31

ラウンド2を取られてから3.4.5と流れるように連続で取られてしまった。これで4:1。準々決勝や準決勝よりも一層、慎重にプレイしてるつもりだけど全然うまくいかない。


『KnBee選手となお選手が互いに遮蔽物を使い撃ち合う』

『両社とも削りはしてますけど倒し切るところまではいっていませんね』

『ここでなお選手がフラッシュを投げた!KnBee選手視線を逸らすが僅かに遅れモロに喰らってしまう』

『ボムとは少し離れた場所ですし相手が1人なのは分かっているので詰めればキル取れますね』

『おおっと。だがなお選手に詰める様子はない。外したと思ったのか?』

『今のは分からんくても詰めてよかったと思いますよ』


5:1。


「管制2ね」

「1人やり損ねたけどハーフ」

「えっ!B入ってる!」

「――いないですね。多分、アニさんやって出たのかもしれないです」


『人数不利を取り返すことはできずそのままOFGがラウンドを取りました』


6:1。


「1人やった。少し退きますね」

「ジョンク。こっちに退いていいよ。カバーするから」

「分かりました。管制2人しか見えななくて1人倒したから、なお君今、裏取れるかも」

「んー。でももう1人が外でドローン回してたかもしれないから止めようかな。折角人数有利になったし」


『samurai wolfの人数有利のまま試合は進んでいくが。ここではーみん選手がカズ選手を落とし人数差はイーブン。そしてそのままOFGは最後の詰めに入ろうとしています』


「こっち側が本体っぽいからジョンクさん少し寄れる?」

「いいよ」

「ボク、途中で下りて設置飛ばすからその時は代わりによろしく」

「分かった」


『アニマル選手は強ポジで相手の侵入を防いでいるがここでフラッシュが放り込まれる。1つ、2つ、3つ。これはさすがにブラインドです。そして間髪入れずに猟犬選手がアニマル選手を真っすぐ倒しに行き、そのカバーを共に中へ入ったKnBee選手が行う。ジョンク選手もアニマル選手のカバーをしようとするが間に合わず猟犬選手がイージーキルをしました。更にジョンク選手は何とか耐えたもののKnBee選手に体力を削られてしまいます。そしてその後方でははーみん選手が設置を始めています』

『裏側ではDB選手とビスモ選手の1on1が始まってますね』

『だがこれは下にいるなお選手が設置を飛ばせるか?』

『ギリギリを狙って少しでも時間を稼ごうとしてますね』

『大分進んだがまだ飛ばさない。大丈夫か?そして今、飛ばそうとするがちょっと待ち過ぎたかタッチの差で設置は完了してしまった!仕事を終えたはーみん選手は爆風と共に飛んでいきました』

『ここまで来るとsamurai wolfは厳しいですね』


そしてジョンクさんはそのまま2on1の末にやられてしまいビスモさんは挟まれてやられた。最後残ったボクも成す統べなく倒されてしまう。これで1マップ目は7:1でOFGに取られてしまった。完敗。それが1マップ目を終えての感想だった。惜しいとか全然戦えるとかじゃなくて圧倒的完敗という事実は思ったよりもダメージがデカく、調子を大きく狂わせた。


『KnBee選手の1v3クラッチ!絶望的状況を見事ひっくり返す!』


『いやー、今のはーみん選手のカバーは素晴らしかったですね。あれでsamurai wolfは一度立ち止まらずを得なくなった訳ですから勢いそのままとはいきませんでしたね』


『DB選手に上手くSilva選手が合わせ見事な連携で遊撃を潰しました。まるでずっと一緒にプレイしてきたかのような合わせは素晴らしいの一言に尽きます』


『あの猟犬選手の怒涛のキルはすごかったですね。あのプレイは猟犬というより狂犬でした』


『そして最後もDB選手がキルをしてラウンド終了です。DB選手はこのラウンド...そうですね。DB選手はこのラウンドエースでした。いやぁ強い!』


調子が大きく崩れたまま進んだ2マップ目は相手の選択マップということも相俟ってかこの決勝の行方を決定づけるような点差で終わった。


『なんと2マップ目は7:0でOFGがストレート勝利を収めました!これで2:0。samurai wolfいよいよ後がなくなってきました。次もOFGが取りそのまま優勝のか。samurai wolfが崖っぷちで踏んばるのか。非常に楽しみです』

