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『いよいよ最終マップです。OFGが序盤一気にマッチポイントへ持ち込みましたがそこからsamurai wolfが同点まで取り返しました。これでどう転ぶか分からなくなってきました』

『いやぁー。前回同様に素晴らしい決勝戦ですね。このマップで最後というのは残念ですがどちらのチームが勝つのか楽しみでもあります』

『そして最終マップは運命のいたずらか第1回japan cup決勝の最終と同じマップです』


「次が最終マップか。これあるぞ!」

「最終でもやれることをやるだけね」

「でも実際戦ってみて思ったんですけどやっぱりDB選手って強すぎですよね」

「他の人達も十分過ぎるほど強いし、当たり前だけどやっぱOFGって強いんだなぁって思わされたよ」

「でも僕らも負けてないからそこは胸を張れるよね」

「あっ、そうだ!最初の攻撃ラウンドでアレやらないっすか?」


カズの提案に少し悩んだけどビスモさんとジョンクさんは面白そうって言ってて最後はやることに落ち着いた。でも確かにそういうのは好きだ。


『最終マップラウンド4。攻守変わりましてOFG防衛、samurai wolf攻撃です。現在2:1とOFGが1歩リードしていますが拮抗していると言っても過言ではありません』

『あれ?だ~ぼんさんこれはまさか!』

『なんと!samurai wolfここに来てラッシュです!他には目もくれず真っすぐ拠点へ走ります』

『いや普通やりますか?しかもOFG相手に。正直スゴイですよね』

『遊撃も無視し拠点に突っ込みます。一瞬反応が遅れたかはーみん選手とSilva選手が落とされるがカバーにジョンク選手が落とされ、と言ってる間に猟犬選手が更に落ちカズ選手なお選手と落とされるが既にHPのないKnBee選手とDB選手をアニマル選手とビスモ選手が落としラウンド4勝者はsamurai wolf!これで2:2と並びました』

『この決勝の舞台でOFG以外に開幕ラッシュをやるチームがいたんですね。まずはその度胸に拍手を送りたいとですよ』

『ファーストマップの1ラウンド目にラッシュをしたOFGへの仕返しのようなラッシュでした』


「フゥー!ラッシュ仕返し決まったの気持ちぃー」

「何とか取れてよかったぁ」

「さすがに相手も予想してなかったっぽいけどね」

「私最初の人に2度見されましたよ」

「これで相手が動揺してくれたらいいけどそうはいかなそうね」


それからの試合はまるで殴り合うみたいにラウンドを取り合った。相手が取れれば次はこっちが取り、こっちが取れば次は相手が取る。しかもラウンド全てが激戦で少しでも何かをミスれば負けてしまうほど。当たり前だが少しも気を抜けない。


「これキツっ!」

「ヤバかったら下がっても良いですよ」

「今下がったら後半がキツイからもう少し粘るわ」

「じゃあ私カバーに寄りますね」


数ラウンドを終えたところで頭の隅に現れた事だがやっぱり最終マップは延長へ突入した。


『これで8:8。このまま両者1歩も譲らぬ延長戦となりそうです』


8:9。

9:9。

9:10。


『はーみん選手を倒すことはできましたがこれは...。やはり時間が無い。これで10:10。フルラウンドへと突入します。泣いても笑ってもこのラウンドを取った方が勝利。TPさん、ここまでだけでもかなり良い大会になりましたよね』

『そうですね。それも彼らsamurai wolfの存在が大きかったと思いますよ。なので最後までしっかりと見届けたいですね』


この防衛で勝敗が決まる。今まで全部そうだったけど残りの全てを注いで一番の集中をしないと。撃ち合い1つ1つ。動き1つ1つ。全てに集中を注ぎ使い切っていく気持ちでいかないと。最後ここで踏ん張りキープじゃなくここにきて高められればチャンスはあるはず。


『ここ数ラウンドのプレイを見て思ったのですがOFGは1マップ目に比べてかなり連携が取れて来てますよね』

『そうですね。この試合の中でここまで精度を高められるところはさすがプロといったところでしょうか。samurai wolfにとってはラウンドが進むにつれ相手が手強くなっていくわけですからキツイですよね』

