第51話 それは泣きそうな顔


 コトコは、ここのところ河井さんがピリピリしているのを感じていた。


 入力ミスが一つもないように何度も見直しをしているし、補充する物が足りなくないように何度も引き出しを開けたり閉めたりしている。


 入力件数をメモする紙ですら、間違ったらいちいち書き直していた。


 コトコにはわかる。


 お局様達にあげ足を取られないように、完璧に業務を行うよう細心の注意を払っているのだ。


 ——あれは辛いよね。


 少し前の自分と重ねて、コトコは河合さんの体調を気遣う。


 河合さんは少し顔を歪めて、下手に微笑んだ。




 つづく

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