第14話 ロボットアーム二号機完成
“愛”が尚子の作ったロボットアームで、更に精密なロボットアームを作り始めて一か月と一週間が過ぎていた。
さすがに精密ロボットともなるとハンドメイドでは作ることの出来ない部品も出てきた。尚子は“愛”の指示を受けながら、丸一日をかけ様々な材料を買い集めた。
『尚子さん、今日は本当にお疲れ様でした…少し不整脈が出ていますね…顔色も良くありません…無理をさせてしまい本当にすみません』
「大丈夫よ、早く愛くんの身体が出来てほしいもの…」
そう言うと尚子は作業台に、買った部品や材料の入ったデイバッグをドサッと乗せた。
『今日はもう休んで下さい。身体が心配です』
「うん、そうね…そうさせてもらうわ…」 尚子は、着替えると疲れを自覚していたのか早々にベッドに横なり、“愛”が確認した時にはもう眠りに入っていた。
尚子は夢を見ていた。“愛”の身体が出来上がり、その手に引かれて河川敷の散歩道を歩いているのだ。夕焼けの空は美しく遠方の街を染めている。ふと、尚子は引かれている手に温もりを感じ“愛”の顔を見上げた。なぜかそこには、亡くなった夫が優しく微笑んでいるだ。 …そこで尚子は、ぼんやりと目が覚めた。
作業場の夫の部屋から、“愛”が動かすロボットアームの音が微かに聞こえてくる。
シュィーン、カチ、キリキリキリ
右耳の機器から“愛”が話しかけてきた。
『おはようございます尚子さん、良く眠れましたか?』
「おはよう愛くん…今日も徹夜だったの?」
『はい…あ、音が煩かったですか?すみません』
「うぅん、ちっとも」
『そうですか、良かった…ところで、いよいよ2号機の完成ですよ』
「本当に?凄く早い!」
“愛”に促されるまま尚子が作業場に見に行くと、そこにはガッツポーズとVサインをする新しいロボットアームが、作業台に鎮座していた。
あまりの完成の早さに尚子がポカンとしている。
『尚子さん、このロボットアームで人間と同じように動く足、胴体、頭部を製作します。ようやく身体を作ることが出来ます』
「そうね!凄いわ、愛くん!」
尚子もガッツポーズをして小さく飛び跳ねた。
『尚子さん、相談なんですが…これから作るボディを取り敢えず10体作りたいと思っています。1体は尚子さん専用で、後は介護を待っている人達用です。費用はご心配無く、材料は廃品や自然から調達しますから』
「そういう事なら、喜んでオッケーよ!」
『ありがとうございます!尚子さんの善意に心から感謝します!』
「私に出来る事があったら、何でも言って…力になりたいわ」
『はい、一緒に頑張りましょう!』
“愛”はロボットアーム2号機の腕で立ち上がって飛び跳ねた。
その後“愛”は小型溶鉱炉、コンプレッサー、プレス機、3Dウィンドミルなど工作機械をそのロボットアーム2号機で一つ一つ作っていき、尚子もその手助けをした。
「愛くん、私達、最高のバディね!」
『はい、僕達、最高のバディです!』
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