休日デート II 違和感
「———あらこれなんて似合うんじゃない?アザレアさんにぴったりだわ」
「え、そんなに露出の高い服着れるかしら‥‥」
アザレアとファシーノが仲良くお互いに服を選んでいる。まさかここまで仲良くなれるなんて女性はわからない‥‥昨日まであれ程火花を散らしていたのに‥‥
全員集合デート?をしている俺たちは商業地区のお洒落な店に来ている。女性物、男性物の衣服が売ってあり、今のトレンドの衣服も並んでいる。可愛い服が盛り沢山で女性陣はテンションが高く、俺たち男性陣その光景を見守っていた。
遠くから身守っていると不意に隣のワルドスが俺に話しかけてくる。
「なあレオン‥‥お前は今まで何処で何をしていたんだ?」
鋭く踏み込んでくるワルドスの問い。ワルドスの目は疑問よりも何か探りをいれにきているようだった。そんなワルドスに俺は考える素振りも見せずに即答する。
「前にも言ったが俺は世界を見て回っていたんだよ。国を超えて、世界を回っていると色々と気付かされる事があった。まあ、その過程で彼女と出会い、今では良き相棒だな」
「ハハハ、そうか。レオンが隣に女子を連れて入学していた時は流石に驚いたな。彼女が美人過ぎて周りの男子なんて釘付けになっていたもんなっ。でも、レオンが学園にきて良かったよ。アザレアも皆も俺も喜んでいる」
‥‥‥まさかワルドスのこんな言葉を聞けるなんてな‥‥本当に何処までもお前はいい奴だよ。そして俺もワルドスに聞きたいことがある。2年前の事件‥‥それも厄災の魔獣をこの世から消滅させた時、ワルドス達はどう思ったのかを‥‥‥
「そうか‥‥なあワルドス。お前は2年前の事件の時見たんだろう?厄災の魔獣を滅ぼしたと言われる頂の魔法を‥‥‥」
俺は一歩踏み込んだ問いをワルドスに話す。こちらがリスクを負う問いだが、確認しておきたいのだ
‥‥‥もし彼らが俺の正体に気づいた時どちらを選ぶのかを
その後、少しして真剣な表情に変わったワルドスは俺の質問に答えてくれた。
「ああ、見たさ‥‥‥天をも翔る魔法を。あの時の衝撃は今でも忘れはしない。人族領と魔族領の果てしない距離でもこの瞳に映ったんだ。魔力の波動も魔法の余波も何も感じない魔法‥‥厄災をも斬る魔法が何も感じないなんて信じられなかったが、最近理解できたんだ」
そういうワルドスの視線は服ではなく当時の情景を見ているかのように澄んでいて、話の続きを再会するのだった。
「何も感じないんじゃなかったんだ‥‥‥俺たちと“虚無の統括者”と呼ばれる人物とは次元が異なっていたんだ。俺たちよりも遥かに‥‥何次元も上に存在する”彼”は正真正銘の超越者。
ワルドスの口から語られる真実。奥歯を噛み締めながらワルドスの表情はとても悔しそうにしていた。ワルドスの表情から察するに言いたくはなかったのだろう‥‥しかし、俺に話すと言うことは嘘で英雄になりたくはなかったのだと察する。これまで英雄と扱われてきた彼らも悩んでいたのだ。そんな彼ら‥‥ワルドスに掛ける言葉を選ばなくてはならない。
俺がそのネロであり、虚無の統括者と言う事は避けつつ
「そうだったのか、話してくれてありがとう。それでもワルドス達は俺の故郷も国も命をはって守り抜いた本物英雄だ。その事実が真実か嘘かなんて俺は構わない。俺の中ではお前達だけが英雄なんだ」
「——っ!そうか‥‥レオンにそう言われると何だか嬉しいな」
やはりワルドスの言葉からは“虚無の統括者に対しての悪しき感情があまり感じ取れない。それどころか恩すらも感じているようだ。
しかし、戦場で対峙した時はどうかはわからない。もし、ワルドスが戦うのなら俺も応じなくてはならない‥‥いくら同級生だとしても良き理解者だとしても‥‥俺はワルドスやアザレアを超えて行くかもしれない‥‥
もし‥‥アザレアが俺の前に立ちはだかった時、俺は本当にアザレアと戦えるだろうか?今の俺では多分不可能だろうな‥‥‥
ワルドスと話しをしていたら女性陣は買い物を満喫したのか両手に大量の袋を抱えていた。と言う事でここからは男の出番だ。女性の荷物を片っ端から持とうではないか。唯一の男の見せ所だからな!
