3、昔のクラスメイト
第8話 長嶺五十鈴(ながみねいすず).....と不慮の事故
そういや.....今月の4月21日。
来週の土曜日だが。
この日は特別な日だったな.....。
何が特別かって?そうだな簡単に言おう結の誕生日だ。
だから特別な日なのだ。
誕生日ってそんなもんだと思う。
俺はピンと来ないけどな。
多分そのせいだと思う俺に構って(?)ほしいのは。
だから嫌われたくないと思っているんじゃないか?
思いながら俺は勉強道具を広げた。
「.....」
麦茶の中に混入された睡眠薬で結に眠らされた後。
無駄に睡眠がしっかり取れたせいか集中出来そうだったので改めて勉強をする。
俺も高校2年生、良い加減に全てを決めないといけない時でもある。
だからのんびりしている暇は無いだろう。
大学に進学する予定なので、だ。
プルルルル
「.....集中しようとしたら.....。何だってんだ」
俺は少しだけビックリしながらスマホを見る。
突然、俺のスマホに電話が掛かって来た。
ボッチなのに電話もクソもあるまいと思うのに.....。
一体どういう事だ?、と思いながら電話に出る。
「もしもし」
『.....』
「.....?.....もしもし」
『もしもし。その.....貴方は矢吹小虎さんですか』
少女の声がした。
俺は???と浮かべながら、そうだが、と電話に出る。
そうしていると少女が更に話してきた。
私、長嶺五十鈴(ながみねいすず)です、と。
俺は顎に手を添えて.....考える。
で、ハッとして思い出した。
小学校時代のクラスメイトだ。
「長嶺?お前、長嶺か?.....かなり久々だな」
『久々だね。矢吹君』
「.....お前.....全然喋らないタイプの人間だったのにな。というかそれは良い。.....何で俺の電話番号を知ってんだ」
『えっと.....聞いちゃった』
聞いちゃったって誰から聞いたんだよ?
俺は目をパチクリして疑問に思いながら前の窓から外を見る。
すると予想外の答えが返ってきた。
私の友人が貴方のクラスメイトなの、と。
それで伝づてに知ったの、と。
マジかよ、それでわざわざ?
というか俺の情報ってそんな形で有るのかよ。
それってかなり大変だぞオイ。
と思いながらも、まあ良いか.....漏れたものは仕方が無い、と思いそのままベッドに腰掛けて長嶺に話す。
それはそうと、突然どうしたんだ?と、だ。
すると長嶺は少しだけ黙ってから.....言いずらそうに言った。
『実はその.....長い間.....我慢していた告白の電話を.....』
「.....おおそうか。.....え?ちょ。今何つった」
『.....えっと.....えっと。うん。私.....山吹くんの事が好きなの』
「.....は.....え?マジに?」
と思った次の瞬間、バァンと俺の部屋の背後のドアが開いた。
俺は!?と思いながらドアの主を見る。
イヤホンを嵌めた目を尖らせているピンクのパジャマを着た義妹が立っていた。
ちょっと待て、え?
え?
「.....お兄....じゃ無い。アンタ。今直ぐに代わりなさい」
「いや馬鹿かお前は!?つーかまさか監視していたんじゃないだろうな!?」
「聞き耳を立てていただけだけど?」
「直球だなテメェ!嘘だろお前。冗談じゃねぇよ!?」
電話の主は、え。え?、と慌てている。
俺は、すまん長嶺、と電話を切った。
それから青ざめながら義妹を見る。
結は俺に向かって歩き出した。
まるで突撃兵の様に、だ。
「一体、誰と話していたの」
「.....いや。それは俺の勝手だろ」
「.....」
「.....な、何だよ」
雑音が多かったから。
また女の子なんだね、と少しだけ複雑な顔をする結。
だったら何だってんだ。
と言いつつ思いながら結を見つめる。
結は.....唇を噛んだ。
「.....別に良いけど.....私以外の女の子と話しても.....良いけど!」
「いや、なら来るなよ.....」
「でも腹立たしい。何だか」
「それはどっちなのか!?」
と、とにかく。
良い加減にして、女の子と話すとか。
と仁王立ちして俺を見てくる。
一体全体、何の権限が有るんですか.....。
パソコンのユーザー権限とかじゃねーんだからツッコミを入れるなよ。
溜息を吐いていると結が俺を睨んできた。
「アンタは誰とも付き合っちゃ駄目」
「は?ハァ?」
「.....良いから!童貞のままで居ろって言ってんの!!!!!」
「うおー!とんでもない事を言いやがったぞコイツ!!!!!」
何だってんだ!
