第12話 告白の返事

まあ.....この世には色々な人が居るとは思う。

だけどまさかリア充が俺の義妹を好いているとは思ってなかった。

でも俺の義妹は恐らく俺にしか向いてない変態だと思う。


だから何とも言えないんだが.....。

何というか、と思いながら俺はショッピングモール内の本屋に来た。

そして見掛けた人を見て驚愕する。


「.....お前.....」


「あれ?矢吹君」


「まさかと思うが書店の店員なのか?」


やって来ると何故かエプロンをした長嶺が居た。

長嶺五十鈴だ。

驚きながらも非常に嬉しそうな感じで、うん、と頷き笑みを柔和に浮かべる。

そしてゆっくりと立ち上がり俺を改めて見てきた。

長嶺が聞いてくる。


「ここに来たって事は本読むの?何の本?」


「んー。.....正直に話すと.....ドン引きされるかも知れないが」


「.....ドン引きしないよ。全然大丈夫.....あれ?それはそうと義妹ちゃんは?」


「.....今は席を外している。.....だからラノベ買いに来た」


義妹ちゃん席を外しているんだね。

それにしても、ん?ラノベ?.....あ!らいとのべるだね!

と目を輝かせる長嶺。

俺は?を浮かべて長嶺をパチクリで見る。

すると長嶺は、どんなラノベ?、と目を輝かせた。


「.....え、ちょ。何だお前?.....ラノベが好きなのか?」


「うん。気が合うね。.....長嶺ちゃんはラノベがとっても大好きです。ワクワクしますよ」


「.....そうなのか。そいつは嬉しいな。俺も好きなんだけどな。非リアだし」


「アハハ。非リアとは思えないけどな?矢吹君。.....それにリア充の人も好きな人は好きなんじゃない?」


俺は見開きながら長嶺を見る。

長嶺は、エヘヘ。でも嬉しいな。こんな場所に来てくれたんだ、と頬を掻く。

俺は少しだけ恥じらいながら.....長嶺を見る。

すると長嶺は、ラノベコーナーはこっちだよ、と案内してくれた。


「私は.....色々なラノベを読むよ。例えば.....爆死したラノベも。打ち切りも」


「表現が失礼過ぎるだろ。遠慮しながら話した方が.....」


「アハハ。だね。でもそのそれらも含めて家に.....1000冊ぐらいラノベが有るので.....オススメも色々あるよ。打ち切りでも面白いものは面白いしね」


と言いながらケラケラと楽しく話す長嶺。

清楚ながらも相変わらず美少女だな、と思う。

こんな少女と付き合えたらそりゃ嬉しいだろうな。


告白もされたし準備は万端だが。

でも.....と思う。

俺は歩きながら長嶺を見る。


「お前がラノベ好きとはな。ビックリだ」


「私はラノベ愛だからね。アハハ。でも君も好きとは思わなかったから嬉しい」


「そうだな。友人の勧めで嵌ったもんだし」


「うんうん。そうだよね。殆どがそんな感じだよね」


ラノベって良いよね。

世界観が本当に広がるから。

作者の愛が伝わって来るし絵も可愛いし。

と長嶺は俺に説明する。

確かにな。


「.....長嶺はどういうジャンルが好きなんだ」


「私は異世界じゃないタイプの現代ファンタジーかな」


「そうか。気が合うな。俺も現代ファンタジーが好きだな」


「そうなんだ。一緒だね。嬉しいな」


すると長嶺は奥の方にやって来た。

俺は見上げてみる。

ラノベコーナーはここか?と思ったのだが突然、長嶺が俺に接近してきた。

此処は人が居ないからね、と言う。

え?


