休日デート I
「———‥‥‥このように魔法というものはとても奥深く面白いものです」
現在、担任のウルティア先生が魔法論理について講義している最中であり、Aクラスの皆は必死になってノートを録っている。一方の俺はただ黙って先生の話を聞いているだけだ。
側から見ればノートを録らず、ただ黙って聞いている奴にしか見えないだろう‥‥だが、違う。しっかりと先生の話は聞いているぞ。ノートを録るのが惜しいくらいにな
学園生活5日目を迎え、魔法についての知識が徐々に付いてきた自覚がある。先生の教えが素晴らしいのも一つあるが‥‥‥やはり隣の方の知識も只者ではなかった。分からない箇所を隣のファシーノが教えてくれるのだ。他の生徒よりも最高に学園生活を謳歌していると自負している。
「クソっいちゃつくんじゃねーよ‥‥」
‥‥‥ふふ、やめてくれたまえ男子諸君。一斉に俺を絞め殺しそうな目で見てくるんじゃない。まあ、そんな男子諸君は無視して授業に集中しよう。
今日の魔法理論は俺が一番知りたがっていた講義だ。それも魔法の種類と上位互換である。まず魔法は
そして更に上位の魔法も存在し、最上級魔法と呼ばれている。以前にオリエンテーションでレオナルドが放った血炎の流星群という魔法も最上級魔法。また先生の話からレオナルドの最上級魔法は代々受け継がれる物であることが分かった。
それと我らが財務担当エルディートの
少し分かりにくくなるが、最上級魔法とは言わば劣化版オリジナル魔法である。劣化版と言うと最上級魔法が弱く聞こえてしまうが、充分に最強である。
最上級魔法を扱える人物など世界に100人いるかいないかの天才達が最後に辿り着く領域。継承される最上級魔法と文献に残る太古の最上級魔法は扱える者を選ぶとも言われている。
しかし、そんな天才達の中でも稀に化け物が現れる。魔力に愛され魔法を渇望する者こそが新たなる魔法を創造し、会得出来る。莫大の魔力と引き換えに一撃で国すらも滅ぼしてしまう究極の魔法。
それこそがオリジナル魔法と言われる
俺の浅すぎる知識がみるみるうちに更新されていくこの感覚が堪らない。魔法への探究心が次々に湧いてくる。
そういえば俺の扱う魔法は一体何なのか未だに分からない。自分自身でさえも分からないなんて頭おかしいな‥‥闇魔法?
いや違うな‥‥‥では何だろうか?
◊◊◊
「———はい。今日の魔法理論はこの辺で終わりにしましょう。来週からは実技が追加されますので、明日からの休日は羽目を外し過ぎないようにしましょうね?」
久しぶりに自分自身について考えていたら講義が終わってしまったようだ。今日は週末、明日から二日間は休日らしく、学生らしい生活スタイルだ。
と言うことで隣のファシーノに声をかけてみよう
「ファシーノは休日をどう過ごすんだ?」
こんなあからさま過ぎる問いにファシーノはどう返して来るだろうと窺ったが、彼女は男を弄ぶような笑顔で答えてくれた
「ん〜そうね、買い物に行こうかしらね。貴方も付いて来たい?」
「はい。勿論ついていきます」
‥‥‥俺は無意識に即答していた。そんな俺の反応が良かったのか、今度はニッコリ笑顔のファシーノ。どうやら俺は遊ばれていたらしい‥‥‥でもそれで良い!
「じゃあ、明日11時にしましょう。寝坊はなしよ?いい?」
「はいっ」
ファシーノに念を押されてギロリと睨まれる。多分寝坊なんてしたら俺はこの世にいないのかも知れない‥‥そう考えると全身から汗が吹き出してきた。
「じゃ、じゃあ俺たちも寮に戻るか」
立ち上がり出口へと向かっている最中、Aクラスの講堂には俺達と数人のクラスメイトが残っているのが確認できた。皆帰るのが尋常では無いくらい早い。
休日を楽しむ為だろうか‥‥‥
「———いたっ!」
講堂を出て、ファシーノと一緒に廊下を歩いていると背後から声が聞こえてきた。何故だか聞いたことのある声‥‥いいや忘れもしない声が耳に届いてしまった。廊下を走っているとわかる程にこちらに勢いよく向かって来ている彼女‥‥
そして俺は今まで忘れていた事を思い出してしまった‥‥
音が徐々に近付いてきて、俺の真後ろに到着する彼女。振り向いて満面の笑顔で答えよう
「や、やあアザレア。今日もかわいいね」
「え、いきなり‥‥って違う!!約束を忘れていたわね!?」
———ギクっ
「その反応は本当に忘れていたなんて‥‥まあいいわ!それより明日暇?!」
アザレアは俺にグイグイ詰め寄ってくる。約束を忘れていたことは本当に申し訳ないのだが、明日はファシーノとのデート‥‥買い物があるからな。こう言う時どうしたらいい‥‥
「あらあらアザレアさんじゃなくて?貴方も”レオンと”デートしたないのね?」
なんとファシーノが俺の前に来てアザレアと話し始めてしまった。この状況は一体‥‥俺は何も言わないほうが良さそうだ‥‥
事が過ぎるまで空気となろう‥‥うん、そうしよう
「———はあ?ファシーノじゃない、私明日レオンとデートするの。邪魔しないでくれる?」
互いに睨み合う女性達。金髪と黒髪がゆらゆらと靡き、燃え上がっている。
「あらそうなの?残念ね、もうレオンは私が先に誘ったのよ?それでも来たいと言うのなら構わないわよ」
そんなファシーノの勝ち誇った表情と強気の姿勢は完全に挑発していた。
「へぇ、そういいわよ‥‥行ってやろうじゃない!」
アザレアはその挑発を買ってしまった。お互いの視線に火花が散っているのだが‥‥
‥‥‥え、どういうこと?
