第56話 再会と懐古と進展と

 アイスコーヒーの中に突っ込んだストローが、小気味良い音を立てた。氷がグラスにぶつかる音は涼しげで好きだ。


 ニシコとは対照的に、コトコはホットココアを選んだ。


 そもそも偶然会った同級生とこんなふうにカフェに入るなんて、普段のコトコならあり得なかった。


「忙しいから」と言って手を振って別れるのが関の山だ。


 だからこの事態に驚いているのは、他ならぬコトコである。


 向かい合わせに座ったニシコとは卒業以来もう十二年も会っていなかった。だから何を話せばいいのか「あわあわ」しながら取り繕って近況を報告し合う。


 もっぱら話すのはニシコであり、話好きな彼女にコトコは感謝しながらうんうんと頷きを返す。


「こっちゃんは結婚はー?」


 コトコはぶんぶんと首を振って否定する。


「あたしみたいに早ければいいってもんじゃないと思うんだよ。いいんじゃない、あたしは逆に憧れるなー」


 憧れる?


 嘘ばっかり。


 ニシコみたいに自立した人こそ憧憬の対象になるんじゃないの?


「自立っていうか、カツカツでなんとかね。あたしはこっちゃんみたいに慎重になりたかったよー」


 ニシコはニカっと笑う。


 その笑顔を見て、コトコは一番聞きたかった事を緊張しながら切り出した。





 つづく

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