五章 血脈の奪還
消失
———その瞬間レオン達の姿が跡形も無く消失した
「消えたっ!?」
「何処にいる?!」
「探せっ!辺りをくまなく探せっ!」
レオン達が一瞬にして光と共に消え、兵達は辺りを見渡す。しかしレオン達の姿を探すが周りは軍人のみ。
女王以外何故、姿を消したのかが分からず全員が混乱していた
「———女王陛下っ!一体何が起こったのですか?!あの者達は何処へ消えたのです?!」
闘技場へ居合わせた軍隊長が女王に問い掛ける
しかし、女王はバツが悪そうに思い口を開くだけだった
「何処へ、消えた‥‥か。さあな、妾も何処へ消えたか分からぬ。分かる事、それはあの者達は転移という魔法を使った。それは5000年前の魔法だ。今はそんな馬鹿げた魔法を使用出来る者は存在せん。目の前で消えた奴以外はな‥‥っ」
「そ、それではあの者達は大戦後、5000年間生きていたという事ですかっ?!」
「そんなわけあるかっ5000年など長生きで片付けられる言葉ではない。妾も5000年前の魔法など軍機密事項の禁書以外で初めて見たわっ!」
悪態を吐いた後、女王は闘技場の応援席を見渡す
「あいにく観客は‥‥‥もういないようだからな。好都合だ。今回の件は後に軍会議で話し合う。それと‥‥‥闘技場の修復を急げっ!」
「「「———はっ!!」」」
女王が号令を下し兵士たちは一斉に闘技場の修復を開始する
修復に取り掛かる兵たちを確認するとすぐにリコリスの元に駆け寄る
先程までへたり込み恐怖していたリコリスは見るからに、落ち着きを取り戻していた
「リコリスもう大丈夫だ。心配いらない」
「ありがとうございます、お母様。もう立てます。申し訳ありません、相手を侮っていました‥‥」
「良い。今回は運が悪かった。真正面で対峙したお前は妾の誇りだ。何も気に止むことはない」
女王はリコリスを勇気付けようと励ます。しかし当の本人は複雑な心境だった
とても恐怖し、初めて死を実感したリコリス。体全身から力が抜け、立てなくなっていた
魔法が呑み返された瞬間に感じるレベルの違う魔力。
いいや、レベルが違うなんて代物ではない。
次元が違いすぎた。
肌に感じた濃密なまでの魔力。脳を、目を刺激する高揚な輝き。体が押し潰されそうな圧。
しかし不思議なことにリコリスの心は恐怖だけでは無かった
レオンの魔法を見た時。レオンの
体は恐怖し足が竦み涙を流すにもかかわらず、心は美しいと無意識に感じてしまった。リコリスは自分自身がわからなかった
体と心が別々の感覚。自分の体ではないという錯覚
しかし、どちらもリコリス本人の意思に委ねられる
体で心で、もがき苦しむリコリス。中身が一杯になり破裂しそうな精神の中でももがき苦む‥‥‥
結果、リコリスの意思は”美しさ”が勝利した
どれほどの恐怖や戦慄、死を覚悟するほどの悪寒。それらを経験した者にしか分からない感情
人は死を覚悟したら美しい思い出や、掛け替えのない思い出を浮かべてしまう現象
そしてリコリスの場合はレオンの魔力を死の間際に思い浮かべてしまった‥‥‥
(———あの魔力を間近で見てしまえば見惚れてしまう‥‥)
最後へたれているリコリスは惚けてしまっていた
口では拒絶したリコリスだが、近くまで来たレオンを体は拒否しなかった
そんな中レオンはリコリスの頭を優しく撫でた。
リコリスの女の本能が初めて芽を出した瞬間だった
これは恋なのかそれとも恐怖からの脈動なのかリコリス自身はまだ分からない
それでもわずかに頬を赤く染めていた事は誰が見てもわかってしまった事だろう
後に女王に治療を勧められたリコリスは闘技場を後にした
◊◊◊
———とある宿屋の最上階の一室
真っ暗な一室にて眩い光が輝いた。その光は瞬時に輝きを失くし、真っ暗な一室に四つの人影が現れる
「やはりこの魔法は便利だな。魔力消費は莫大だがいざという時助けられる」
ここは俺たちが泊まっている宿屋の自室。先程までいた闘技場から転移してきたのだ
「はっはっは!主の魔法は本当に面白い!」
「何を笑っているのですヴァルネラ様。ハァ‥‥今頃闘技場の周辺は混乱しているわね」
「だろうな、一応変装はしていたから外へ出歩いてもバレる事はないだろうが、
ここもやる事やったら出ていくか」
俺は自身のベッドに座り込みボロボロの服と仮面を脱ぎだす
そして再度身体を確かめる
(うん。大丈夫だな。火傷の跡がない)
傷跡を確認しているとファシーノが神妙な面持ちで詰め寄ってきた
「‥‥それで、動くのは今夜ね?」
「ああ、そうだ‥‥それまで各自自由でいい。俺が合図を出したら来い」
「「「———了解」」」
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