狭い空/井戸のカエル
狭い空だと思ったのは
上京したばかり
十数年前の四谷三丁目でのことだった
ビルの合間を縫うように
白と青が入り混じってる
息が詰まる空だった
故郷の空は
大きくて
空の縁には山影が見えた
私はもうあそこにいないのだ
故郷はもう遠い
それが急にわかった
私は歩き出す
早足で
……十数年後に東京を少し離れた
引越し先の空は
少しだけ広かった
呼吸が出来る空だった
……もう私には故郷と呼ぶ土地はなく
故郷はどこにもない
それなのに
急に懐かしくなり
ここに居たくなった
息が、したいのだ
思い切り、深呼吸がしてみたい
ーーーーーーーーーーーーーーー
狭い空の下で生きてると
それが世界の全てじゃないかと思ってしまう
世界はいくつもあって
それこそ人の数だけあると言うのに
井戸のカエルのように自分の見えてるものだけ
信じてしまう。
忙しければ忙しいほど
心の余裕がなくなればなくなるほど
自分の世界は狭くなる
それだけで生きてしまうのもまた一興
ひとつの道かもしれない
けれど……世界を知りたいと
鳴き続けるカエルもいるのだ
くちなしは雨に濡れた つづり @hujiiroame
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