アザレア達の日常 II


———皆が休憩の知らせを大声で教えてくれる。私は走っていた足を止め声の方へと歩いていく


休憩でもありお昼の時間。今日のお昼はカレーライス。スパイシーな匂いが鼻をくすぐり食欲をそそるわ。私はこの軍のカレーが大好き。辛いものが好きな私にはぴったりのお昼


「アザレアお疲れ!」


「はい。アザレア、貴方の分よ」


「ありがとう!ベラ!カメリア!」


私の親友であるベラとカメリア。ベラはロングの黒髪で紫色の瞳をしているとても明るくていつも笑顔を絶やさない。そして胸がとても大きい。私も胸には自信があるけどベラには敵いそうにない‥‥


そしてカメリアはミドルショートの茶髪に青い瞳で大人の雰囲気ある‥‥なんかもうお姉さん的な存在になりつつあるわ!同じ年なのにこうもお淑やかな女性はカメリアぐらいしか見たことがない。それほどにザ!大人の女性を漂わせているわね


「今日の訓練も一段と疲れるな。水を持ってきたぞ」


「ワルドス達もお疲れ〜!」


水を持ってきてくれたワルドスとコキン、テルも私達と同じマルゲリータの同級生


ワルドスは金髪でイケメン。年上年下全員から迫られるほどの美男イケメン。軍の女性は皆ワルドスの声を待っていると言ってもいいくらいね


コキンとテルは双子の兄弟。どちらも茶髪で黄土色の瞳。昔はあまり目立たなかったけど今では顔つきも変わりワルドスの次にイケメン兄弟と言われているわ


でも、3人ともイケメンと思うけど私はそこまで恋愛に発展するかといえば答えはno。だって私には随分前から片思いの想い人がいるから‥‥


でもその人は今ここにいない‥‥‥




———私は知ってる


彼の親が亡くなられてから彼はずっと一人だった。それでも彼は一日一日を懸命に必死に生きていた。彼が毎日のように森を出入りしている事も知っていた


そんな私は影から帰りを見守っていた。毎日身体中をボロボロにして帰ってくる彼。そんな彼を見ていられず心配して何度も声をかけた。心配していくにつれて夕食を作りに行ったり、遊びに誘ったりもした。夕食は美味しそうに食べてくれたけど決して遊びには来なかった


それでも私は満足だった。遊べなくても彼の為に食事を作ることがいつしか楽しくなっていた


彼はそんな私に『もう来なくてもいい』と言ってきたけど私は諦めずに週に三度は彼の家にお邪魔したわ


あの時はすごく楽しかった。まるで夫婦みたいに過ごしていた記憶



私の大切な思い出 



しかしそんな日々も徐々に年齢が上がるにつれて変わっていってしまった

まだ5、6歳の時は男性の家に行く事に躊躇いはなかった。けど8歳、9歳になるにつれて周りの女友達と遊ぶことが増え彼の家には行かなくなっていた


彼は私が来なくなった事で喜んでいるのか悲しんでいるのか分からない。それでも私は彼から遠ざかり一人にしてしまった後悔がある。それが今でも心の中で何度も悔いている記憶


そしてレオンは突然旅立ってしまった。私達に愛想をついてしまったのか分からない


それでも私はレオンに謝りたい


学園で会おうと置き手紙を残して旅立ってしまったレオン。次に会うのは学園

それまで私は女としてもっと強く、誰もが羨む美貌を手に入れレオンを見返す!



それが今の目標でもあり私の決意!



フゥ。少し物思いに耽ってしまったわね


———あ、このお水とても美味しい。喉に冷たい水が流れ込んでくるのがわかる。この感覚が癖になるわ!


