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『皆さま大変長らくお待たせしました。Villain For Villain Japan cap vol.2決勝戦を始めたいと思います。それではチーム入場です』


会場が暗くなるとチーム紹介動画が流れ始めた。


『あの日名実共に最強を証明したチームがvre.2でも決勝の地に姿を現した。だが試練を与えるようにトラブルが彼らを襲う。kakian選手とキマイラ選手が欠けた中、その試練すら薙ぎ払い再び王座に腰かけることが出来るのか!?Villain For Villain Japan cap初代王者、OGRES FACE GAMEING』


OFGの面々が舞台に出て行き席に着いたところで次はボクら。準々決勝と準決勝でもこの舞台でプレイしたけどまだ心臓が落ち着いてくれない。


『突如現れ次々と名だたるチームを沈めてきたその実力は疑う余地なし。誰も予想できなかったカードを実現させた謎のチーム。彼らはそのまま王者も喰らい尽くし王座を奪い取ることができるのか!?今大会のダークホース、samurai wolf!』


大音量のBGMに紛れ拍手に迎えられ舞台に出て行く。決勝だからかそこから見える景色は準々決勝・準決勝とは違って見えた。そして改めて観客席を見るとそのほとんどがOFGファン。そりゃそうか。誰もボクらの事は知らないし。――でも期待が無い分少し気が楽かも。そんなことを考えながら席に座ると試合の準備をした。


『1マップはsamurai wolfの選択マップ。防衛samurai wolf、攻撃OGRES FACE GAMEING。BO5の7ラウンド先取、延長は2ラウンド差もしくは21ラウンド先取となります。それではVillain For Villain Japan cap vol.2決勝戦。OGRES FACE GAMEING対samurai wolf。グットラックハブファン!』


ついに決勝戦。そう考えると緊張で少し手が震える。そんな緊張を鎮める為、プレイに集中するために一度大きくそして深く深呼吸をした。前回王者でプロでもトップクラスで日本最強で、そしてボク憧れのOFGと試合が出来る。まずはそこを楽しもう。出来るだけ小さく考えて緊張を無くした。すると、ふと頭に浮かんできたことがあった。


「もしかしたらあの日見たいに開幕凸してくるかも」


OFGと桃太郎の試合、1マップ目の第1ラウンドでOFGは開幕ラッシュをしかけた。


「さすがにしないんじゃない?」

「でも最初の数秒だけでも全員でラッシュ警戒しませんか?」

「僕はいいと思うよ」

「じゃあこっちが有利な場所でクロス組んで待ってようよ」

「おっけー」


準備時間が終わる少し前に話をしたボクらは確証はないけどラッシュに備えた。


『さぁ1マップ目のラウンド1が始まりましたが。おおっと!OFG開始と同時に一直線に拠点へと走り出しました。これはラッシュか!?』

『前回の桃太郎との試合を思い出しますね』

『そうですね。前回の決勝戦を再現するかのようなラッシュですが、samurai wolfこれは読んでいたのか待ち構えていますよ!そして今、OFGとそれを待ち構えるsamurai wolfがぶつかろうとしています』

『ですがこれはクロスを組んで待っているsamurai wolfの方が有利ですね』

『先頭を走っていたはーみん選手がまず最初にキルされそれをカバーしたSilva選手がカズ選手を落とすがそこから連続でSilva選手と猟犬選手とやられていく』


ラウンド1はそこで全てのキルログが流れた。


『あの決勝を再現するかのようなラッシュを見せたOFGとそれを分かっていたかのようなsamurai wolfとの正面衝突。波乱のラウンドとなりました第1ラウンドの時間はなんと30秒。そしてこの乱戦を制したのはsamurai wolf!』


ラウンドが終わり何となくOFGの方を見るとKnBeeさんとたまたまだろう目が合う。目が合うと彼は笑みを浮かべウインクをした。KnBeeさんがどういう意図でそれをしたのか分からないけど、ボクにはよく分かったねか今のはプレゼントって言われてる気がした。さっき自販機の所で話をさせてもらった時にボクが桃太郎との試合を見てこのゲームを始めたって言ったからその再現をしてくれたんじゃないかって少し思う。だとしたらKnBeeさんの言葉通りあの試合を越えるようないい試合をする為にいつも以上に頑張らないと。


