第9話 デートじゃないもん
俺と結の仲はそんなに宜しくない。
だけどある日、生徒手帳を落としてからそこそこの仲にはなった。
俺は.....思いながら21日の土曜日の事。
鏡の前で上着やらの服装を確認する。
シンプルに服装をいったが.....これで良いかな。
「.....しかしアイツから誘われるとはね。仮にも.....買い物に」
思いながらドアを開ける。
そこには目をパチクリした結が立っていた。
茶髪にピンバッジの付いたファッションの帽子をかぶり。
シンプルな感じの清楚なジーンズでコーデした、可愛らしい服装の、だ。
やる気満々だなオイ。
「.....そんなにジロジロ見られると恥ずかしいかも」
「何でそんなにコーデしてんだよ。買い物だろ今回は」
「え!?.....いや!うん!いいでしょ別に」
「.....まさかと思うが買い物以外にも.....」
とジト目をしていると。
いいから早く出るよ!と赤面で俺の手を引いた。
ちょ、そんなに焦るな。
それから階段を下りてから玄関から外に出る。
しかし思ったが何でボッチがこんな事をしてんのか.....。
「まるでデートだな。これ」
「へ!?.....そ、そんな事無いもん」
「.....図星か.....」
「ち、違うもん!」
図星だな。
これを買い物じゃ無くてデートと人は呼ぶかもしれないぞ。
何を考えて、何を企んでいるか知らないけど。
取り合えず勘弁してくれ。
考えながら.....俺は盛大に溜息を吐いた。
「何?そんなに嫌?私と一緒なの」
「.....嫌とは言ってないだろ。俺は」
「.....え?.....そ、そうなんだ」
赤面で俺を見てくる結。
何だってんだよコイツは.....。
俺は額に手を添える。
そうしていると引っ張られた。
「良いから。行くよ。ね?」
「分かったから手を引っ張るなっての.....」
「♪」
「.....楽しそうですね。何よりです」
そしてデート擬きの様な。
だが結はデートと思っている様な。
そんな感じの買い物が始まった。
何で俺はこんな目に。
だけどまぁ。
嫌な感じはしないかな.....。
取り敢えずは、だ。
☆
「ショッピングセンターぐらいしかないぞ。この街には」
「そこに行こう。ね?」
「分かった分かった。行くから手を引っ張るなっての」
「時間が勿体無い」
時間が勿体無いって何だ。
思いながら.....結を見るが.....結は本当に楽しそうだった。
こんな笑顔を見るのは初めてだ。
俺は少しだけ溜息を吐く。
全く。
「.....結」
「何?」
「.....お前さ。俺と居て楽しいのか?」
「.....何でそんな事を聞くの。.....楽しくない」
嘘吐くんじゃねーよ.....。
絶対に楽しんでいるだろ。
こんな時まで嘘を吐くのかコイツは。
俺は考えながら見る。
反対の意味に聞こえるのさ。
「楽しい訳無いから」
「はいはい。分かりました。それじゃ行きましょう」
「分かってるの!?それ!?」
「はいはい.....」
反対の意味ですね。
楽しいんですね、分かります。
俺は思いながら遠くに見えるショッピングセンターに向く。
そして俺は結に手を差し出した。
それから笑みを浮かべる。
「.....行くぞ」
「.....!.....うん。お兄ち.....じゃないけど小虎」
「.....名前で呼ぶのか.....そっちの方がハズイんじゃねーか?」
「.....別に。どうって事ない」
んじゃもう勝手にしろ。
俺は思いながら歩いて行く。
そしてショッピングセンターに着いた。
それから見上げる。
新しく建設されたから.....真新しい感じだ。
「改築されたんだよね」
「.....ああ。元からあるヤツが、だ」
「.....」
「.....何だよ」
いや.....別に。
と赤くなって顔を背ける結。
何だってんだよ.....と思いながら歩いていると。
目の前から声がした。
「あの.....」
「.....?」
「もしかしてその、矢吹君?」
「.....え?.....お前、長嶺か!?」
うん!長嶺五十鈴だよ!、と笑顔を見せる少女。
俺は目を丸くしながら全身を見る。
スカート姿の.....柔和なお出かけモードの少女。
顔立ちは相変わらずの童顔が僅かに有りながらの美少女だな。
流石は人気だった顔立ちである。
身長も小柄だが.....可愛い。
俺は.....笑みを浮かべる。
「どうしたんだ」
「.....矢吹君を見掛けたから声を.....あれ?そのもしかしてその娘は.....」
「.....」
「.....いや挨拶しろよお前.....」
不愉快そうに眉を顰める結。
相変わらずだなコイツ.....。
何か女子が関わってくるとこの様だ。
俺は盛大に溜息を吐きながら.....長嶺を見る。
長嶺は、お邪魔だったね、と苦笑する。
「あ、えっと.....一応、これ連絡先.....電話.....欲しいかも」
「.....あ、ああ」
「.....宜しく。うん」
そして、じゃあね、と長嶺はそそくさと去って行った。
俺は.....少しだけ赤くなr.....イッテェ!!!!!
