4、誕生日と?

第13話 熊のキーホルダー

長嶺五十鈴という女の子に告白された。

清楚系美少女からの告白なのに.....何故か頭に義妹の事が浮かび、告白の事は保留にしてもらい。

俺は義妹との合流に至る。

義妹は不愉快そうな目で俺を見てくる。


「デートじゃないもん」


「何時まで言うつもりだお前よ.....」


「アンタとデートなんてしてないもん」


「しつこいぞオイ」


と、とにかく!

行くよ、と俺の手を握る結。

何だってんだ全く.....と思いながら歩くと。

途中で結が俺に向いてきた。


「御免ね」


「.....何がだ。いきなり薄気味の悪い事を言うな」


「殺すわよアンタ。.....リア充の件。.....友彦君とか」


「.....ああ。それか。気にしてない。俺は所詮.....裏だからな」


しかしながらあんなにいっぱい変でも友達が居たんだな。

俺は.....結を思いながら見る。

結は少しだけ申し訳なさそうな顔をしている。

俺は溜息を吐いた。


「結。気にし過ぎだ。俺は大丈夫だから」


「.....でもあの子達.....小虎を馬鹿にしたから言っておいた」


「.....そうなのか?そりゃ有難い」


「.....だってアンタは.....いい兄貴だからね」


そんな事を言われるとは思わなかった。

それもまた口が滑ったのかと思ったが.....違うようだ。

俺に満面の笑みを浮かべながら、だから。

もう一度溜息を吐いた。


「.....そう言われるとは思って無かった」


「.....そう?.....ん.....」


突然、結の体がゾクゾクという感じで震えた。

俺は?を浮かべて目をパチクリする。

結は、あ。何でもないから.....!、と否定する。


そして、ちょっとお手洗いに行く、と大慌てで駆け出して行った。

慌てて去って行った結を首を傾げて見送ってから下を見る。

なんか.....真新しい液体のシミが有.....るんだが.....。

あのバカまさか!?


「.....結.....アイツまさかローターを仕込んでいるんじゃ.....ないだろうな?」


それで股間に挿入していると?

あのクソ野郎.....。

せっかく良い感じで話していたのに.....結局は変態か.....。

俺は額に手を添えながら近くの100均のお店を見る。

そして頭を掻きながら入った。


「.....ん?」


「.....あれ。矢吹君」


「.....何だお前。何している?」


そこには変態の小倉が.....じゃない。

クラス委員の小倉由紀が居た。

お出かけの服装で可愛らしい服装で、だ。

しかしコイツ.....。


「.....何しているんですか?」


「お前もこんな場所で何をしている」


「私はハリセンを探しています」


「.....は?何に使うんだよ」


勿論、私のお尻を叩きます。

と満面の笑顔でとんでもない事を言いだした。

俺は見開いて、は?、と聞き返す。

ヤバイコイツ。

結構来ているのか?


