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そして大会当日。寝坊してしまって決勝戦にギリギリ間に合う形で僕は会場に着いた。会場はメインステージとその観客席の他に大きなモニターとその前に作られた観客席に分かれていた。ボクは遅れて来たこともありもちろんモニターでの観戦。だけどモニター前の観客席は小さなテーブルと椅子があって飲んだり食べたりできた。
「おぉー。すごっ」
モニターの前に用意された観戦スペースを囲むように様々な屋台が並んでいてその光景はまるでお祭りだった。思った以上の盛り上がりに思わず声が漏れる。だけどこのまま立ち尽くしている訳にもいかないのでとりあえず飲み物と何か食べる物を買って適当な席に座った。周りの大人たちはビールとか飲んでいたけどボクはもちろんお茶。するとボクが座るのを待っていたかのように音楽が鳴り出しモニターにムービーが流れ始める。それは簡単なチームの紹介動画。丁度今から始まるようだ。
『数々の大会を優勝しプロでも活躍するその実力は本物!そして今大会を制すれば名実共に日本一。さぁ、舞台は整った。この大会の大本命よ。皆の期待を背負い王冠に手を伸ばせ!OGRES FACE GAMEING!』
叫ばれたチーム名と共にモニターにはチーム名とロゴが大きく表示され、5人の選手が映し出された。中央と右側2人は男性選手、左側2人は女性選手。
「カッコいいなぁ」
それはこのゲームに関するチームは全く知らないボクの胸さえも躍らせ、登場だけで周りのファンを熱狂させた。王者。その言葉が似合うチームだった。そしてチームメンバーが全員登場すると次はもう1チームの動画が流れ始める。その動画はチーム紹介というよりはこの大会でのダイジェスト。
『それはこの大会の為、いや。この決勝の為だけに作られたといっても過言ではない。彼らの目的は優勝?いや違う。打倒!OFG!最強の鬼の首を取る為に集まった精鋭は王冠を奪い去ることができるのか!?桃太郎!』
その後に先ほど同様、5人の選手とチームロゴが表示された。その並びは中央に男性選手とその両側に女性選手、一番外側に男性選手と女性選手。
「なるほどー。鬼を倒すから桃太郎か。本当に対OFGのチームじゃん」
最強を倒す為に精鋭が集まったという展開に自然と心躍る。
『さぁ。各チームが出そろいました。いよいよVillain For Villain Japan cap決勝戦が始まろうとしています。泣いても笑ってもこれが最後の戦い。勝者が日本一の称号を手に入れます。実況は
『解説はTPが行いまーす』
『よろしくお願いいたします。って言ってももういつメンですからね』
『そうですよね。ありがたいんですけどね。代わり映えはないですよね』
『まぁ今日もこの2人で頑張って盛り上げていきたいと思い、ますっ!さぁ。今回の決勝戦は1ラウンド3分、7ラウンド先取、6:6からの延長は2ラウンド差をつけるか21ラウンド目を先取した方が勝利。3ラウンド攻守交替のBO5となっております』
すると画面外のスタッフから実況の人が何かを伝えられた。
『――えー、皆さん。少々お待ちください。準備が少しかかるようです』
何かあったんだろうか?
『いやぁ、それにしてもとんでもないドリームチームが出場してましたよね』
『そうですよね。こういうのもアレですが、各チームからこれだけの選手を集めてチームを組むというのは卑怯な気もしますけどね』
『それだけOFGが強いってことですかね』
『ちなみに試合前のインタビューでK.A.Kのzkt《ぜくと》選手は桃太郎結成について、「ここら辺で強引にでも天狗になったあいつらの鼻を折っとかないといけない」と答えたそうですよ』
『そこに私情が混じっているのかどうかは分かりませんが、最近特に勢いに乗っているOFGをここら辺で失速させたいんでしょうね。今後の大会のためにも』
『恐らくそういうことでしょう』
『あれ?そう言えばzkt選手の率いるK.A.Kは今回の大会に...』
『出てないですね』
『ですよね』
『実はさっき会場でメンバーと会ったんですけど彼ら普通に観客でしたよ。その時に聞いたんですけど...確か、出場してzkt選手のチーム、桃太郎ですね。に勝ったらzkt選手がキレるから出ないって笑ってましたよ』
『相変わらず物凄い自信ですね』
『彼らが言ったら冗談か分からないところがまたスゴイんですよ』
楽しそうに笑う実況と解説の人だったが画面外のスタッフから何かを聞くと少し姿勢を正いした。
『――さぁ準備が整ったようです。ついにこの時がやってまいりました。日本一の王冠を手にするのは最強チームかその首を狙う精鋭集団か?折角ですので会場の皆さん、画面の向こうの皆さん全員でいきましょいう。準備はよろしいでしょうか?では。――Villain For Villain Japan cap決勝戦、OGRES FACE GAMEING対桃太郎。試合開始です。グットラックハブファン』
メインステージの観客だけでなくボクの周りも『グットラックハブファン』と息の合った声を出した。ボクは乗り遅れてしまったが、ついに決勝戦が開始された。最初はOFGが選択したマップらしい。どうやら攻撃側と防衛側に分れた爆弾モードでOFGが攻撃で桃太郎が防衛。このゲームのセオリーどころかどういう風に展開されていくのかも分からない。だけど雰囲気も相俟ってかワクワクする。
『準備時間が終了し第1ラウンドが始まりました。攻撃はOFG。防衛は桃太郎。おぉっと!何と!決勝戦のファーストラウンドでOFGまさかの開幕ラッシュ!目標へものすごい勢いで侵入していきます!――これにはさすがの桃太郎も不意を突かれたか次々と落とされていきます!』
ラウンドが始まった途端に走り出したOFGが2キルを先取して、1キル取り替えされ、2キルを取り、2キル取られ、最後のプレイヤーを倒したところでラウンドは終了。1分も経たぬうちのあっという間にラウンドを取ってしまった。周りは驚きを隠せないといった人と興奮に声を上げる人が半々だったがすぐにOFGファンらしき人達の歓声が辺りに響き渡る。それどころか最初に桃太郎へ声援を送っていた人らも感心した様子だった。
『いやぁー。開始早々のラッシュですよTPさん』
『開幕ラッシュをするそのメンタルと自信。さすがOFGといったところですよね。強引に流れを持っていきました』
『桃太郎としてはこの流れに乗らずどう自分達のペースでプレイするかがカギになってきそうです』
『そうですね。ですがどうでしょう。ぼく的には今のラッシュが彼らに火を点けたと思いますよ』
『さすが決勝戦!最初から非常に面白い展開になっていまいりました』
解説の人が言っていた通り2ラウンド目は桃太郎が取り返した。ボクがこんなことをいうのもなんだけどこの勝負、ここから本番って感じだ。
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