部屋に突入する女性陣 逆じゃね?
「‥‥ファシーノ毎回騒がせてごめん」
どうしようこの状況‥‥
ファシーノが俺を止めた理由が分かったけどまさかこれ程とは恐れ入った
俺が本部の扉を開ければ目の前に広がるのは数百名もの構成員達。1階と2階は吹き抜けになっているのだが、その2階の見下ろせる通路にもびっしりと配置に着く構成員。そして極め付けは序列最上位の5人までもが剣を抜いていると言う事実。構成員達は俺たちを侵入者と勘違いしたのだと思う。一人一人の表情が真剣そのものだった。
しかし、俺たちと分かると拍子抜けた声と驚きの声があちこちから聞こえてきた。表情も緩く緩和され、肩の緊張が溶けたのか次々に剣を降ろしていく
そして最初に五絢が跪くと波のように手前から奥へと跪いていく構成員達
一切の無駄な動きと躊躇いがなく、それが当然であると知らしめる
隣のファシーノが気になったので構成員達から視線を外して見ると額に手を当て目を瞑っていた。なんだか疲れたと言わんばかしの表現をしていたな
「やっぱりね‥‥こうなると思ったわ‥‥」
深いため息を吐いたファシーノだが、『目の前の状況を何とかしないと』というキリッとした表情と夜に透き通る美しい声で構成員達に事情を説明しだした。
「ごめんなさいね、こんな夜更けに‥‥見ての通り侵入者じゃないわ。学園都市から今帰って来た所なの‥‥五絢も皆も騒がせてしまったわね」
「なっ何を言いますか!我らはいつ如何なる時でも族からこの地を守り抜く事が使命。我らの居場所でもあり、至高のお方が帰られる地。謝らないでくださいファシーノ様、我らはただ全うしただけでございます」
ファシーノの説明兼謝罪に逸早く言葉を重ねたのが序列9位のアントニだった。目を見開き驚く表情を見せるアントニ。男性であり、イケメン高身長の20代前半アントニが跪く光景はなんとも表し難い。18歳に頭を下げるのに一切の抵抗を感じない。元軍人でもありSランクという階級を背負っていたアントニだからこそ、より実力を理解しているのだろう。
なんせファシーノに命を救われたらしい。
目の前の‥‥‥序列9位のアントニが代表で言葉を発したことによって他の五絢は言葉を発さず黙り、構成員達も呼応するようにこの静寂に溶け込んでいた。
皆が跪いている光景に圧倒される俺だが組織のトップとして威厳を示さなくてはいけない、と思いとりあえずテキトーに話をする事にした。あと、入る前に仮面をしておいて良かった‥‥‥
「———ミネルバ、トラヌス、ハリア、アントニ、リベラ、そしてお前ら構成員良くやった。俺たちが不在でもこうして侵入者に逸早く気づき、万全の体勢で待ち構えるお前達に感謝する。あいにく今回は俺たちだったが、このような状況がいつ何処かで再び発生するか分からない。その時もこのように俺たちの帰る場所を守ってくれ。ありがとう」
———ふふふ、どうだこの言葉は?そして極め付けは感謝の言葉と笑顔だ。なかなか良いものではないか? 自身でもなかなか良い感じに演説できたと思うのだが‥‥
果たしてみんなの反応は————
「「「‥‥え‥‥‥」」」
‥‥‥え?こっちまで『え』?が出るんだけど、何で皆こっちを見たまま固まっているんだ。そんな有り得ない、信じられないみたいな顔をしないでくれ、皆石像のようだぞ。
はぁ、仕方ない‥‥こんな反応されるのも当然なのかも知れない
以前、皆の前で元序列10位マルクスの腕を斬り落としたからな。俺の印象と評判は最悪なのかも知れない‥‥隣のファシーノに慰めてもらおう、そうしよう
「ファシーノ‥‥‥」
俺は潤んだ瞳でファシーノの瞳を見つめた。しかし何かがおかしい。いつものファシーノなら一瞬で赤面してくれるのに今のファシーノは組織の幹部としての顔を崩さないでいる。部下達の前での妖艶な色気が漂うファシーノのままだ。
するとファシーノは何かがおかしかったのかクスクスと笑ってしまった。
「ふふふ、ごめんなさい。そんな顔をしないでも大丈夫よ?ほら———」
するとファシーノは視線を五絢と構成員に向けて何かを伝える。俺ももう一度そちらに視線を戻してみると‥‥‥
「な、名前を覚えていてくれた‥‥っ!!」
まず猫獣人のミネルバが尻尾をブンブンと振り、
「はぁ‥‥はぁ‥‥名前を呼んでくださった‥‥っ!」
次に同じ人族であるトラヌスは息が荒く、吐息を漏らし、
「エルディート様申し訳ありません‥‥私我慢できません‥‥っ」
エルディートの義妹でもあるエルフ族のハリアもまた息が荒く、高揚し、
「ありがとう‥‥‥?あのネロ様が‥‥っ!身に余るお言葉っ!」
と人族であるアントニに驚かれ、
「初めて、私を見てくれた‥‥っ!」
と犬獣人のリベラに泣かれてしまった
なんだろう、君たちは後から来るタイプなのかな??
最初、石像のように固まっていたから「俺って人脈ないな〜」なんて思っていたけど、名前を呼んだだけでここまで喜んでくれるなんて嬉しいじゃないか!
後から攻撃的に反応するタイプと分かればこっちの物だ
そして五絢の背後から奥までびっしりと跪いている構成員達。彼らの漏れでた声がこの耳に伝わってくるぞ!
まずそこの強そうな構成員A君とB君の漏れでた声を聞いてみよう———!
