我ら月下香
———猛獣の如く睨みつける女王が俺とリコリスの間へと割り込む
「———これは女王陛下。このような事態になってしまって申し訳ない。あの魔法の前でただ突っ立っていては死んでしまう所でしたので、理解してほしい」
「———なぜこの獣武祭に出場したっ?狙いは何だ?」
「何もしない。ただ立ち寄った先に面白い事があったので寄ったに過ぎない。それにもうお開きだ。観客も逃げ、これでは獣武祭の表彰式もできないな」
そこへ丁度よく俺と女王の間にローブを着用し仮面を嵌めた三人組が観客席から飛んで来た。
その仮面の中の一人が呟き、
「———ネロ様お怪我は」
「問題ない。それよりも‥‥良いタイミングだ」
割り込んで来た三人組に一層警戒を強め、身を構える女王
入れ違いのように女王の背後から軍が突入してきた
俺は突入してきた軍を視線に抑える
「これは随分と多い客だな。しかしそいつらが幾ら集まろうが有象無象だ」
「貴様にしてみればそうだろうな‥‥だが、私はそうもいかんぞ?それでどうする?逃げるのか?それとも我々と戦うか?」
女王は随分と物騒なことを聞いてくる
って言うかこうなるなんて誰が予想してた
あんな魔法をもろに受ければ俺だって流石に死ぬ。
仕方なく、仕方なく‥‥ほんの少し魔力を解放しただけなのに
悪いのはそこにへたり込んでいるリコリス王女だと思うのだがな‥‥いや、それは違うな。
戦いに悪も善も関係ない。まあ、人生そんなものだな
「争いはなしだ。もっと重要な事があるのでな。話はこれまで、帰らせてもらう———」
「———貴様どうやって逃げると言うのだ?軍に囲まれている状態でっ!」
———やれっ
女王が軍に攻撃命令を下す。現在この闘技場にいる軍人の総数は1000を優に超えている
その1000の兵が一斉に魔法陣を展開させ、俺たちに向かって放出した
迫りくる何千もの魔法。そんな中で仮面の一人が退屈そうに話す
「———主よ、ここは我が受け持とう。このような雑魚が魔法を何十も何百も何千も唱えたところで我には届かんことを教えよう」
仮面の一人は腕を顔程度まで掲げ、親指と中指を重ねて、
———パチン
「———つまらん」
彼女が指を鳴らした刹那、何千もの魔法を一瞬で消滅させた
「———な!馬鹿なっ!」
「我々の魔法が一瞬で?!」
「1000にもなる魔法をっ!?」
「ありえないっ!?」
「化け物だ‥‥」
「ああ‥‥化け物だっもう‥‥終わりだ」
何千もの魔法をヴァルネラが掻き消し、軍のほとんどの者は戦意を喪失する
次の魔法を唱える者は誰一人として居なくなってしまった
「———なっ!まだ、化け物がいると言うのかっ!一体、貴様らは何を求めている?!」
———この化け物の集団が一体、なぜ今動き出すのか‥‥なぜ超越した力を持ち合わせているのか‥‥なぜその力がありながら今まで表舞台に姿を表さなかったのか‥‥
(わかることは確実に‥‥歴史が、世界が動いていること。我々は隅で巻き込まれているのに過ぎないのか‥‥!?)
女王はこの状況にも関わらず意味を見出していた
———大昔の大戦後、歴史が、そして世界が動き出したと伝えられてから5000年。それまで大きな戦争や神による厄災は起こり得なかった
(‥‥また動き出すと言うのか。戦争が始まるとでも言うのか‥‥)
考えていてもその答えは永久にわからない
なぜならその結末は彼に託されているのだから
彼の計画とは。そして何を成し遂げるのか
それはこれから思い知るだろう
「———何を求めるだと?俺だってまだ分からん。ただ‥‥このままでは世界が破滅へ進むのは確かだ‥‥」
俺が話し終えると足元に魔法陣が展開された。丁度俺たち四人を囲うようなサイズで、
そして女王は何かを仕掛けると勘繰りだす
「なんだその魔法は‥‥それに世界の破滅だと、なぜそれを貴様は知っている?」
「———答えるわけがないだろう。しかし一つ耳寄りの情報を伝えよう、今展開している魔法の名は”転移魔法”だ」
瞬間、魔法陣が神々しく輝き、闘技場全体を包み込んだ
あまりの眩しさに女王並びに兵士等が目を瞑る
「———転移魔法だとっ!やはり貴様はっ!」
女王は目を瞑りながらでもレオン達の気配を感じとる
そして最後に腹の底から叫んだ
「貴様らは、何者だっ!!」
女王からの最後の叫びを聞いて、俺は輝き続ける魔法陣の中で考えた
(そういえば俺たちの組織名を決めていなかった‥‥やばいそろそろ魔法が作動してしまう。こんな中途半端でなんてかっこ悪い‥‥何か何か良い名前はないのか!)
魔法陣の輝きが俺達すらも包見込み、閃光を発した
今にも消えそうな俺だがギリギリのとこで言葉を発する
悩みに悩んだ結果‥‥
俺たちは‥‥
———
その瞬間、俺達の姿が跡形も無く消失した
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