第10話 結と小虎の過去.....と?
思えば結はそれなりにねじ曲がった過去を経験している。
俺の場合はそうでも無かったが結の親父は愛人を作って出て行った。
そんな事をする事が信じられないが.....そのせいとかで多分だが.....結は俺に対して拒絶反応を示したのかも知れない。
俺に対して惚れた?のか定かではない感情は何故だか分からないが。
そのうち明らかになっていくだろうとは思うけど。
今は見守る事しか出来ない。
でも着実に一歩ずつでも.....今が変わればいいかなって思う。
「にしても荷物が重いんだが.....」
「兄でしょ。頑張りなさい」
「荷物を全部.....兄貴に持たせるのは如何なものかな」
「大丈夫。頑張って」
フードコート近くの2階に有るベンチに腰掛けて。
俺は笑みを浮かべている結の横で盛大に溜息を吐いていた。
何でこんな目に遭っているのか。
と考えながら、だ。
「でも今日は有難う」
「.....何がだ」
「付き合ってくれて。嬉しい」
「俺は強制されたけどな。半分」
それでも付き合ってくれたじゃない。
と笑みを浮かべる結。
俺はその姿に、まあそうだな、と苦笑する。
そしてボーッとしていると。
「結さん?」
と声がした。
俺は顔を上げながら声のした方向を見る。
そこには.....顔立ちが整ったコーチジャケット的なもんを身に着けてのリア充っぽい男と。
顔立ちが整っているのか分からないがニット帽を被った様なファッションもかなりのモデルを意識した様なリア充っぽい女子と。
大きな眼鏡をファッションに身に着けた同じく何かを参考にしたコーデをした化粧したケバイ感じの女子が合わせて3人居た。
それぞれは俺と結を見る。
目を丸くしながら、だ。
何だ.....コイツら?
「あ.....友彦くん」
「久々だね。.....どうしたの?買い物?」
そっちの冴えない奴と?、と。
言葉を発する、友彦くんとやら。
余計なお世話だな。
確かに目は腐っているが。
思いながら.....居ると。
「ねぇねぇ。結。引っ越したの此処だったんだね。買い物しようよ」
「.....そうだね.....」
「そうそう。久々だし」
冴えない男は置いておいてさ、と笑顔を見せる金髪女と茶髪女。
まあいつも通りの扱いだな。
思いつつ息を吐きながら.....真正面を見ていると。
結が立ち上がって声を発した。
「でもその、冴えない男ってのは嫌いかも」
「.....!?.....結?」
「さっきから失礼だよね。私の義兄だから。これでも。だから冴えないってのは止めて」
まさかのキツイ返事だった。
俺は驚愕しながら目をパチクリして結を見る。
結は眉を顰めていた。
そして俺の手を握ってそのままその場を立ち去る。
「お、おい。結.....良いのか?」
「良い。あんな事を言うのならいくら友達でも関わりたくない」
「.....何でそこまで.....」
私は義兄を守る為にやっただけだから。
と少しだけ赤面しながら俺を一瞥して前に向いた。
俺はその姿に、そうか、と返事をする。
何だか知らないが少しだけでも変わったなコイツ。
「私は.....家族を馬鹿にされるのは心底気に入らない」
「.....成程な。ちょっとビックリした」
「ビックリしたの?.....普通そうじゃない?馬鹿にされるのが嫌いじゃない?」
「.....俺は慣れているんだろうな。多分。母さんが居ないから.....父親だけと馬鹿にされていた時代もあったから。授業参観で父さんばっかりが来るとか家族が来ないとかで馬鹿にされたりした」
結の足が止まる。
そして俺を.....見つめてくる。
俺は.....過去の事を思い出した。
母さんが自殺してからの日々の事を、だ。
案外.....自殺すると自分だけで済むと思っている人が多いかも知れない。
だけどそうじゃないのだ。
家族は苦しみ続ける。
例えば自殺に電車を使えば損害賠償が請求される。
例えば自殺すれば周りの人が損失感でうつ病になったりする。
例えば自殺すればその周りが噂でもちきりになる。
そういう事だ。
だから.....自殺すればそれで良いってもんじゃない。
周りの人達も被害を被るのだ。
死んで逃げるのは一番最悪のパターンだ。
どんなに苦しんでも自殺はいけないのである。
「.....小虎のお母さんは自殺したんだよね。産後鬱だっけ」
「.....そうだな。案外、母さんが居ないと冷たいもんだ。周りって」
「.....私もお父さんが浮気してから.....散々な目に遭った」
「.....そうか」
だから馬鹿にされたのも慣れているけど。
っていうか、案外冷たいよね。周りの反応。
と少しだけ.....悔しそうな顔をする結。
俺の手を握っているがその手が震える。
そんな手を見ながら俺は前を見る。
周りは家族連ればかりだ。
幸せそうな、だ。
「それでも私.....今が幸せだから。だから馬鹿にされるのは気に食わない」
「.....成程な。お前の意見も確かに筋が通っている」
でも例え幸せでも、と歯を食いしばる。
そして手を放した結。
俺は握られていた手を見ながら.....結を見る。
結は.....涙を浮かべている様に見える。
「.....もう戻れないけど一緒に居たかった。どんな形であれお父さんと一緒に。お父さんって呼びたかったのに。なのにお父さんは捨てて行った。私もお母さんも」
「.....結」
「.....悔しい。こんな形で.....終わりがきたのが」
ぐしぐしと涙を拭う。
そして、でも愛しい人が出来た、と笑みを浮かべた。
っていうか、オイ。
今告白しなかったか?