これは修羅場と化すのだろうか、それとも何事もなく平和に終わるのか‥‥
◊◊◊
———時刻は午前11時頃
商業地区へと続く大通りの道にて俺はある人達を待っていた。
交通量の多い大通りは様々な種類の魔車が俺の目の前を横切って行く。無論その中にはあのパンテーラ=ネーラ商会の魔車も走っているのが確認できた。エルディートと俺が共同開発した魔車は裕福層向けの奇抜なデザイン、それに応じる値段が張られているので乗車している者は金持ちだろう。
また他の商会がエルディートの商会に対抗するように奇抜なデザインと風を斬るような流れるフォルムを真似してきた事から競争率がとても高い。近頃開催される魔車同士のレースもあるのだが是非とも観戦したいものだ。
目の前を通り過ぎる魔車を眺めていたら、左から見知った人物が現れ早速一人目が来たようだ。
「お待たせっ!あら、早く出たつもりが貴方の方が早かったなんて‥‥もしかして期待してるのかしら?」
最初に登場したのはファシーノだった。膝上のスカートが生足を露出させ、綺麗な曲線を描きながら腰、胸へと視線を誘導させる。両肩を曝け出すタンクトップはその大きな胸をより強調させ、肩に手を置き引き寄せたくなる。そして美容院に寄ってから来たのか、いつものクールな雰囲気から可愛いらしさが溢れ出ているヘアスタイル。
下から上を舐めるように見ていた俺はあろう事か感想を伝えるのが遅れてしまった。紳士たる者、女性の容姿は何が何でも褒めなければな。ていうか褒めちぎりたい
「ああ、期待しているとも。それに今日の服装はとても可愛いよ。というか今にでも押し倒してしまいたいくらいだ。ヘアスタイルも変わって雰囲気がマイルドになったね」
「そ、そうかしら‥‥ありがとう‥‥できればそんなにジロジロ見ないでくれるかしら少し恥ずかしいのだけれど‥‥」
———な、何と言うことだ‥‥!あのファシーノが照れているだと‥‥髪を触りながらのその上目遣いは反則だろう!?お、落ち着け俺!ここで意識を持っていかれるな!
踏ん張れ俺!!!
俺がファシーノに釘付けになっている最中、今度は右から幼馴染の声が聞こえてきた。
「レオンー!ふふふ、どう!?」
アザレが勢いよくこちらまで駆けてきては胸を突き出し問いかけてきた。おそらく容姿についてだろう。それは勿論可愛いに決まっている。ワンピース姿に一枚だけ肌かけを着ているアザレア。やはり昔よりも成長している、そう‥‥腰も胸も‥‥といけないこれでは変態になってしまう。
ヘアスタイルも変化していてポニーテールになり、そこから頸が見えて唆られてしまう。
「やっぱりアザレアは可愛いな。そのワンピースもヘアスタイルもとてもよく似合っている」
「そ、そうでしょ?!見る目あるじゃない!」
ツンツンしているのに褒められると顔を真っ赤にして照れるその仕草は国宝級だよ。ツンデレというやつなのだろうか?
よし、それじゃあ行こうか! っと思ったのだが、アザレアの後ろ‥‥視界に入ってきた“人物達に意表をつかれてしまう羽目になる
「どうして‥‥‥お前らも一緒なんだ?」
そう、こいつらは俺の同級生達。カメリア、ベラ、ワルドス、コキン、テルの五人だった。
「面白いことになっていると思って付けてきたのよ。アザレアが心配で心配で‥‥ふふ」
というカメリア。本当にアザレアの事が心配で来たのか‥‥それとも興味本位で来たのか‥‥まあ後者だろうな。これは確信犯だ。
「何だか悪いなレオン。俺は反対したんだが、カメリアとベラがついて行くもんだから、その俺たちも興味本位で‥‥」
イケメンワルドス。本当に申し訳なさそうに頭を下げる彼は本当にはんたいしたんだろうな‥‥なんていいやつなんだよお前は‥‥。
「ごめんねレオン‥‥まさか皆んなにバレていたなんてしらなくて‥‥」
アザレアは謝るのだが、アザレアが謝る必要なんてないだろう。まあ、十中八九こうなるとはほんの少しだけ予想はしていた。まあ、仕方のない事だな‥‥
「ハハハ、全員集合で今日は楽しくなりそうだ。別にいいよなファシーノ?」
「ええ、構わないわよ。まさかこの人数で出かけるなんて少し楽しみね」
意外にもファシーノは楽しそうにしていた。許可も取れた事だし早速出掛けようじゃないか。
「じゃあみんなで観光しよう!」
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