第33話 初夢2


 コトコは驚くほど寝汗をかいていた。


 同時に空気の冷たさにふと我にかえる。


 さすがにこのまま寝続けるのは気分が悪く、仕方なしに目覚まし時計を手にした。


 ——朝の5時、か。


 まだ、正月休みだし、着替えて二度寝も悪くないかと思いながらも、悪夢の印象が強すぎて頭から離れない。


 のろのろとベッドの上に起き上がり、体を冷やさぬよう布団を巻きつけた。悪夢を反芻して、嫌な夢だったとあらためて思う。


 足に蜘蛛を踏んだ感触が残っている気がして悪寒が走った。


 ——休みもあと少しかぁ。


 今日は何日だっけ?


 と、まだ一月二日だとほっとする。


 ん?


 ってことは、さっきのが初夢?


 縁起でもない、とコトコはスマホに手を伸ばした。





『夢占い』

『蜘蛛の夢』


 少し嫌な予感がしながら、それでももしかしたら吉夢ではないかと願いつつコトコは検索する。


 蜘蛛の夢——一部を除き、凶。


 刺激的な色の蜘蛛の夢——凶。裏切りを意味する。人に陥れられぬよう注意。


「嘘でしょ」


 思わず声が出る。


 よりによって、初夢がこれなの?


 ただでさえ人間関係に疲弊しているコトコにはぞっとする夢占いだった。







 つづく





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