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あの1件があってからジョンクさんもボイスチャットするようになったしみんなとゲーム以外で会うことも増えた。そんな日々を送りながらもボクとカズは高校生活最後の夏休みを迎えた。


「そう言えばカズとなお。アンタら2人今年受験でしょ?ゲームなんてしてていいの?」

「ボクは勉強してますよ」

「俺もしてるっすよー」

「2人はどの大学行く予定なの?」

「ボクは創空そうくう大学を一応志望してます」

「え!?マジ!俺と一緒じゃん!」

「え!ほんと!?」


まさかカズと同じ大学を目指してるなんて驚きだ。創空大学はそこまで頭がいい大学じゃないからカズもそれぐらいなんだなって思うと少し親近感が湧く。


「まさかなおと同じ大学を目指してたとはな」

「ほんとだよ」

「一般受験でいくつもりなのか?」

「一応AOを受けてダメだったら一般かな。推薦とれるほど何かあるわけじゃないし。カズは?」

「俺も同じだな」

「じゃあ勉強で分からないとこあったらビスモに教えてもらったら?」

「何でアタシが」

「ビスモさんって頭いいんすか?」

「頭いいよー」

「ビスモさん大学どこに行ってたんですか?」

賢央けんおう大学」


賢央大学って確か文系も理系も結構頭のいい大学じゃなかったっけ?そんな大学に通ってたなんて、ビスモさんって結構スゴイ?


「えー!ビスモさんってそんな頭良いんすか!意外だ」

「意外ってなに?アンタよりは勉強してたわよ。言っとくけどアニも同じ大学だから」

「えぇー。2人共スゴイです」

「えー!あっ、でもじゃあ勉強はアニさんに教えてもらってもいい訳か」

「いやいや。僕は中高で色々やってての推薦だけどビスモはちゃんと学力で入学してるからビスモの方がいいよ。それに高校の時も成績ずっと上位だったから」

「実は丁度分からないとこがあるんですけど、本当に質問してもいいですか?」


どの高校に行ってたかは分からないけど賢央大学に行ってたからボクの分からない部分なんて簡単にわかるんだろうな。教えてもらえるなら理解も捗ると思うし悩む時間が減って先に進める。


「家庭教師代もらうけど?」

「えっ!――でも当然か。んーお小遣い分しか出せないですけどいいですか?」

「冗談に決まってるでしょ。別にいいわよ。ROINに送ってくれれば時間がある時に教えても。今でも解けて説明できるならだけど」

「あっ!はいはい!俺も!聞きたいこと山ほどあるんすよ」

「分かった。なおはアタシが担当するから。カズはアニ。アンタが担当しなさい。アンタも一応あの大学を卒業したんだからそれなりの学力はあるでしょ」

「えぇー。もう勉強なんてしばらくしてないよ」

「アニさん宜しくっすね」


ボクらが先輩へ指導のお願いをしているとGチャットがジョンクさんが入室を知らせた。


「遅くなってごめんなさい」

「まぁこの話はあとにしてランクに行くわよ。アタシはヴィランをしに来たんだから」

「はい。招待送りますね」


それからの日々に特に変わりはなかった。ただ勉強の時間が少し増えたぐらい。あと夏休みの間にAO入試の小論文を書いて願書と一緒に郵送した。1次試験は受かってるといいな。ちなみにジョンクさんは高卒認定試験を受けるらしく家の手伝いをしながら少しずつ勉強をしているらしい。そしてランクとクラン戦と勉強で夏休みが過ぎ去ると今まで通り2学期が始まった。2学期が始まって少ししてから2者面談が行われた。


「お前も2年連続で同じ担任とはついてないな」

「いえ。そんなことないですよ」

「さてと。確か創空大学志望だったよな?」

「はい」

「一般か?」

「夏休みにAOを出して今は結果待ちです。そろそろ出ると思うんですがもしダメだったら一般にしようと思います」

「まぁ大丈夫そうだな。成績的にも問題はなさそうだし...。このまま続けてれば普通に受かるだろう。勉強はしてるのか?」

「はい。知り合いに教えてもらいつつやってます」

「なら問題ないな。んー、まっ。順調そうだ。それじゃ今は帰って勉強か。だけど息抜きも大事だぞ」

「ゲームもしてるのでそこは大丈夫です」

「でも息抜き程度ならいいいがあまり時間を割きすぎるなよ。勉強はめんどくさいと思うが今の時期に時間を費やして損をしないのはたかがゲームより勉強だからな」


たかがゲーム。確かにこの時期はプロになるわけでもないボクのゲーム時間なんて息抜きレベルを越えたら無駄なのかもしれない。だから一応先生の言うことは間違ってないのかも。だけど好きなモノに『たかが』って付けられのは嫌だよね。


