アザレア達の日常


「———ハァハァ‥‥まだまだっ!」


金髪を靡かせる少女がまっさらな砂の上を全力で駆ける


ここは人族軍の専用訓練場。大陸の広大な湖とは反対側に位置する海の砂浜。そこで数百人の軍服を纏う兵士が砂浜の上を走っていた


季節は夏に刺さり掛かろうとする頃で太陽の光と熱が体を焼き、猛獣に追われているかのようにただひたすらに走っていた


「アザレア!どうした、もう終わりか!死ぬまで走れ!」


「はぁい!」


声を魔法で拡張させ、アザレアを追い込んでいる女性の鬼教官

アザレアだけではなくその他の兵士も怒鳴りつけ追い込んでいる


またアザレアの他にも見知った人物が数名いる。女性ではベラにカメリア。男性ではワルドスにコキンとテル‥‥‥


マルゲリータ町の同級生が数名アザレアと共に訓練に励んでいた‥‥



◊◊◊



———私の名前はアザレア


こうして登場するのも久しぶり過ぎて忘れちゃったかしら? 


ふふ、まあ良いでしょう。私達が今こうしてなぜ訓練に励んでいるか?


そうね、説明しましょうか‥‥‥


マルゲリータ町で厄災の片鱗が確認されてから丁度3年‥‥‥

そしてレオンが旅立ってしまった時から3年の月日と年月が過ぎた


私達はレオンに‥‥皆んなに何も起こる事のない幸せな日々を過ごして欲しいと願った


そしてレオンが旅立ってしまった時は夜更けまで泣いたわ‥‥‥


だって何も相談なしに勝手に何処かに行ってしまうのだもの‥‥せめて私には手紙ではなく直接言って欲しかった。そしたら私もレオンと一緒に‥‥‥


———いいえ、もう過ぎた事。いくら想っていてもレオンは戻らない


ならば私も強く美しい女性になっていつかレオンに会った時に見返してやるんだから!


そう考えた3年前の私は、レオンが修行していたらしい近くの森で訓練しだした


最初はすごく怖かったわ。見たこともない魔獣がいるし変な植物は生えているしで大変だった。けど、皆と一緒に森を駆け回っていると自然に体も順応して楽しくなってきた


小さな魔獣を狩ったりして力を付けていた時、家の回覧板の張り紙を見つけ、そこには軍入隊試験が近々王都の軍本部で行われ年齢は13歳からと記されていた


私はこれだっ!と思った。やっと力を手に出来る環境が見つかったと思い、私は親を説得し皆で王都に向かった


王都の軍本部に着くと総勢数千人はいる人々。年齢性別はバラバラであまりにも多くて試験に合格できるか不安でしかなかったわ。それで到着するなり説明が行われた 


説明の内容としては将来、軍での立ち位置、即ち上位ランクが約束される。私はCランクな為この訓練場にいる同級生や年上よりも階級は上だろう。しかし、それでも合格するかはまた別。実践と訓練では違いすぎる


また合格発表は当日で決定する。魔法力、戦闘での評価を主に決める。合格すれば厳しい訓練と魔法座学、教官が精神的に物理的に追い込み自分たちを強く鍛えるという


そしてここからが重要な内容


まだ学園に通ってもいない18歳未満の少年少女は合格した次の日から軍の寮に住む。そして学園に進学する事も可能。学園に通いながら訓練を続けるという


学園に通うと言う事は将来、軍関係に属する者と言うことになる。学園を卒業しても軍に入隊しなくても良くそこは個人の自由。ただ、ほとんどの卒業生は軍に入隊、配属される


そして学園に通う前に軍に入隊し数年訓練していた訓練兵はランクも上がり精鋭エリティシタと呼ばれ小隊を一部隊受け持ち学園に入学する


しかし、そんな天才は稀で学園に入学する18歳までに軍の入隊試験で合格した者は数えるほどしか存在しない


例を挙げるとエミリア・ローマがその一人として有名。彼女は私達女性の軍人から見ても憧れの人物


そして合格できる者は毎年変わる。優秀な者が大勢いれば大勢とり、少なければ少数と変動する。人数は限定されないのが救いと言える



———そして試験を受けた結果、私達6人全員が合格する事ができた。同級生でしかも13歳の合格者が6人も出るのは史上初らしく、その日に私達6人は最強の世代と噂され周りからこう呼ばれるようになった



———六幻楼アルターナ———



どうしてこの意味を込めたかは分からない。だって私達が付けたんじゃなくて周

りが勝手に付けた名前だもの。別にそんな名前で言われようが同じ宿舎にいるのに理解できない。他のカメリア達も気にしていない様子だし私も気にしないようにしよう‥‥


そんな私たちは誰一人としてマルゲリータに帰らず寮生活で訓練を受けられる。これは軌跡なのかもしれない



———それから軍入隊を果たして2年と半年。私達は毎日訓練に座学に追われる日々を過ごしていた。今では16歳になり残り2年足らずで学園へと入学する


ここまで来るのに随分と時間が早く過ぎたと感じてしまう

毎日を訓練に費やしていて遊んでいた子供の頃とは世界が違っていた


一番驚いたのが魔法の種類の多さ。火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、光魔法、闇魔法、回復系魔法の八種類がこの世に存在している。この八種類を全て扱うのは不可能に近く、大抵が一種類の魔法を極める


一つの魔法の中でも下位と上位が存在し、二つや三つの魔法を下位で会得するよりも一つの上位魔法を会得した方が人個人の戦力は上でもある


また回復系魔法は回復魔法、治癒魔法、蘇生魔法の三種類が下位、中位、上位と別れている


回復魔法は状態以上などを回復させる魔法。治癒魔法は傷などを修復する魔法

そして蘇生魔法は人体などの損傷、肢体の切断箇所から蘇生する魔法。


そして一番有名なのが死人の蘇生。これは半日以内であれば死人を生き返らせる事ができる。しかし蘇生魔法には代償が必要。その代償が魔法を唱える術者の寿命。命を救う代わりに自身の命を犠牲にする


大神官様がこの魔法を習得しているけど代償があるので早々使用出来ないらしく、歴史の中で使用した人物は数人らしい


色々と覚える事が沢山ありすぎて頭がパンクしちゃいそうになる‥‥


これが大人に近づく感覚なの‥‥まあ、私はめげずにここまで頑張ってきた!


全てはみんなのため‥‥そしてレオンの為に!


———昔話はこの辺にしておくわ


今は訓練中、気をちらつかせないようにしなくちゃね!


「「「アザレア!休憩――!」」」


「はーい!」

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