第3話 それでも確実な一歩となる

義妹がおかしい。

一体何がおかしいのかというと。

かなりの変態性が見えてきた事とか。


そして.....俺の部屋に監視カメラが設置されていた事。

いや、良いんだが.....うん、その。

俺の部屋に監視カメラって。


「.....」


「何?ジッと見られると気持ちが悪いんだけど」


「.....」


この女がマジに俺を異性として.....見ているのか?

俺自身は.....本当に駒の様な有様なんだが。

それなのにコイツは俺を好いている様に行動する。

だけど俺に反発した様な顔をする。

よくこうも切り替えられるものだ、と思うぐらいにだ。


思いながら俺は早朝に仕事で会社に出勤して行った八さんの作り置きの朝食をため息交じりに食べてから。

そのまま挨拶も無しに外に出ようとする。


その際に、待って、と珍しく声を掛けられた。

少しだけ言い詰まる様に、だ。

俺は目を大きく開きながら結を見る。

結は俺に少しだけ困惑する様な顔を向けた。


「.....えっと.....アンタさ。.....私の生徒手帳.....知らない?」


「.....え?」


「.....まあ.....知ってる訳無いか。ゴメン」


何処やったのかなぁ、と顎に手を添える結。

いや、ちょっと待て。

俺は一言も答えてねぇよ。


勝手に話を進めるな。

俺は本当に何度目かも分からない溜息を吐きながら。

結に向いてから真剣な顔をしながら言葉を発する。

全くコイツは.....。


「あのさ。まだ何も言ってないんだが.....というか生徒手帳が無いのか?.....それは必要な物だろう。探すぞ」


「.....え?」


完璧に予想外の言葉だったのか結は目をパチクリした。

それから瞬きしながら俺を見てくる。

俺はその言葉に表情を崩しながら少しだけ笑みを浮かべた。


そしてその場で腕まくりをする。

まるでドカタの仕事でもやる様に、だ。

ちょ。アンタ何をしているの?、と慌てて言ってくる結。

俺はその言葉に答えた。


「今から探すんだよ。生徒手帳。だって学校の証明書だろあれ。必要無い可能性も有るかもだが俺にとっては必要に感じる。大切な物だからな。どっかで落としたとしても警察を頼ったりして探さないと」


「いや、今からって.....馬鹿なの?頭おかしいの?.....生徒手帳ぐらい全部を再発行すれば良いじゃない」


「そういう問題じゃない。生徒手帳にはここの現住所も刻まれている。お前の思いでだって刻まれているだろ。住所に関しては悪い奴とに見られたらどうすんだ。色々とマズいんだよ」