ふざけんな!童貞だ!?
やっぱりコイツ変態じゃねーか!
童貞のままで居ろって.....。
最悪だ。
「アンタは女の子を困らせる可能性があるから絶対に絶対に駄目」
「.....そんな事は無い」
「.....駄目って言ってるよね」
プルプル震えながら涙を浮かべる。
泣くなよ!?
いや、涙を浮かべるなよ!?
何なんだよ本気で?!
俺が嫌っているのにこの女ときたら!
「わ、私.....お母さんに言いつける」
「.....お前.....本当に最悪だわ.....」
「言いつけてやるもん!バカァ!」
「もう勝手にしろ!アホかテメェは!」
何でコイツはこんななんだ!?
どっちなんだよ俺が好きなのか嫌いなのか!?
訳が分からない!
勘弁してくれよマジに.....。
俺は額に手を添えて盛大に溜息を吐く。
「と、とにかく。アンタは誰とも付き合えない。いや。付き合わせない」
「あのな.....俺は束縛される為の人間じゃねーよ.....」
と思いながらスマホを置くと。
電話がまた掛かってきた。
その電話の主は.....長嶺だと思われる。
俺は直ぐに出る。
「長嶺?」
『.....いきなり電話切るなんて酷い』
「.....いや、すまん。非常に今忙しくてな。今ちょっと修羅場なんだ」
『え?』
スマホを取り上げようとする結。
俺は抵抗しながら電話を掛け続ける。
すると床で足が滑って俺は義妹を押してしま.....い?
きゃっ、と声。
うお、と俺。
「.....!!!!?」
「!!!!!」
何という事でしょう。
俺は義妹を床に押し倒してそして俺の義妹の口と口が当たってしまったではありませんか.....、などと解説をしている場合か!?
何てこった!?
勢い良くドンッと俺は押された。
そして震える義妹。
「ア.....アンタ.....ファ、ファーストキスなのに.....!」
「す、すまん。でもお前が悪いだろ.....!」
「.....スマホを渡しなさい。絶対に許さない」
「それとこれとは話が別だろ.....お前に渡せない!」
長嶺は、もしもし!?、と心配げな声を発している。
俺は直ぐに口を拭きながら、す。すまん、また今度電話するから!じゃあな!、とそのまま切る。
これで大丈夫だろう。
だが問題はこの先だが.....。
「こんなの兄妹同士であり得ない.....」
「俺だって好きでやったんじゃねーよ.....ってか俺もファーストキスだっての」
「え?」
「え?じゃねーよ。ファーストだっつーの」
全くもう。
母親の頬キス以外に初めてだぞ。
と言うと、真っ赤に赤面し始めた結。
そ。そうなんだ、とモジモジし始める。
「.....と、とにかく。アンタが悪い」
「お前だろふざけんな。全く」
このキス魔め。
俺は頭を抱えながら溜息を吐く。
とんでもない事になってきてしまった。
どうしたら良いのだろうか。
まさか義妹とこんな形でキスをするとは.....!
「.....」
「.....」
「.....これは仕方が無いから!.....ノーカンだから」
「分かった分かった。本気でもう帰れよ.....」
確かにこんなもんノーカンにしたい。
あくまで嫌っている義妹とのキスなんぞ。
どうなっているのだ神様。
俺はガリガリと頭を掻きながら手を伸ばす。
床に座っている義妹に、だ。
「.....?」
「立ち上がりたいんだろ」
「優しいね。アンタ」
「ウルセェな.....」
でも今度、電話の主の女の子の剣を聞かせてもらうから。
後、必ず私の買い物に付き合いなさい。
と真っ直ぐに訝しげに俺を見る。
分かったってば.....。
「.....勉強が全然出来ないから。早よ帰れ」
「本当に分かってんのかな.....」
言いながら結は渋々、帰って行く。
そして俺は、あ、と声を発した。
盗聴の事を聞き忘れた、と思いながら、だ。
クソッタレ.....。
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