第22話 届けようとする思い
深夜2時…愛斗は事務所のデスクに着き、腕組みして
(どうすれば、この国のお年寄りに介助AI機器のモニタリングを受け入れてもらえるのだろうか…。全てのお年寄りに安心して人生を送ってもらいたい。心からそう思う…とにかく粘り強く、この人と思ったお年寄りに何度でも頼み込むしかないな…いや待て、今までのやり方は間違っているのではないだろうか…?)
愛斗は暫くじっと考えてから自身の考えに決心したように頷くと、顔を上げた。
デスクのパソコンには、日本で起動している介助AI機器の情報が刻々と送られて来ている。その中には、愛斗の実家で製造されている介護AIロボットの情報もあった。愛斗は気になって、詳細状況を見てみることにした。既に二体の介護AIロボットが完成し、内一体は要介護の高齢者の元へと出向していた。そして、もう一体は何故か駅前の清掃作業をしているようだった。
(ん?この機体は、なんで掃除なんてしているんだろう?)
愛斗はこの介護AIロボットにオンラインし、その目線で観察を始めた。画面にはホウキを持つ手と掃き集めたゴミがチリトリに入る映像がライブで送られてきている。と…その足元に空き缶が一つ飛んできた。カランコロロン…介護AIロボットは、
「なんだぁ?なんか文句でもあるのか!?ロボットのくせに、俺にガンつけやがるのか!?」
どうやら、空き缶を捨てた男が、自分の方を見られたのが気に入らなく、介護AIロボットを力任せに
『申し訳ありません。私は文句などありません。お掃除を兼ねて、リサイクルの材料を集めさせて頂いているところなのです』
介護AIロボットは倒れたまま頭だけを起こし男に言った。
「うるさい!生意気なことぬかしやがって…」
男は立ち上がろうとした介護AIロボットをもう一度靴の裏で蹴った。“愛”の作ったアルミニウム製の介護AIロボットは軽量で意外なほど吹っ飛んで転倒した。
『申し訳ありません。私は人間の役に立ちたいのです。けれど、あなたの心を傷つけてしまったようです。申し訳ありません』
「なにを~!傷つけただぁ~?何様なんだ!」
男が更に追い打ちをかけようと近づいた…その時、男の目の前に一瞬にして銀色の身体の機体が降り立った。それはあのAIロボットのマリだった。
『それ以上の暴力を振るわれるのでしたら、私をどうぞ…』 きりっとした表情に、悲し気な目をしたマリが両腕を広げ言った。
男は、たぢろぎ後ずさりし…
「な…なんなんだ…?ちくしょう…」
そう言うと、
愛斗はその一部始終をパソコンの画面で見ていた。
「すまない…、俺はこんな人間の未来を守ろうとしているのか…?」
回線を開き愛斗が言った。
『いいえ…愛斗さん、素晴らしい未来にするんです。私は、そうなると信じています』
マリが答えた。
「そうだね…、俺は君たちに、本来あるべき人間の心を学んでいる…そんな気がするよ…。俺を含め、人間はまだまだ未熟だね…ありがとう、マリ」
マリはにっこり微笑み
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