「.....その、もし良かったらラノベコーナーに案内する前にお返事が聞きたい。.....私」


「返事?何の.....ってまさか」


「うん。私と付き合えるかな?ってお返事」


ニコッとしながら俺を見てくる長嶺。

赤面してしまった。

可愛らしいその笑みに、だ。

俺は.....下唇を舐める。


「.....長嶺。保留にしても良いか。ちょっと色々忙しくてな」


「.....保留?それは.....回答保留?」


「.....ああ。すまないが.....」


「.....良いよ。全然いいよ。私、待ってる」


長嶺は歯を見せて笑った。

すると、あ。そういえば靴紐が解けてるよ、と指摘された。

え?靴紐がか?と思って直ぐに下を見下ろすと。

頬にキスをされた。

俺はバッと顔を上げる。


「なっっ!?お前!!!!?」


「エへへ。女の子の前で隙を見せたね。それが悪い」


「ちょっと待ってくれよ.....勘弁してくれ.....」


この奥はそんなに人が来ないからね。

と笑顔を見せる長嶺。

それから私は.....君が好きだから。

だから諦めないから。

と俺の手を優しく握る。


「.....えっと.....長嶺。お前はなんで俺が好きなんだ?」


「.....君は私を助けた。.....だからその時から好きなんだよ」


「え?俺が.....救った?一体.....何からだ?」


「.....え?覚えてないの?イジメっ子からだよ。小学校時代の」


だから君が好き、と俺にはにかむ少女。

俺は顎に手を添えるが.....思い出せるのは俺が小学校時代に長嶺をイジメていたイジメっ子を仮にも追い払っただけだ。


ただ一度っきりでそれだけなのだが.....。

イジメは無くならなかったしな。

それで俺が長嶺に好かれるのか?

長嶺は赤くなりながら俺を見てくる。


「.....俺は.....まるで蚊を追い払うような事しか.....一回限りで頻繁に追い払ったとかしてないんだが.....それだけで惚れたのか?」


「.....私は嬉しかった。君が追い払ってくれた事。たったそれだけでも女の子は惚れてしまう人も居るんだよ」


「.....!」


さて、じゃあ戻ろうかな。

と用事が済んだ様に歩き出す長嶺。

っていうか本当のラノベコーナーは何処だ?

と思ったが考えが纏まらなかった。

何故かと言えばキスをされたから、だ。


「ラノベコーナーはあっちだよ。本当のね」


「反対か。成程な」


「.....ねえ」


「.....何だ?」


かなり心臓がバクバクする。

俺は動揺を打ち消しながら長嶺を赤面で見つめる。

長嶺も恥ずかしいとは思っているのだろうけど抑えながらだろう。

穏やかな顔で俺を見てきた。

そして.....そのうち家に行っても良いかな、と言葉を発する。


「.....え?あ。それは.....えっと.....」


「嫌なら止めとくよ。アハハ」


「.....少しだけ考えさせてくれ。すまない」


「全然構わないよ。君の答えを何時までも.....待っているからね」


大切な質問なのに。

だけど何でこんな時に義妹の困惑した顔が過るのか。

考えながら俺は長嶺を見た。

こんな時に出て来るとは.....全くな。

考えながら俺は長嶺を改めて見つめる。


「.....長嶺」


「何?」


「嬉しかった。お前が告白してくれて。本当に心が高ぶるぐらい。だけど俺.....今は将来を見つめたいから」


そんなウソをよく吐けるもんだ。

長嶺に申し訳ないと思ったが.....長嶺は頷いた。

そして.....待ってる。

と呟いてニコニコしながら俺の手を握ってから離した。


「また今度ね」


「.....ああ」


鼻歌交じりに去って行く長嶺。

見送ってから別れるとピコンと音が鳴った。

俺は?を浮かべてメッセージの入ったスマホを見る。

そこには義妹のメッセージが入っていた。

怒ったような感じの、だ。


(小虎。へらへらしない。私だけ見ていて)


(お前.....まさか.....)


(何の事だか?ふーんだ)


コイツ.....監視していたな!!!!!

どうやったか知らんが!

っていうかリア充はどうしたんだよ!

俺は盛大に溜息を吐きながら。

スマホを爪で打つ様に必死にガツガツ打った。


(ケイとミッチーと友彦君なら別れた。デートの途中だもん)


(.....今、デートっつったな?明らかに)


デートっつったぞコイツ。

打ってからスマホにメッセージが来なくなった。

コイツ絶対に失言したな?


間違いなく、だ。

まあいい。

とにかく、だ。


(このまま合流するか?)


(.....そうだね)


(.....あのさ。恥ずかしいんだけど俺も)


これに対して、デートじゃ無いから、とメッセージ。

全然話が繋がって無い。

動揺してるのか?

いやコイツ間違いなく動揺してやがるな。

俺は額に手を添えながら.....そのまま本屋を出た。

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