俺は驚愕しながら結を見る。
結は.....かあぁっと赤面していった。
そして今私何て言った?
と俺を見てくる。
無意識だったのかよ。
俺は顔を引き攣らせる。
「.....何も聞いてない」
「嘘だぁ!?絶対に聞いたよね!?小虎!」
「すまんな。考え事をしていた」
「絶対に嘘だよね!?こらあ!」
頬を膨らませる結を置いてそして俺は歩き出す。
結は小虎!!!!!、と真っ赤になりながら追いかけて来る。
俺は.....何だか結の事を見直したと、考えてしまった。
だってそうだろう。
「お前の事、少しだけ見直したよ。結」
「.....え?」
「.....いや。そんな考えをしているとはねと思ってな」
「.....至って普通の考えじゃ?」
いや、ビッ○かと思っていたしな。
頭の悪い、だ。
だから簡単にいえば本当に見直した。
今日.....やって来て良かったと思う。
「小虎。アンタの事も見直したよ」
「.....?.....俺は何もしてないだろ。過去の話をしただけだ」
「いや。それでも。私は嬉しかった。小虎が話してくれて」
「.....お前もな。過去を話してくれて有難うな」
そう?.....ふふーん。
講演代ちょうだい、と俺に手を差し出してくる結。
俺は、勘弁してくれ、と回答した。
そして俺達は歩き出す。
まだ.....先も定まって無いレールの上を、だ。
この先は.....どんな旅路になるのだろう。
思いながら俺は一歩一歩を結と共に歩みだした。
そしてそんな考えの中で結を見る。
「結。お前次は何処行きたい」
「.....私?私は.....行きたい場所は行ったけど」
「.....じゃあゲーセンでも行くか」
「じゃあ丁度良いしその次にサイゼに行こう」
確かに昼飯の時間帯だな.....。
っていうかサイゼってマジか。
あそこリア充の聖地だろ。
店員と話さないといけないしその点は配慮してくれよ。
人と話したくないんだが.....。
と思うが結はグイグイきた。
俺は再びため息交じりで結を見る。
それから手を引かれてそのままゲーセンに行った。
☆
今時プリクラかよ。
と思いながらも俺と結はプリクラを撮った。
それからゲーセンで少しだけ遊んでから.....外に出る。
そしてサイゼに入った。
「いらっしゃいませ」
「あ、二人です」
「かしこまりました。此方へどうぞ」
うわー.....入ったのは良いけどやっぱりリア充だらけ。
と思っていると.....先程のリア充も混じっていた。
俺は顔を背ける。
するとそのリア充は案の定、駆け寄って来た。
「やっぱりここだと思ったから」
「だねだね。とーくん。多分来るっしょと思ったしー」
計画性があったんだな。
さて.....どう対応したものか、と思いながら結を見る。
結は少しだけ困惑しながら俺を見てくる。
俺は、行ってこい、的な目線を送る。
「.....小虎.....」
「良いから。行って来たら良い」
「.....」
こればっかりはどうしようもないしな。
俺は思いながら店員に向いてからそのまま奥に向かう。
だがそうしているとリア充の男、友彦君が俺に声を掛けてきた。
あ。ちょっと待って下さい、と。
俺は?を浮かべて振り返る。
「その。僕16歳なんですけどお兄さんは同学年ですか?」
「.....まあそうだな」
っていうかコイツ.....同学年だったのかよ。
俺は困惑しながら見つめる。
友彦君は俺を見てきながら柔和な顔を浮かべる。
イケメンスマイル。
「やっぱりですか。何だかそんな感じがしたんです。.....その、もし良かったらお話があるんですが.....」
俺は首を傾げながら。
何の話だ、と思いながら見つめる。
そして俺と友彦君は奥の椅子に腰掛ける。
一対一.....ってかこれ気持ち悪。
と考えてしまった。
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