結が思いっきり靴を踏みやがった!
くそう!畜生め!!!!!
「ふーんだ。別に良いけど」
「お前さ.....」
「何?何か文句でもあるの」
「.....無い.....痛い.....」
このクソッタレ.....。
畜生、絶対に覚えていろ。
俺は思いながらツーンとしながら前を歩いて行く結を見た。
そして何度目かも分からない溜息を吐きながら。
そのままショッピングセンターに入った。
☆
「小虎。アンタデレッとしてない?」
「してねぇよ。.....というか!!!!!何で手を繋いでいるんだ!」
「良いでしょ別に!.....私だって」
半分聞こえない。
何を言っているんだよ。
俺は思いながら手を繋いだまま引っ張られる。
そしてそのまま.....服屋に来た。
俺は?を浮かべて見る。
「ね、これ可愛くない?」
「.....え?.....まあ確かにな」
「.....私に似合う?」
「.....は?.....あ、ああ」
じゃあこっちは?、と言う結。
楽しそうに選んでいる。
俺は、可愛いっちゃ可愛いが、と頷く。
うんそうなんだ、と笑顔を見せる。
「じゃあこっち買おう」
「.....いや.....っていうか何だよこれ。真の買い物は?」
「これが買い物。文句言わない」
「あ、はい.....」
いやもうこれもろデートじゃねーか。
思いつつ俺は結を見る。
結は楽しそうに選び続ける。
まあ良いか。
取り敢えずは妹の隠れた場所を知りたいしな。
「次はこっち行きたい」
「いや、それは良いけど.....金は」
「今日の為に貯めたから大丈夫」
「.....へ?.....あ、そうなの.....」
計画性有り過ぎだろ。
明らかにこの日を待っていた様な感じだなコイツ。
俺は思いながら.....少しばかり苦笑しつつ見る。
本当に楽しみだったんだな。
「.....お前さ、明らかにこれはデートの様な.....」
「ち、違うもん!」
「.....」
「デートじゃない!買い物!あくまで!!!!!」
頬をプクッと膨らませる結。
無理がありますよね。
明らかにデートですわ。
やっぱりコイツ、俺の事が好きなのか?
考えながら結を見る。
「まあもう好きにしたらいい」
「.....小虎?」
「.....お前が楽しい様にやれって言ってんだよ」
「別に?そんな事ないもん」
嫌そんな事あるからな。
もう隠せないぞ。
そんな感じで結を見ながら。
服を持っている結を見ていると。
女性の店員さんが、デートですか?、とにこやかに聞いてきた。
「ち、違います!、きょ、兄妹です!」
「え!?それは失礼しました!」
店員さんは慌てて口を塞ぐ仕草をする。
あながち間違っては無い。
俺は苦笑いで結の買うと思われる服を持った。
それから歩き出す。
「.....小虎?」
「重いだろ。持つよ」
「.....お、重くないもん.....でも有難う.....」
「.....」
前とはえらい違いだよな。
こんな事しても.....何も言われなかった。
何だか嬉しい。
俺も.....段々と兄妹として誇れそうだから。
「おに.....小虎」
「何だ」
「.....優しいね」
「.....兄貴なんだからな俺が。当たり前の事だ」
そういう所に.....惹かれた、と呟いた気がしたが。
ボソボソだったので聞き取れなかった。
俺は、なんて?、と聞き返すが。
何でもない、と弾かれた。
「.....全くな」
あの日.....と言うか。
家を出て行った結の親父さんの代わりになれれば良いけどな。
俺が、だ。
その様に考えつつ俺は歩き出す。
そして服を持ったままレジへ向かった。
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