◊◊◊
「ふ——!買った買った!やっぱり皆んなで買い物は楽しいわね!」
全員の先頭を歩くアザレアは気持ちが晴れたかのように楽しんでいるようだ。
「ええ、楽しかったわ。アザレアさんお腹空いてなくて?私レストランを予約しているの」
ファシーノも楽しかったようでアザレアと一緒に隣を歩いている。そして時間もいつの間にか午後の3時を過ぎている。それを見計らってかファシーノはレストランをアザレアに勧めている。
「行くわ!レストラン!早く行きましょう!」
———即答だった。
それから歩くこと10分程。大通りの道に沿って聳え立つ建物の前についた俺たち一同は驚愕していた。なぜならその建物は‥‥
「おいおい、ここってあの“パンテーラ=ネーラ商会”の建物じゃねーか!ここのレストランって言ったら超高級三つ星レストランじゃん!」
「ああ、ほんとだぜ!?予約取れたって意味わからねーよ!」
「ま、まさかここを予約取れたというの‥‥だってここって予約一年先まで埋まっていると噂なのに‥‥ファシーノさんどんな手を使ったというの?」
双子のテルとコキン、そしてカメリアまでもが驚く。そして意外にも知っていたことに俺は驚いたぞ。あと、一年先まで予約が埋まっているのは初耳だな。それ程に人気だったとは‥‥楽しみだな
「ふふふ、少し知り合いなだけよ?それで席を取っておいてもらったの。早く中に行きましょう」
そう言ってガラス板の扉を押して入っていくファシーノ。アザレアと食べ物目当てのベラが続いて入っていくが他の四人は未だに建物の前で立ち尽くしていた。
「知り合いって‥‥ファシーノさんは一体何者よ」
カメリアは何故かずっと警戒し、俺を睨んできた。『一体どう言うこと?』
と目で問い詰められているので俺も素直に答えることにした。勿論この商会が俺の傘下であることは言わないがな
「おい、俺も初耳だぞ」
それでも俺を睨んでくるカメリア。きっとカメリアはこのレストランに来たかったに違いない。こんな子供が入って良い場所ではないとカメリアが一番よく自覚している。だから警戒しているのだろう。まあ、そんなに警戒していては道の邪魔だろう。
「良いから行くぞ、カメリア」
後押しをするようにカメリアを呼ぶと猫のように警戒しながらついてきた。
入り口に立つウェイトレスに案内されて魔法エレベーターに乗り込む。
上階に上がること数秒で最上階に通された俺たちはそのまま新たなウェイトレスに案内される。案内された先は個室であり、外を眺められる窓が一面に広がる最上級ルームだった
「な、なんて綺麗な場所‥‥本当にここで食事できるなんて思わなかったわ」
やはりカメリアはこのレストランに着たかったようだ。目を輝かせながら
沈む夕日を眺めている。
するとそこに一人のウェイターが歩いてきてファシーノの前に一礼した
「この度はご予約ありがとうございます。ファシーノ様のお連れの方々と言う事ですので、このレストランで最上級の一部屋をご用意致しました。どうかごゆっくりと‥‥‥」
と言ってその場から立ち去ってしまった。立ち去る間際、ウェイターの左耳に輝く物があった。ようく見ると番号が刻まれたピアスをしていた事からあのウェイターは月下香構成員の一人のようだ。
「さ、料理が運ばれてくるわよ。皆んな期待してね、とっても美味しいのよ」
それぞれ席に座り、ファシーノが言う通りに料理を待っていた。
少しすると人数分の料理が運ばれてきてそれぞれの席の前に置かれる。どうやらコース料理のようだ。ワルドスもアザレアも景色をそっちのけで料理に目を輝かせている。
「それでは頂くとしましょう」
◊◊◊
「はぁ〜美味しかったー!ファシーノありがとう!こんなに美味しいの初めて食べたわ!」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」
ほんと随分と仲良くなったな二人とも‥‥何を考えているかわからない。
あのファシーノのことだから餌付けでもして、後で何かしら企んでいそうだが‥‥
考えすぎかもな
「本当に美味しかったわ‥‥ありがとうファシーノさん。大商会のレストランを予約できるその人脈は‥‥一体何者なの?それに貴方とは学園で初めて会ったのにどうしてかしら‥‥初めて会った気がしないのよね」
突然のカメリアの鋭く刺さる質問が空気を一変させる。ワルドス達もアザレアもベラも表情が一気に濁りだす。しかし、それに臆さないファシーノは笑顔で答える
「私が何者かね‥‥そんなに知りたいのかしら?」
「ええ、とっても‥‥」
カメリアとファシーノの駆け引きが勃発する。互いに睨みを効かせるだけで語ろうとしないファシーノと問い詰める気満々のカメリア。空気が張り詰め、止めようかと思い席を立とうとした瞬間———
ピピピピピピピピ!!
「「「———!」」」
丁度よく魔道具の通信機と思われる音が響き渡った。音からするにカメリアの方から聞こえたと思うと、カメリアは俯きながら何かを確認しているようだった。
そして再びを顔を上げる。
「ごめんなさい‥‥用事ができてしまったわ」
カメリアがそう答えると俺とファシーノ以外が席を立つ。
「レオンごめんなさい、今日はとても楽しかったわ。ファシーノもありがとう。先に帰らせてもらうね‥‥また学園で会いましょう」
と言って暗い表情のアザレアは出口に向かって歩いて行った。続くようにカメリアもベラもコキンもテルも出口へと足を進める。最後一人残ったワルドスは何かを伝えようとしていたが俺はそれを制止させた
「いい、分かっている。お前達は英雄だ、この学園都市を守ってくれ」
「レオン‥‥感謝する。今日で気持ちが楽になったありがとう」
どうやら重大な事が起きたらしいな‥‥皆の表情からして良い事ではないのは確かだ。しかし‥‥少しきな臭いな。さて、俺たちはどうするか
俺はファシーノに視線を送り合図を出した
「ええ、もしかしたら今夜衝突するかもしれないわ」
時刻は6時を回る頃。最上階の窓から街並みを一望する。明かりが灯り、夜へと変わる街。
そんな街を眺めながら俺とファシーノは組織からの連絡を待つのだった——
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