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それから少しの間、静かな部屋で待っていると話し声と共にドアが開いた。
「とにかくzkt《ゼクト》。負けたらご飯驕りだから」
「あれぇ?そんな話でしたっけ?もしかして俺パラレルワールドのKnBeeさんと話してました?これ?」
「まぁでもどうせ勝つし。もう奢ってよ」
「おぉっと!戦争か?やるのか?」
部屋に入って来たのはFOGのKnBeeさんとK.A.Kのzktさん。2人はスタッフの所までいくとまずはKnBeeさんがサインをした。
「あっ。でもその前にまずはsky birdsに勝てるか。か」
「あれぇ?KnBeeさんそんなに煽っちゃう?もうskyなんちゃらなんてちょちょいのチョイですけどね。もうストレートで勝っちゃいますよ」
「ほぅ。言うじゃねーかzkt」
2人が話しをしている間に新たに部屋に入ってきて後ろからzktさんの肩に手を回したのはsky birdsのリーダーaqula《アクラ》さん。三白眼で少し見た目は怖いけど配信を見る限りいい人そうだった。
「もしかして?聞こえてましたぁ?」
「俺らをストレートで負かすんだろ?」
「いやぁー?そんなこと言ったっけなぁ?」
「アイツら雑魚だから目を瞑ってても勝てるって言ってましたよ」
「あれれ?やっぱこの人パラレルワールドの人だー。aqulaさん。俺はsky birdsのこと心の底から尊敬してるので。そんなことは決して言いませんよ。この人が頭おかしいだけです」
「ほんとか?お前ら最近調子いいからな。調子こいてるんじゃないのか?」
「いえいえ。そんなことはないです。最近K.A.Kが強いのは確かですけど調子は乗ってません。最近ちょっとsky birdsに勝ち越してるだけなんでっ!痛い痛い。これマジで痛いから」
するとaqulaさんはそのままヘッドロックをした。それを見てKnBeeさんは笑ってる。
「はーい。邪魔邪魔ー。どけー。やろうどもー」
そんなKnBeeさんと2人を分けるように間に割り込んできたのはスノーフレークのリーダー46n《しろん》さんだ。短い髪のメッシュのカッコいい女性で少し気だるそうな声と共に3人の間を通りさっさとサインを済ませた。
「あれっ?46nさんが来るなんて珍しいですね」
「たまには行けって怒られちったから」
それからT5の大和さんとSoのシェルバさんが集まりこれで全員出そろった。
「では皆さん簡単な説明を始めますのでご着席お願いします」
スタッフの言葉で全員が席に座ると大会の流れや選手控え室などについて大まかに説明された。
「という感じですが何かご質問はありますか?」
それには誰の手も上がらず声も聞こえなかった。
「では第一試合開始の15分前に放送をいたしますのでそれまではご自由に楽しんでください」
思ったよりも早く説明が終わると他の人は続々と立ち上がり部屋を後にしていった。その後ろ姿を見て、純粋にボクはすごい所に来てしまったな。って思った。OFGにK.A.KにT5...どのチームもすごいチームだしよく動画や試合を見て勉強したっけ。画面の向こうだけの存在にも思える人達を実際に見れるなんて感動だ。本当は握手してもらったり写真撮ってもらったり話しかけたりしたかったけど、そのレベルは高そう。人見知りのボクにとっては特に。まぁでもプロの人達と同じ舞台でプレイできるってだけでも十分すぎるほどに嬉しいからいっか。そして他の人達とは少し遅れて部屋を出ると屋台や出場チームのコラボグッズ販売などで賑わう中、みんなと連絡をとり合流をする。
「おぉ!おつかれー」
みんなは食べ物や飲み物を持ってどうやら満喫してるらしい。
「アンタも食べるならこれあげる」
ビスモさんが差し出してくれたのはポテト。少し小腹が空いていたからありがたくもらおう。
「ありがとうございます」
「僕たちの試合って何時からなの?」
「2試合目なのでOFGとスノーフレークが終わって30分後ですね」
「それまでは自由時間ってことか。どうします?」
「俺は試合みたいな!」
「そうね。どうせやる事もないし見てもいいかも」
ボクもOFGの試合は見たかったしみんなもそうみたいだから少し食べ物と飲み物を買って観戦することになった。だけど試合まで少し時間があるからボクとカズとジョンクさんは色々な販売ブースを見て回ることにした。ビスモさんとアニさんはテーブルで待っておくらしい。マウスやキーボード、ヘッドホンにイヤホン、マウスパッドとか色んなものが売られてて見てるだけでも楽しかった。というかこれだけでも来る価値がある。それぐらい楽しい。その楽しみの後はいよいよ第一試合のOFG対スノードフレーク。どちらも人気のチームっていうのが分かるぐらい歓声がスゴイ。スノーフレークは全員が女性のプロチームで普段はめんどくさがりなリーダーの46nさんに変わってサブリーダーの六華さんが色々やってるらしいっていうのは有名な話。男性ファンも多いが女性ファンも多く特に46nさんのファンだとか。とにかく男女問わず多くのファンに愛されその実力も本物のチームだ。対してOFGは言わずもがなの国内最強チーム。恐らくヴィラン界最強のエイムを持つDBさんやエイムもさることながらチームの頭脳でもあるKnBeeさんももちろん強いがDBさんに負けないエイム力の守護神ことkakian《かきあん》さんや普段はサポートをしつついざとなればちゃんとキルもするはーみんさん、アタッカーからサポートまで器用にこなすキマイラさんも負けてない。1人1人が他のチームで十分エースを張れるほどの力を持っているとボクは思う。
「7:3だな」
「それは何の事?」
「7でOFGが勝つ」
「アタシは8:2で勝つと思うわね。最近のOFG乗りに乗ってて強すぎだし」
「私はスノーフレークに勝ってほしいかな。なお君には悪いけど」
「ジョンクさんってスノーフレークのファンなの?」
「うん!46nさんがカッコよくて...」
その表情は恋する乙女。というよりはスターに憧れる子どものようだった。
「僕も7:3でOFGかなぁー。でもスノーフレークが勝ってもおかしくないよね」
「とりあえずいい試合になるってことは間違いないですね」
多分それはこの会場にいる全ての人が思っていることだろう。そしてこの光景を見ていると改めてこのトーナメントに自分達も参加してることが驚きだ。
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