『見事ラッシュを止めたsamurai wolfがラウンドを制し0:1。まだまだこれから素晴らしい試合を見せてくれそうです』


ラウンド2。急にメンバーが2人も変わったからかOFGの連携はどこかちぐはぐ。だけど個々が強いからか隙は無い。どころか文句なしに強かった。


「え?強すぎでしょ。ごめん。逃げられなかった。管制に1人とライブドローンしてたから2人はいるかもです」

「おっけ。僕今見れてないからもしBの外に来たら教えてね」

「分かりました」

「ビスモさんそっち側宜しくお願いします」

「はいよ」

「俺も上がろうか?」

「タイミング見て裏取れそうだったらそれもいいかも」

「とりあえずボム中に追いやられる前に1人はもっていきたいわね」


多分正面から撃ち合っても勝てる確率は低いはず。なら強ポジとかクロス組むとかで何とか優位に撃ち合わないと。


「こっちの壁開きました」

「こっちも来てる」


『KnBee選手と猟犬選手が2階の壁を開け、DB選手が1人反対側から攻めてますね』

『はーみん選手とSilva選手が階段をロックしてますから途中上がりは厳しそうですね。上の2人がどう時間を稼ぐかが重要になってきそうです』


反対も来てるならビスモさんの援護は無理そう。とりあえずクイックピークして人数だけでも確認できたらいいかも。一瞬だけ顔を出し開いた壁を覗く。そしてボクが顔を引っ込めた直後に銃弾が飛んできた。目視と銃声を聞く限り最低でも2人はいる。


「ビスモ。もう少し下がってくれたら下からもカバーできるよ」

「アンタ入りやれる?」

「確実じゃないけど多分やれると思う」

「じゃあアタシなおのカバー行くわ」

「外に最低でも2人います」


確かに反対側はショットガンで床を開け入りをアニさんが見てくれるなら少し楽になるかも。


『KnBee選手と猟犬選手は中には入らず警戒だけしていますね。同じくDB選手も一定ラインよりは進行してません』

『はーみん選手がロックを外して屋上を移動してますね』

『これはラぺリングしてKnBee選手と猟犬選手の手助けですね。これでなお選手とビスモ選手はラぺを倒すか少し下がらないとキツイ状況になりました』

『一つの窓にはクレイモアが置いてありますしSilva選手がカバーもしているのではーみん選手は窓に集中できますね』


「窓ラぺ」

「ちょっと退くしかないわね」


これで壁外が詰めてくるからそれをやれたらいいけど廊下からのピークも気になる。いっそのことボムに退くべき?でも時間的に苦しくなって終わりそうだな。


『はーみん選手のラぺリングでなお選手とビスモ選手が少し下がりKnBee選手と猟犬選手が中へ入りました。それと同時にDB選手も詰め始める。だが下から射線を通し入り口を見張ってるアニマル選手に気が付けるか?』


ラぺリングを何とかしたいけどラぺリングをやろうとしたら正面の2人にやられるし。正面から無理やり撃ち合う?でもそれはやられる可能性が高い。


「これラぺのカバー居るからやるのキツイわ」

「後ろも近いよ。入りは見てるけど気を付けて」

「ビスモさんこれもう退いて下を少し広めに守りましょう」

「おっけ」


少しHPを減らされたけど2人共一度退くことができた。2階を取られて突き下げとかの工事をされボム中にはいられなくなったボクらは一度外に出て立て直すことにした。だけどOFG相手に後手へ回ってしまったのは思った以上にキツイ。上に上がりボム上を取り返そうと試みるがそう簡単にはいかない。


『上を取り返したいsamurai wolfがはーみん選手を倒したものの未だ状況は劣勢。その間にもSilva選手がAボムに入り設置を試みます』

『全て上から見られてますからワンチャンで設置をやりに行かない限りは止めるのは無理そうですね』

『いよいよ上を取らなければ辛い状況になってきました』


設置されてしまい迅速に上を取り戻さないといけなくなってしまった。その焦りがプレイを少し雑にさせる。


『4人で上を取りに行くsamurai wolfとOFGの3人がぶつかり合う。2人1組で挟みながら取り返しに向かうが。DB選手が見事なクイックピークでビスモ選手を落とした!これでDB選手はアニマル選手と1on1。その間にSilva選手が落とされそして更にDB選手がアニマル選手を倒したようです。1人で2人を落としたDB選手はKnBee選手の加勢に向かう』


Silve選手を倒して2on1になったから少しゴリ押しでKnBee選手を倒そうと進行したがカズがやられた。


「相手ミリミリ!」


カズが言い切るが早いかカバーをして初弾で倒せるレベルの体力だったKnBee選手を倒した。だがその直後にDB選手を警戒しようとしたが時すでに遅く視点を動かした瞬間に撃ち抜かれてしまった。


「ごめん」

「どんまい」

「アタシも変にピークしちゃったし」

「僕ももう少し引き付けられてたら」

「私なんて序盤にやられちゃったから...」


『OFGが1ラウンドを取り返し、試合は1:1と振り出しに戻りました』

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