「結構ゾクゾクしますよ。そういうの」


「死ねよお前.....」


「死ねとは失礼ですね。変態の醍醐味です」


何で俺のクラスにはこんな奴が居るんだ。

俺は盛大に何度目かも分からない溜息を吐きながら。

額に手を添える。

そして、まあいいやじゃあな、と去ろうとした、のだが。

小倉に背中を捕まれた。


「貴方は何をしているですか?暇ですか?付き合って下さい」


「馬鹿野郎かお前は死ねよ。暇じゃない」


「.....暇では無いとなると何をしているのですか?」


「あー.....まあお使い的な」


そうですか。

それは残念ですね。

貴方をこき使おうと思ったのですが、とその手を放す。

コイツ馬鹿なの?本当に。

人を何だと思ってんだ。


「じゃあさようなら。用は済みましたので」


「お前.....裏表あり過ぎだろ」


「.....使えない人と何時までも話しても仕方が無いです」


「おま.....まあ良いけど.....」


コイツ本当にゴミ屑だな。

俺は.....頭をボリボリ掻きながら。

そのまま100均であまり何も見ないまま。

外に出た。

そして.....目の前を見ると結が居た。


「お待たせ」


「.....お、おう」


「.....どうしたの?」


「別に何でもない。行くぞ」


変態の義妹を持つと本当に大変だな。

思いつつ俺は歩き出す。

次何処行くんだ、と聞く。

すると予想外の返事があった。


「.....小虎のお母さんのお墓の場所に行きたい」


「.....は?何でいきなり」


「.....だって.....もうこの場所に用は無いからね。だから最後に挨拶をしたい」


「.....」


ニコッとする結。

俺は.....その姿に苦笑する。

全くな.....。

と思いながら、だ。

そして俺達はショッピングセンターを後にしてから歩き出した。


「ところでお前.....何をしていた」


「.....え?何が」


「.....慌ててトイレに何故行った」


「え?何が?」


キョトンとする結。

駄目だなこれ。

期待する回答は得られそうにない。


すっとぼけているから、だ。

俺は額に手を添えながら、もういい、と答える。

これで隠し通せると思ってんのかコイツは。

俺は威圧する様な笑みを浮かべてくる結を見た。


「私は何もしてないよ?アハハ」


「.....そうですか」


「アハハ」


俺の腕に手を絡ませてくる結。

そして俺に笑みを浮かべる。

楽しげに、だ。

変態の義妹を持つと大変だな.....本当に。

思いつつ俺達はお墓がある場所まで行き始めた。



「.....相変わらずの景色かな」


「.....まあ確かにな。あの頃と何も変わらない」


寺の中にあるお墓。

そこに俺の母さんは眠っている。

俺は.....墓に刻まれた、矢吹家、を見つつ。


桶から水をすくってかける。

晴れ渡る空。

風が強いので水が少しだけ飛んでいく。


「でも本当にいきなりだよな。どうしたんだよ」


「.....久々に会いたかったから」


「.....?」


「.....それに報告しに来たかったんだ。小虎と少し仲が良くなったよ、って」


俺と仲が良くなった事を?

何というか.....その程度で?と思ってしまったが。

よほど嬉しかったのだろうな。

ニコッとしながら手を合わせている。


「小虎を守ります。頑張って私」


「.....そこまで深刻になる必要無いんだが.....」


「アハハ。おまじないだよ」


「.....そうですか.....」


まあ勝手にしてくれ。

取り敢えずは.....母さんも喜ぶだろうしな。

思いつつ俺は目の前のお墓を見る。

それから.....手を合わせた。

そうしていると。


「小虎」


「.....何だ」


「.....有難う。来させてくれて」


「お前が望んだんだからな。それに止める理由がないしな」


アハハ、だね。

と柔和な感じを見せる結。

俺はそれに少しだけ笑みを浮かべて目の前の景色を見る。

景色は左右に少しだけ激しく揺らぎながらも.....俺達を歓迎している様だった。


「今日は景色が少しだけ荒れてるね」


「.....だな」


「.....実は今日は私のお誕生日プレゼントを買ってほしかったんだけど」


「.....」


アピールに気付いてほしかったな、と苦笑いする結。

だろうとは思ったけど。

俺は溜息を何十回目か吐きながら。

ポケットからそれを出した。

それは.....プレゼントだ。


「.....え?これ.....」


「お前へのプレゼント。念の為に本屋に行く前に買ったら.....良かったよ。そう言われて」


「.....え?本当に?」


「.....些細なもので申し訳無いけどな」


白の袋に入ったプレゼントを渡す俺。

そして慌てて開ける結。

中には.....熊のキーホルダー。

結は目をパチクリした。


「.....熊のキーホルダーって。アハ、アハハ!嬉しい!」


「.....馬鹿にしているのか嬉しいのかどっちなのか分からん.....」


「アハハ。とても嬉しいかなって。感想が下手糞でゴメン」


「.....そいつは結構だ」


これ凄い嬉しい。

大切にするね。

とキーホルダーを胸に押し当てる結。


俺は少しだけ口角を上げて、そうか、と返事をした。

本当に嬉しそうなその姿に。

俺も.....少しだけ嬉しくなった。

こんなに大切にする様な姿を見せられると俺もあげて良かったと感じる。


「.....誕生日おめでとうな。結」


「有難う。小虎。色々あったけど.....ね」


そして結は16歳になった。

こんな変態でも16歳になる。

俺はその姿を見ながら。


成長していく姿に何だか.....感慨深くなった。

風も、良かったね、と表現する様に吹き。

母さんも、良かったね、と表現する様に空に木の葉が舞った。

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