第4話

気がつくと、いつのまにかガチョウはいなくなっていて、そのかわりになんともいえないピアノの音色が聞こえてきました。目を上げると、こじんまりとした、それでいてなんともすてきな白い家がたっていました。ピアノの音色はそこから聞こえてきます。

 ああ、それはなんというすてきな曲でしょう。それはまるで、やさしさとあこがれを縦糸に、夢を横糸にして、あとからあとから織りあげられていく織物のようでした。

 その曲を聞いているうちに、僕はこの町に出てきた頃にもっていた夢や希望を思いだしました。都会で暮らしていくこととひきかえに、いつのまにか、少しずつなくしていって、もうそんなものをもっていたことさえ、すっかり忘れていたというのに。思いがけないものをまた見つけたようで、なんだか胸の奥が痛くなってきました。

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