第44話 心なき人
コトコは悔しかった。
会社の印字機は用紙とインクリボンをセットするタイプなのだが、毎週金曜日に点検をする。足りなかったり、インクが薄かったりしたら交換しなくてはならない。
コトコはその日その端末を使用していない。
それなのにインクカートリッジの交換をコトコが忘れた事にされていた。
コトコの席の脇を通ったお局の一人が舌打ちした。
「替えとけよっ」
小声で吐き捨てたのを耳にして、始めは何を言っているのか分からなかった。その人がインクリボンを手にしているのを見て、その事かと思ったものの、なぜ自分に舌打ちされるのか全く分からず、血の気だけが引いていく。
手の先まで冷え切って端末のキーを叩けない。
——なんで、なんで私じゃないのにここまで言われなくちゃならないの。
その後で大きな笑い声が耳に飛び込んできた。
「やだ〜、○○さんだったの?」
替え忘れたのはその人だったらしい。
しかし、コトコと間違えた事への謝罪は無かった。
つづく
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