「でも今はゲームにもプロがいて、その人たちは一日に何時間もゲームして腕を磨いて作戦考えて本気でゲームしてるわけですからたかがってことはないですよ。」

「プロになるのか?」

「いえそう言う訳じゃないですけど。先生はプロの試合とか大会とか見た事あります?」

「いや、ないな」

「まぁですよね。でもやっぱり真剣にやってるのってかっこいいし盛り上がりもすごいんで一度見てみてください。興味があればですけど。それにどんなことにも真剣に向き合っている人がいるのでたかがなんてことはないと思います。それで稼げるかと聞かれれば人気とか色々必要で分かりませんけど。でも真剣にやってるのにたかがは失礼だと思います」

「まぁ確かにお前の言う通りだ。見てみるよ。時間があればな。で、お前のやってるやつは何ていうんだ?」

「villain for villain。ヴィランって呼ばれてます」


先生は手元の紙端にメモってたけど多分見ないだろう。ボクだって興味ないものを薦められたところで見るかは微妙だ。


「他に何かあるか?」

「いえ特には」

「ならこれで面談は終わりだ」


面談でそんなやり取りをした日の夜も日課となっていたゲームを起動した。そしてみんなが集まればランクを始める。いつも通り。そして3試合ぐらい終わった頃、ジョンクさんがこんなことを言った。


「あの。もう一回大会に出ませんか?前は私のせいでオフライン辞退しちゃったんでリベンジって訳じゃないですけど」

「アタシはいいけど問題はなおとカズでしょ。時期的に」

「ボクはAOの結果次第と後は勉強の進み具合ってとこですかね」

「俺もそんな感じだな」

「ちなみに次の大会っていつなの?」

「私が調べたのだと12月にありましたよ。少し大きそうなのが」


ボクはまだマッチ検索中の時間を使いその大会を調べてみた。


「えっ!これって3社が合同でスポンサーになるチームを探す大会って書いてありますよ」

「それってすごくね?優勝したらそのチームにスポンサーがつくってことじゃん」

「へー。スポンサーのいないチームが出場できるって書いてあるね。プロを除いた日本1位を決めるらしいよ」

「それに出てもし優勝したらどうすんの?」

「どうするってビスモさーん。俺らもプロとして活躍するに決まってるっすよ」

「バカ?アンタそんなんだと落ちるわよ。全く勉強教えてる奴の顔が見てみたいわ」

「おーい。ビスモ―。聞こえてるぞー。今から会いに行ってあげようかー?」


でもビスモさんが言わんとしてることもよく分かる。


「仮にスポンサーがついたとしてその後も継続してもらえるかってことですよね?というかスポンサーがついたからってプロっていうのかな?」

「そーゆうこと。それで所属選手とかにも給料出せるならプロなんじゃない?知らないけど」

「あー。つまり?」

「つまりその後も他のプロ相手の大会で好成績を残したりプレイヤーとしてファンを獲得したりすることが出来るかってことだよ」

「確かに無名もいいところの私たちがポッと出て、スポンサーにとって利益あるチームでいられ続けるかって大変そうですよね」

「まぁでもそれ優勝出来たら考えればいいんじゃね?――あっ!ほらそれよりマッチしたぜー」


別にみんなプロを目指して集まったわけじゃないしなんならクランかどうかも怪しい。だけどプロの試合とか見るし少なからず憧れ的なものは持ってるのかも。少なくともボクはもってる。ヴィランを始めたきっかけがJapan cup決勝OFG対桃太郎っていうのもあるかもしれないけどボクにはプロの人達が輝いて見えてた。いや、現在進行形で見えてる。今までただの娯楽として接してきたゲームで真剣に本気で向き合って戦ってる人達がいるって知らなかったから。本気で頑張る人はかっこいい。それはゲームも例外じゃないってことを教えてくれた。勉強も運動も好きじゃなければ得意でもないボクにこんな道もあるって教えてくれた。先生に訊かれた時はプロなんて考えるだけでおこがましいって思ったけどみんなと一緒にプロを目の前にしたら意外と近く感じる。だからなれるなれないは置いておいてもしプロになりたいかと聞かれればボクは迷いなく答える。


「もちろん。でもみんなはどう?」

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