『ですがsamurai wolfは一度気持ちを切り替えないと勝ち目はないですね。先ほどのマップでの戦い方は消極的になり過ぎてチャンスを逃し過ぎてた気がします』

『そうですね。ここら辺で...。――えー、ただ今OFG側のPCにトラブルが起きたとの連絡が入りました。ん?10分?――少し調整の為に10分程時間を置いての再開になります。では皆様、急ではありますが10分程お待ちください』


ボクらは一度控え室に戻った。まだあと1マップ残っていたがボクを含めみんな結構気分は沈んでいた。ここまで何とか勝つことができた分少なからず自信は付いてたし、もしかしたらこのままOFGも倒して優勝っていうのも見えていた。だけどいざ決勝戦が始まってみれば最初の1ラウンド以降全てのラウンドを落としてついにマッチポイント。惜しいラウンドもあったが結局取り切れなかった。特に2マップ目はストレート負けということのがメンタルをひどく攻撃してきた。やっぱりここまで勝ち上がってこれたのは運が強いだけだったのかもしれない。OFGという大きな壁を前にそれを思い知らされる。Soも一歩千金もボクらが無名だったからまさか負けるなんて思ってなくてその隙と運が上手く噛み合って勝てたのかもしれない。それを実力と勘違いしてしまったが故にボコボコにやられた。観客もこんな決勝になってガッカリだろう。Soか一歩千金が上がってきてればもっといい試合になったかもしれない。


「はぁー」


そう考えると思わずため息が零れる。


「あの!」


するとジョンクさんが声と共に手を挙げた。


「次のマップからはもっと適当に戦いませんか?」

「どういう意味よ?」

「別に手を抜くって意味じゃないんですよ。何て言うんでしょう。――もっと肩の力を抜いてランクとかみたいに、やれたらドンマイって感じでやりましょう」

「確かに慎重になり過ぎて逆に消極的になってたかもしれないね」

「俺もいつも撃ち合いにいく場面でもビビっていなかったなぁ」

「アタシも待とうとすること多かったし遊撃も簡単に退いてたかも」

「私も今思えば、ガッツリ撃ち合いにいかずに結局中途半端になってました」


だけどボクはそれで何かが変わるとは思えなかった。


「相手はOFGだよ?そもそも実力が違うんだよ」

「なんだよ。意外とイケるかもしれないぜ」

「2マップやってボクらが取れたのは1ラウンド。これが実力差。これが現実。やっぱりボクらが運とかで相手に出来るような相手じゃないんだよ。プロリーグでも活躍して実質日本一のOFG。片や優勝経験なんてない無名のチーム。こんなの最初から結果は見えてるじゃん」


どう足掻いたって勝てっこない。もう勝負は決まったようなものだ。圧倒的実力差を見せつけられてボクらは負けた。


「アンタさぁ。なにそんなに弱気になってんの?まだ2:0で、これから3マップ目が始まるのよ」

「ビスモさんだって分かってないじゃないですか!ボクらは1マップも、それどころかラウンドすら1つしか取れてないのに相手はマッチポイント。これのどこに勝てる要素があるんですか?」


少し叫ぶようなボクの声が部屋に消えると静けさで空気が凍った。


「一昨年のWCV【World Championship for Villain For Villain。その年の世界一を決める大会】1回戦のCommutis《コミュティス》vsгром《グロム》、国内大会決勝に進出したまだプロになる前のK.A.KvsOFG、メンバーを変更して歴代メンバー最弱とまで言われファンにまで叩かれたGGvsGRIzzLy《グリズリー》」


するとジョンクさんが試合の対戦カードを口にした。そのどれも知ってる試合。

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