを緩める事なく次々に現れる魔獣を掃討していく。まるで相手ならないが現に100は超えている。魔力の発生源に近づくに連れて量が多くなり、さらに魔獣を掃討すること100頭。
木々の隙間から見える先には朽ち果てた遺跡らしきものが現れた。洞窟と密接し、見ても分かるが数百年の時が経たないとここまで朽ち果てる事はない。ヒビが全体に行き通り、入口以外は殆ど崩れ果て、太い根が絡み、石段は機能をしていない。
「これは‥‥遺跡なのか?随分と古びている」
『———誰だ?』
遺跡の石段に足を踏み入れた俺は遺跡の奥から聞こえた声に耳を傾ける。
すると遺跡の奥からローブを羽織った種族不明の数人が続々と姿を現した。
「‥‥ほう、その服は学生か。この地まで踏み入るとは‥‥魔獣共を倒してきたという事か?」
低い声の主が俺を見下ろしながら言葉を話す。ローブで覆われている瞳に向かって俺も言葉を投げる。
「ああ、相手にならなかったな。それでお前らは何者だ?先程の魔力はお前らの仕業だろう?」
「ハッハッハッハ左様!貴様は運が悪い。この地に踏み入らなければ生きていたかも知れぬというのに‥‥その好奇心が仇となったな小僧!我ら“
———ピクッ
聞いたことのある言葉が頭をよぎる。何年も追いかけてきた存在であり、俺の人生を‥‥俺に関わる大切な仲間の人生をぶち壊した元凶。2年ぶりの再会だ
「
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