「———俺は元序列10位のマルクス様が五絢で最強であると思っていた。しかしあの日、あのお方が顕現した時から俺の中の世界が変わった。あのマルクス様の腕を斬り落とし、五絢、さらには統括者で有らせられる大幹部五華の方々が跪いた光景は今もこの瞳に焼き付いている。この
「ああ、お前のいう通りだぜ。我々下位者が名前を呼んではいけない“お方に感謝されるなんて‥‥‥俺は死んだのか?なあ?」
構成員A君B君の会話はこんな感じか‥‥やっぱり俺って怖がられてないか?
それに『名前を呼んではいけないお方』とか俺はそんな風に呼ばれていたのか?!
気のせいだとしても、皆の声から察するに怯えているじゃん!
主に男性陣からだが、このような会話がそこら中で聞こえてくる。俺の耳が特別なので他の人には聞こえない声も俺に筒抜けである
さらに女性陣はというと‥‥
「どうしよう‥‥私あの人に一生を捧げると決めたわぁ」
「そんなの当たり前じゃない。私は少しでもいいから二人でお話がしたいわ」
「はぁはぁ‥‥罵られたい‥‥そして強引に襲われたいわぁ‥‥」
「私も‥‥」「うちも‥‥」「わかるぅ‥‥」
うん、いつも通りで異常はないようだ
———さてと、この状況どうしたものかな、進展が全くない。もう真夜中だというのにこうして跪いている皆が可哀想だ。さっさと命令して、寝よう。うん。疲れたし、風呂入りたいし。
よしっ———
「それじゃ———解散っ!!」
◊◊◊
———ここは
「———とまあ、流れはこんなとこね。全く‥‥皆には迷惑をかけてしまったわ」
「あら、そうだったの?皆大騒ぎだったわね、ふふふ」
「エルディートさんに皆まであの後来ちゃうなんて‥‥起こしてごめんなさい」
私はつい先程の事件を五華の皆に話していた。まさかあれ程大騒ぎになってしまうなんて予想もしていなかったわ‥‥本当驚いちゃった。あの後レオンが「解散!」って言ったけどその後、騒ぎに気づいて向かってきたのが大幹部でもあり五華でもあるエルディートさんや皆だなんて‥‥はぁ、疲れたわ
「はっはっは!主も破天荒な奴だ!」
精霊女帝のヴァルネラ様が面白おかしく笑っている。片手にはお酒の瓶を持ったままお湯をかき分けながら私に近づいてきた。そして私の横にくると片方の手で突然‥‥‥胸を揉んできた
「———な!何をするのですかヴァルネラ様!」
私は咄嗟に両手で自身の胸を防御した。そんな私の反応が面白いのかヴァルネラ様はエロい目で見ながらお酒を飲み始める
「大人なフリをしてもまだまだ子供だなファシーノ。そのデカい胸を武器に主を誘惑したか?早く済まさねば先に妾が味わうぞ」
「「「———っ!!」」」
このヴァルネラ様の発言に反応したのは私だけではなく、会話を聞いていた他の3人も反応を示した。露天風呂のお湯を勢いよく宙に弾き飛ばして立ったエルディートさん。その体は女性の私でも魅了されるほどに全てが桁違い。月の光に照らされた体はより一層輝き、体のラインに影ができて本当に綺麗
「聞き捨てなりませんねヴァルネラ様。順番は決まっているのです。しかし、当の一番がまだではいかがいたしましょうか」
あのエルディートさんが少し怖い‥‥順番は決まっているのに皆を待たせてしまっているのは私の責任ね。せっかく一番をあの時に勝ち取ったのに、結局あの人との二人での旅も積極的になれなかったなんて‥‥‥
お湯に映る自身の顔を見ては、確かに他の人よりも整っていると思う。学園都市に行って気付いたけど私の容姿は女性から見ても綺麗らしい。
胸も結構あるし‥‥でもあの人が襲ってこないのよね。私はいつでも心の準備も覚悟もしているのに‥‥
「エルディートさんのいう通りです!!これ以上待っても待ちきれません!!」
「———ええ?!デリカートまで‥‥」
そして露天風呂で泳いでいたデリカートまで立ち上がりエルディートさんの味方をする。皆の目を見ると冗談ではなく本気で言っていると伝わってくる。
私は唯一発言していないヴィーナスさんに助けを求め、近くまでいく。しかし、そんないつもクールで無口なヴィーナスさんからは予想外の言葉が出て来る。
「———それなら、今ここにいる皆でネロ様の部屋に突入しましょう。それが一番いいと思うわ」
「「「‥‥‥!!」」」
なんということ!あのヴィーナスさんがこんな大胆な人だなんてやられたわ!
ハッと気づき後ろを振り向いた時にはヴァルネラ様は湯船から上がり脱衣所の出口の取手まで差し掛かっていた
「名案だ!娘よ!妾はもう上がるぞ!お前達は湯船にでも浸かっておれ!」
「ヴァルネラ様!抜け駆けはいけません!!私も行きます!」
続いてエルディートさんが裸のまま駆け足で戻り、
「なら私も行く!」
とデリカートも一緒に出口に向かっていった。
「もう、全く!皆でなんておかしいわよ‥‥けれど、それもアリね。行きましょうヴィーナスさん。置いていかれちゃうわ」
私はヴィーナスさんの手を取手一緒に出口に戻っていく。まさかいきなりこんな事になるなんて誰が予想できるのかしら‥‥はぁ、覚悟を決めていくしかないわね!
今頃あの人は部屋で何をしているかしらね。まさか私たち5人が突入するなんて予想もしていないはず。
男の部屋に襲いにいくなんて‥‥普通逆よね?
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