『それでもここまで持ち堪えた彼らには称賛以外ないですよ』

『その通りですね』


最終ラウンドは撃ち合い自体何度か発生したがどちらともキルには至らず5v5のまま時間が過ぎていった。多分このまま最後は激戦になってそれを生き抜いた方が勝つ。


『バーでSilva選手がドローンを回す。そろそろ詰め始めそうです』


「保管下りた!俺こっちの謎ロング見ないといけないから誰か頼む」

「上から見られてるから簡単にしか見れないわよ。設置されたら無理ね」

「じゃあボクこっちから上に上がるんでその間だけ宜しくお願いします」

「PCも下りるかもしれないので気を付けてくださいね」

「カズ。これまだ設置はされてないよね?」

「まだ。多分先行で下りたヤツだと思う」


出来る限り足音を立てぬように、だけど出来る限り速く移動する。


「保管更に下りた」

「ごめん。入れ違いだった」

「でも上から設置やれるじゃん」

「なお君PC上やれる?」

「いいよ。でもその間設置やれないんでよろしくお願いします」


ボクはまた静かにだけど素早く移動しPC上のバーへ向かった。バレてたらこっちを警戒してる可能性もあったけど、多分それは大丈夫だと思ったから音を立てぬことを優先してゆっくり覗いた。ハッチ上からは2人が覗いてて丁度投げたフラッシュの爆発音と同時に1人を撃つ。


「1人やったけど1人下りました」


すぐにハッチまで寄ったけど下から見られてると思ったから一瞬だけ覗いた。するとボクの頭を銃弾が掠める、


「今ピークしたら下やれるかも」


そう言いながら注意を引く為に少し位置をズラし2~3発だけ撃ってすぐに隠れた。


「あー。ごめん。こっち見てたね。その人DBだわ」


ビスモさんの言葉を聞きながら撃たれないように下を再度確認する。だけどもうそこに敵の姿はない。


「多分、廊下出てるから気を付けて下さい」


もしかしたらそのまま階段で上に上がってくるかも。そう考えすぐに中央階段をロックする。だけど上がってくる様子はない。もしかしたらあっちは下で階段をロックしてるのかも。でもとりあえず今は下りる必要にないし下りるにしても選択肢は沢山ある。


「ガレロン来てる!」

「じゃあガレロンとPC下りと保管2人で全部ね」

「なら俺も設置倒せるわ。てか設置してる!俺、飛び出す!飛び出す!」


一応上がりは気にしつつ保管の上に戻る。


「設置はやったけどもう1人にやられた」

「大丈夫。次の設置が始まったら止められる」

「PC下りしたDBさん、追えてないんだけどカメラとかない?」

「ない」

「待って。――ジョンクさんDBさんPCに戻ってるかもしれないから気を付けて」

「分かりました。けどこっちも詰めて来てるんで...」

「とりあえず設置は任せてください」


カメラも無いし直接確認できる人もいないから音に全神経を集中させて設置音を聞き逃さないようにしないと。銃声で聞こえなかったら最悪勘で撃つしかない。


『記録室のDB選手と待合室のアニマル選手は互いの出方を伺っているのか硬直状態が続く。だがそうしている間にも時間が過ぎるが、先にDB選手が動き出す!クイックピークで相手の銃弾を誘い位置を把握。すぐさましゃがみを入れながら飛び出しボム裏のアニマル選手を決め撃つ。だがアニマル選手は既に顔を出す場所を反対側に変えている!しかしDB選手は確認した場所を数発撃つと引き金はそのまま持ち前の反応でエイムを動かしアニマル選手を撃ち抜いた!』


「マジ!?ジョンクさん僕やられた。待合入ったよ」


銃声に混じってたけど微かに設置音が聞こえた気がした。確信はないけど自分を信じて定番ポジションを上から撃つ。


「設置やった。ジョンクさんカバー行くよ」


流れたキルログでキルを確認するとハッチを下りるがその瞬間、新たなキルログが流れた。


「ごめん。挟まれてもう無理。でもガレロンの人ロー」


下りたことを若干後悔しつつもまずそのローの人を先に倒したいからそのために頭を切り替える。


「保管とガレロンって開通してる?」

「してるよ」


遮蔽物から顔を出しそのローテ穴を覗く。ジョンクさんを倒した敵が詰めてきて姿を現さないか期待してたけどそれは思わぬ形で叶った。ボクが見てたローテ穴より左側にあるドアから敵が保管へ侵入。それを視界の端で捉えるとほぼ反射的にフリックをして引き金を引いた。


「あぶなかったぁ」

「ナイスなお君。ラスト1」

「多分待合にいるはずだよ」


もう残り時間も無いし解除キットもここに落ちている。多分キル狙いしかないはず。報告で大体の位置はバレてると思うし移動した方がいいのかな?そんなことを考えている間に保管にフラッシュが投げ込まれた。それは遮蔽物に隠れ容易く避けられたが恐らくこの隙に中へ入ってきたかも。

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