「———それより今年が何の年かわかるか?」


「何の年?いいえ、知らないわ」


6人でカレーを食べながらワルドスが不意に変なことを聞いてきた。一体何を言いたいのか全く分からない


「今年はな4年に1度の五種族会談が行われる年だ。そして今年の会談場所は魔族国だと」


「五種族会談?確かにそんなのがあったわね。訓練ですっかり忘れていたわ」


「そういえばそんなのがありましたね!」


「ベラぁ?そんなのとは言ってはいけないわ。とても大事な会談よ」


「はーい」


ほんとベラとカメリアは姉妹のように思う。こんな会話を何度も見てきた私は昔のレオンを思い出してしまう


いけない、今は目の前の目標に集中しなくちゃ


「それで私達と何の関係が?」


「別に何もないが、一応聞いて見ただけだが?もしかしたら護衛で任に就くかもしれないぜ?」


「「「それは無い」」」


「——なっ!ひどいなぁ」


ワルドス以外の5人全員に同じ言葉を突きつけられ落ち込むイケメン。普通に考えて私たちのような子供が護衛なんてしたら他国に舐められてしまう。最近は戦争の話題が上がってこないが数年前まで紛争が起こっていた


どこの国も火花が散っていて、いつ引火してもおかしく無い状況にある


「まあ、俺たちはこの2年と半年でCランクからBランクまで上がったが護衛は無理だな。せめて本部の護衛だ」


「兄貴の言う通りだな。一様俺たちも訓練生でありながら他の訓練生を指揮する小隊長にまで階級が上がったが無理だな」


コキンとテルの言う通り。私たち六幻楼アルターナはCランクからBランクまでこの2年と半年で階級が上がった。まず持って普通の訓練生はEやFランクからスタートする。これは全階級制定協会で決まっている階級制度


そして私たちは13歳にしてCランクの称号を得ていてこの時から周りの13歳とはかけ離れていた存在でもあった


そして2年と半年でBランクの称号。訓練性がたったの2年と半年で一つ階級が上がるなど前代未聞と言われていた。軍人が一つ階級を上げるのに最低でも3年または5年の月日が必要になる。それも階級が上がるに連れて難しくなっていく。


ほとんどの軍人はBランクまでで一生を終えるものが大半を占め、Aランクからは別世界と軍内部で言われ格付けされる。


Sランクからは難易度が抜群に上がるけどSランクに人数は制限がされていない。Sランクが増える一方でSSランクにまで昇る者は一握りの超人並みの肉体と頭脳、魔法力を持つ天才。それ程までにSランクとSSランクの壁が遥か上空に位置している


SSランクは各国に三名だけしか存在を許されていない。SランクからSSランクに昇格する為にはSSランクの一人を実践で倒さなくてはならない


挑む者は本当の天才か自信過剰の愚か者のどちらかと言われ、ほとんどの者は挑もうとしない


しかしエミリア・ローマそしてパエーゼ・プレチーゾ総司令のような一握りの存在がいることもまた事実


二人の年齢は二十代後半らしいけど、二十代後半でSSランクまで昇り詰めた異才のエミリア・ローマ


可視化できる魔力ヴィズアリタを持ち世界の5人選ばれし者セレツィオナートの一人であるパエーゼ・プレチーゾ総司令。彼女達は女性軍人からしてみれば神のような存在


天上に住み私達をを見下ろす創造主のよう‥‥


そして3年前の厄災の片鱗でお会いしたディア・ロンバルさん。彼女も若く二十歳になった時にAランクを取得したと言っていたわ


この前に本部で会って昔の事を色々と聞いたの! 


そして私たちはここまで来て小隊長にまで任命され6人の一人ずつに20名ほどの部下を受け持つ事になった。

部下のほとんどが年上だからとても対応に困ったわ


少しでも気を緩くすると敬語になってしまい、相手も戸惑ってしまう‥‥


それでも昨年、一昨年と後輩が6人入隊してきた。男女半々の私達六幻楼アルターナと同じ

とても優秀で学園に入る前の十代にしては私達に継ぐ天才達。それでも私達の名声が高過ぎて彼ら天才達でも越す事が出来ない。今では私達のそれぞれの隊に配属されている


あと名前は今度教えるわ!


それと軍は完全に階級が全て、年上、年下なんて関係ない。下に就きたくなければ階級を挙げろと言う感じ。

最初は十代の私達の下に就く事が不満だった部下達も今ではすっかり上司と部下の関係


次第に私達を認めてくれて隊長と呼んでくれるようになったわ!


隊長と言われるのは少し照れるけど、これくらいで気を抜いては目標になんて届かない‥‥


「——隊長達〜!休憩終了です!」


「「「 了解 」」」


私たちはもっと高みを目指している


誰にも負けない強い女性に‥‥やがてはオリジナル魔法を‥‥


その為に日々辛い訓練に魔法座学を叩き込み、約束の時まで踠き続ける

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