「.....!」


付け加えれば、お前は俺の義妹なんだから、とでも言いたかったが。

流石にそれはこっぱずかしいので言わなかった。

それに俺としては確かに義妹の為に動くのもあるがそれだけでは無い。


俺は義妹の隠している事を知りたかったのだ。

つまり義妹の秘密とかを、だ。

義妹は俺に向く。

そんな結はおどおどしながら困惑していた。


「.....えっと.....何でそこまでするの」


「お前は俺の義妹だ。そして家族だ。理由はそれだけだ」


「.....私はアンタに散々な目に遭わせたんだけど。有り得ないでしょ」


「だから何だ。兄妹で喧嘩していても今は家族だろ。関係ない」


見開く結。

俺はその姿を見ながら少しだけ笑みを浮かべる。

さて探すか.....って言ったって俺の手元に有るんだけどな。

捜索は簡単に終わりそうな気がする。


「.....アンタの事、やっぱり.....」


「何だ?今何つった。.....ぼそぼそ喋るなよ。聞こえない」


「何でもない。時間無いから早く探そう」


俺は首を傾げる。

そして俺は背中を押される様に外に出た。

勿論、生徒手帳を探す名目で、だ。


そこら辺の草むらとかを30分探して。

そして見事に遅刻になった頃に生徒手帳を出す。

義妹は泥だらけになった俺に感謝の気持ちを伝えてきた。



「学校に遅刻とか珍しいなお前さんよ」


「.....まあ色々有ったんだよ。和樹」


「.....?.....いや、まあ良いけど.....」


俺はシャワーとか浴びて制服を着替えて2時限目の中間で学校に登校して来た。

和樹、つまり俺の友人は目を丸くしながら俺を見てくる。

そんな和樹の容姿だが黒髪坊主頭。

そして柔和な笑みを浮かべる、身長173センチの男だ。

中肉中背といえる。


「.....で、昨日の件はどうなったんだ」


「昨日の件?」


「おう。お前なんか言ってたじゃないか。義妹の件で悩んでいるって」


「.....ああ。確かにな。悩んでいるっちゃ悩んでいるけど」


でも随分と顔が明るくなったな、お前。

的な感じで和樹は笑う。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

そして顎に手を添えた。


『アンタの事、少しだけ兄貴っぽく見えた』


探している姿を見せている時に言われた事だ。

まあそれだけ引き出せただけでも勝ちかな。

あの変態から、だ。

だけどまあ.....なんかその。

色々とまだ解決してない問題が有るが。


「次の時間なんだっけか」


「次は現文へ変更だと。面倒だよな」


「また現文か。面倒な」


現文ばっかり勉強してないか?

思いながら次の時間を待っていると。

教室のドアの所に女子生徒が現れた.....え?

結!?


「何だ?あの美少女.....」


「あんなんこの学校に居たのか?」


「マジかオイ.....」


俺は驚愕しながら和樹に手を挙げてそのまま結に近付く。

そもそもこんな場所に来るとか初めてじゃないか?

結は俺をジッと見据える。

俺は???を浮かべながら見る。


「.....アンタに感謝の気持ち」


「.....は?俺に?.....チロ○か?」


「そう。○ロルだけど。.....何か文句ある」


「.....」


本当に一個だけのチロ○だったが。

無い、と首を振って苦笑気味に話しながら俺はそのチョコを受け取った。

少なくとも普通のコンビニに売っている物よりかは遥かに輝いて見えるチョコだ。


俺にとっては、だ。

そして結は、そう、と言って。

俺に対して少しだけ笑みを浮かべて、じゃあ、と手を振ってから去って行った。

その姿を視線で見送りながら。

俺は手元のチョコを見る。


「.....何だってんだ.....全く」


「どうしたんだ?何を受け取ったんだ」


「チロ○チョコだ」


「成程。.....俺にくれ。可愛い義妹さんのだろ」


ふざけんな。

直球過ぎるしやる訳ないだろう。

アホかコイツは。

なんつうかこれは数年で初めての義妹からの贈り物だぞ。

渡す訳にはいかない。


どんな形でも感謝は感謝の気持ちだ。

例えあの様な変態でも、だ。

思いながら俺は牛柄の包み紙に包まれたチョコを見る。

全くな.....アイツめ。


キーンコーンカーンコーン


「.....!.....戻るか」


「そうだな。戻ろう」


丁度、俺の背後。

席順としてはそこに和樹の席が有り、そこに和樹は座っている。

俺はその前だ。


元の場所に俺達は戻りながら席に腰掛けた。

それから丁度、先生が入って来て授業が始まる。

その為に鞄から教科書を出していると。


「.....」


何か挟まっている。

というかその、教科書と別の教科書の間に、だ。

俺は目をパチクリしながらそれを引き抜いて取り出す。

何だこれは?、と思うが。


それは写真だった。

まるで押し花の栞の様に挟まっていた。

何だこの写真は。

多分、この上に置いた生徒手帳から落ちたのかも知れないが。

で、何の写真かというとその写真は.....俺の拡大写真だった。


明らかに誰かに見つかったらマズイ写真である。

先ず自分の写真とか持ち歩くとか気持ち悪がられる。

周りの女子達とかに、だ。


俺はドン引きした。

顔が引き攣った笑みを浮かべる。

なんてこったい。

これは処分しないと.....。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る